もしもJK星歌ちゃんだったら。   作:三十路スキー

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山田リョウ誕生日にギリギリ間に合わす!
この世界の結束バンド結成話。オリ設定注意。


星歌のドラム、好きだから

「何度来ても答えは同じ。もうバンドはやらない。ベースも辞める」

「リョウ……」

 

 これで3回目。今日も返事はNO。生徒立ち入り禁止の屋上で毎日何もせず佇んでいるリョウ。高校1年の冬、リョウが前に居た学外のバンドを抜けて少し経つ。もともと不愛想なあいつがすっかり抜け殻になってしまった。10歳からロックに嵌って、作曲もして、音楽が生活の殆どを占めてるようなリョウがあっさり音楽を捨てた。

 

「いい加減うざいよ。なんで私に拘るの? 高校生でベース弾ける子なんていくらでもいるでしょ。下北沢には」

「言ったじゃん。あたしはリョウのベースが好きだから。お前じゃなきゃ嫌だ」

「理由になってない。私はもうやらないって言ってるのに」

 

 いつもなら拗ねてても少し経てばケロリとしてるのに、今回はさすがに手ごわい。あたしがまた屋上に来たのは、バンドを組みたいって気持ちもあるけど、生気が無くなって腑抜けたリョウが早まったことをするんじゃないかって心配もある。

 

「やっぱあたしみたいなヘタクソとは組みたくないか……。リョウはもっと上手い人とも組めるだろうしさ」

 

 正直自信が無い。リョウは『天才音楽少女』であたしは『長くやってるだけの凡人』だもんな。あたし自身、釣り合うとは思ってないんだ。でもダチをこのままにしておくことなんてできない。山田リョウのロックはここで終わっちゃいけない。

 

「張っ倒すよ」

「あ?」

 

 リョウの目の色が変わる。お互いの口調が怒気を帯びる。ガキの頃リョウと初めて会ったあの日みたいに。あたしは初めてロックのこと話せる相手が出来てうれしかったのにさ。お互いバカみたいに拘り強くて、最後は殴り合いになったっけ。あの時は二人して姉貴に死ぬほど説教されたな。で、あれからずっと腐れ縁で今に至るわけだ。

 

「星歌のアンチが星歌なんてバカみたいじゃん」

 

 屋上の階段横、リョウの両腕があたしの肩を押してちょうど『壁ドン』の体制になる。なにドキドキしてんだ女同士で。あたしどうかしちまったのか? リョウのファンじゃあるまいし。

 

「いや、なにそれ」

「星歌、バンド組もう。私の後ろには星歌が居てほしい。星歌の中にいるアンチの星歌なんて私が追い出してやる」

「もう、わけわかんねぇよ。……本当にあたしでいいのか?」

 

 でも、リョウが今日言ったこと、忘れてやらないからな。

 

「いいよ。星歌のドラム好きだから。じゃダメ?」

 

 リョウがあたしの頬を指で小突いてくる。

 

「固いね。私の方がもちもちほっぺ」

「うるせ」

「とはいえ私ほどの大物バンドマンをメンバーに入れるなら、それなりの契約金はあるんだよね?」

「ちょ、ダチから金取るのかよ!」

 

 さっきまでの感動返せ。

 

「星歌の手料理が食べたい。カレーがいいな」

「何でだよ、あたしが料理ダメダメなの知ってるだろ?」

 

 あたしは料理が大の苦手だ。いくら練習しても上手くならない。飯は今でも姉貴頼みだ。掃除や洗濯は出来るようになって、忙しい姉貴の代わりに家事をするようになった今でもだ。

 

「それでもいい。手料理食わせなきゃバンド入らないから」

「……わかったよ。絶対うまいの作ってやるからな!」

「楽しみにしとく。味は期待してないけど」

 

 

 

 

 

「伊地知シェフ特製カレーでございます、なんてな。去年のリベンジだ。食ってもらうぞ」

 

 今日は9月18日。高校は2年に上がった。暦の上で夏は終わったはずなのに、残暑どころじゃない暑さ。あたしはリョウにまたカレーを作った。人に料理を食わすのはあの冬以来だ。結構練習したんだぞ。あまり上達してないけど。

 

「いただきます」

 

 リョウは手を合わせてから静かに食べ始める。終始無言だ。食べ方は綺麗で育ちの良さを感じさせる。

 

「う、うまいか?」

「食べ終わるまで待って」

 

 静かにさじを動かす。2人だけの静かな時間が過ぎる。

 

「ごちそうさまでした」

「どうだ、うまかっただろ?」

「あんまりおいしくない。野菜はバカデカくてご飯もゴワゴワ。去年よりはずっとマシだけど」

「なんだよそれ! せっかく作ってやったのに」

「でも、去年よりおいしくなった」

 

 怒るあたしの手を取って、リョウが続ける。あたしの指はいくつか絆創膏が貼ってある。

 

「ありがとう星歌」

「お、おう……」

 

 こっちを真っすぐ見据えてくるリョウ。近くで見ると綺麗な目してるな。普段は澱んでるのに。ジコチューで金にルーズでダメダメなくせに、そんなのどうでもよくなるくらい、カッコよくて、かわいくて、やさしいんだよね。やっぱ反則だよな。

 

「おかわりちょうだい」

「あ? さっきマズいつったじゃねぇか」

「違う。おいしくないだけ。ジカさんのカレーに比べれば」

 

 比較対象姉貴かよ。そりゃ敵うわけないじゃん。カレーの残りは余裕がある。来年もまた作って食わせてやるからな。イヤだと言っても何回だって。いつか姉貴よりウマいと言わせてやる。

 

「わかった。でも調子乗って食べすぎるなよ。今日の晩飯はみんなでパーティだからさ」

「大丈夫。昨日から草しか食べてない」

 

 今日はバンドの合わせ練習してから、ファミレスでささやかなパーティをする。普段ダチの誕生日とか祝うようなタイプじゃないけど、これからはバンドメンバーの誕生日を毎年お祝いしてみるのも楽しいかもな。なんかすげぇ女子高生って感じだ。

 

 ずっとこんな日が続けばいいな。




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