もしもJK星歌ちゃんだったら。   作:三十路スキー

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青い春と西の空⑤

 西の空に夕日が沈む。さあ、うちに帰ろう。

 

「えー! もう帰るんですか?」

「しょうがないだろ。あんまり遅くなると明日に響く」

 

 心底残念そうにする喜多ちゃん。まだまだ元気だな。

 

「そうですね。明日から学校ですし、名残惜しいですけど帰りましょう……」

「またみんなで遊びたいな。今度はしっかりとプラン組んでさ」

「もう冬休みは結束バンドのみんなで毎日遊びましょう! 沢山思い出作りましょうね!」

「おいおい、それじゃ練習する暇無くなるだろ。ほどほどにな」

 

 流石は生粋の陽キャ。でも毎日じゃ、あたしらインドア人はストレス溜まっちゃうよな。特にぼっちちゃんはさ。

 

「ぼっち、お金無いから帰りの電車賃奢って」

「い、嫌です」

 

 おい山田! やっぱカネ足りてねぇじゃねえか!

 

「ぬぅうううううん! ヤ・マ・ダああああ!」

 

 今日の私は八臂弁財天だ! 阿修羅をも凌駕する存在だ! ……さんざん追いかけっこした挙句、山田の電車賃はあたしが貸すことになった。来月のバイト代から強制徴収する予定だ。

 

「ほら、次のバイト代から返せよ」

「そんな殺生な!」

「置いてくぞコラ」

 

 

 

 

 

 帰りの電車は余裕で座れる。もう少し遅くなると混んでくるだろうから、今帰るくらいでちょうどよかったな。

 

「郁代、着いたら起こして」

「……もう、しょうがないですね」

 

 リョウの奴、椅子に座って秒で寝やがった。

 

「ふあぁ……眠い……」

 

 やべ、あたしも眠い。

 

「伊地知先輩も寝てて大丈夫ですよ」

「ああ、ありがとな喜多ちゃん」

「ずずず……んごっ……」

 

 流石は喜多ちゃん。よくできた後輩だ。……肩に重みを感じる。リョウの頭か。……うるせえ。もういびきかいてやがる。

 

 

 

 

 

 クソ眠いのに、眠れない。うつらうつらとする頭の中に、ぼっちちゃんと喜多ちゃんの話し声が聞こえる。なんか二人で今日のことや学校のことを話してるみたいだ。殆ど喜多ちゃんがしゃべってるけど。あたしはうとうとしながら、微笑ましい二人のお喋りに聞き耳を立てる。

 

「……き、今日は一日、みんなと遊べて楽しかった、です。あ、明日からまた頑張れそうです」

 

 人前でのぼっちちゃんの話し方は、相変わらずたどたどしい。でも最初会った時に比べれば随分マシになった。

 

「うん! また遊びましょうね! ひとりちゃん!」

 

 え? うっかり目を覚ましそうになる。

 

「あうぇ! い、今、ひとりちゃんって……」

 

 ぼっちちゃんらしい大袈裟なリアクション。つーかあたしも最初ひとりちゃん呼びだったっけ。

 

「急にごめんね。もしかして後藤さん呼びの方が良かった? 仲良くなったのに名前呼びに変えるタイミング逃がしてたから、いきなり名前で呼んでみました♪」

「あ、じゃあ、こっちも、リョウさんみたいに、い、郁代って呼んだ方が……」

「……それは止めて。伊地知先輩みたいに喜多ちゃんって呼んでほしいな。ね、いいでしょ?」

「あ、はい、喜多さ……き、喜多ちゃん!」

 

 確かに聞こえた『ひとりちゃん』って。いつまでも『後藤さん』なんて他人行儀だし、ダチが仲良くなれば呼び方変えるぐらい普通のことだ。普通のことなのに。あたしヘンだな。

 

 ――なんであたし、苛ついてんだろ?

 

 眠気で薄れゆく意識の中で考えが巡る。こんなに心がざわつくのは、ぼっちちゃんが悪いんだ。

 あたしの一目惚れ? なんだよそれ。……一目惚れなんて恥ずかしいから。

 じゃあ、嫉妬? そんなわけない! そんなわけないだろ……。

 

 やっぱあの時、キスしたんだよな。あの娘があたしの『はじめて』を奪ったんだ。

 

 ――あの時のキスの意味、教えてよ、ぼっちちゃん。




江ノ島編、終了。次回から2学期へ。

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