目指すは片瀬江ノ島。江の島への車中、姉貴がくれた雑誌をみんなで廻し読みながらプランを練る。とはいえ姉貴が10代のころの雑誌だ。情報がいろいろ古い。
「ふむふむ。私のおいしいものセンサーがビンビンだ」
「お前は食い気ばっかりだな」
「スマホで探したほうがいいんじゃないんですか?」
「まあそうだけどさ、たまにはいいだろ」
「あ、こ、これおいしそうですね」
ピロン♪ 姉貴からロインだ。
『おすすめはたこせんとシラス丼かな♪ 最近なら塩ソフトも話題かな(^^)/ 特にシラス丼はねぇ……』
ここからずっと、聞いてもないのにおすすめスポットを解説しだした。やたら長いうえに顔文字絵文字がいっぱいだ。これがおばさん構文ってやつか。しかも9割がシラス丼の話とは。
『それから弁天様には必ずお参りに行くこと! それじゃ楽しんでね(^_-)-☆』
江島神社か……。芸術、音楽の神様で有名らしいな。うーん、階段上るの大変そうだな。
「海すげぇ! 来てよかったな!」
竜宮城みたいな片瀬江ノ島駅から歩きだして、海岸に到着。初めてだけど噂通りだ。海水浴シーズンは終わったが海岸には水着の男女が沢山。
海岸に着いて早々チャラ男たちに声を掛けられたが何とか脱出。ナンパかと思ったら、ただの客引きみたいだ。悪いけど興味ないので先を急ごう。
「ほら、ぼっちちゃんしっかりしろ! いい加減ちゃんと歩け」
まだぼっちちゃんは意識朦朧。ペチペチとぼっちちゃんの頬を叩きながら海岸を見せる。
「わぁ……」
ぼっちちゃんの眼が少しだけ輝きを取り戻した。さあ、出発だ!
「まずは『たこせん』食べましょう! これ大きいし、かわいくて映えますよ!」
喜多ちゃんがスマホの画面を見せながらいつものキターン! どこぞのイソスタグラマーがたこせんを頬張る姿が写ってる。
「よし、じゃあたこせんの店行ってみるか!」
調べておいた店に行くことにする。夏休み最終日とはいえ平日の昼、そこまで並ばずに買えた。
「ふう。なんとか買えたな」
「おっと、皆さん食べる前に……撮りますよー!」
喜多ちゃんがスマホで4人を収めて撮影。上手く撮れたみたいだ。イソスタでも使えそうだな。
「はむ。こりゃうまいな」
「ですよね!」
「山田式おいしいもの検定、合格」
「ハム! ハフ! ハム!」
ぼっちちゃん、そんなに慌てて食べなくてもたこせんは逃げないぞ。
「そういやさ、これツートンの重さでプレスしてるんだってさ! ツートン!」
「あ、あの、星歌ちゃん、それ1トンみたいです」
ぼっちちゃんが、申し訳なさそうに会話に割って入る。たこせんを食べて顔色が少し良くなったかな。
「へ? いや雑誌にはツートンって」
「そ、そこに書いてましたけど……」
お店の看板にデカデカと『1トンでプレス』と書かれている。
「ぷぷっ……。ツートンって言い方ヘンだよ」
「前から思ってましたけど、伊地知先輩ってちょっと天然さんですよね?」
「な! て、天然ってなんだよ! なめてんのか!」
照れ隠しに少しだけ凄んでみるけど、2人の笑いが止まらない。
「ぷぷぷ! 知ってた。ギャップ萌えってやつかな。むははは!」
「あはは! 伊地知先輩、これからはもっとアピールしていきましょ! イソスタPV爆上げですよ!」
こいつら、他人事だと思って……。
「あ、でも、星歌ちゃんのそういうところも……かわいいと、思います。……す、すみません。出過ぎたこと言いました」
え、ぼっちちゃん、そんな風に思ってたんだ。
「ぬ、ぬうぅぅぅん……」
ぼっちちゃんにかわいいって言われた。そもそも家族親類以外に、かわいいなんてほとんど言われたがことない。そりゃ人相悪いし、性格も捻くれてるから。もちろん、ぼっちちゃんに言われるのも初めてだ。……照れる。
「星歌、顔真っ赤」
「キャー! かわいいですよ! 伊地知先輩!」
うるせぇぞお前ら! 撮るな喜多! 山田も!
「……」
ぼっちちゃんがニコッっと笑う。え、なに、こんな表情スターリーでは絶対見せないぞ。
「みんなで食べたたこせん……。夏の思い出、本当にありがとうございました」
透き通るような声。
「まだ始まったばかりだって! 目的地は山の上の神社! 弁天様にお参りしよう!」
「はい! 展望台にも上りましょう!」
「えーやだ、しんどい」
「……」
ノリノリな喜多ちゃん。露骨に嫌がるリョウ。ぼっちちゃん、そう嫌そうな顔するな。道のりはキツいけど、みんなで登れば楽しいぞ。
「よーし! 結束バンドファイトー! おー!」
少しおどけてみせる。夏の思い出はまだまだこれから。
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