もしもJK星歌ちゃんだったら。   作:三十路スキー

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渇愛(トリシュナー)②

「おはようございまーす」

「まーす」

 

 さて、バイトの時間だ。スターリーに行ってみると、姉貴が見知らぬ女の子と話してる。さては面接か? いや、新しいバイトを入れるみたいなことは言ってなかったはずだ。あ、あの制服は秀華高校のだよな? それにあのやたら長い髪は見覚えが……。

 

「おはよう。キミたちいいとこに来たね」

「なんだよ、いいところって?」

「お、おはようございます……」

 

 女の子がこちらに振り向く。……可愛い。つーかぼっちちゃんじゃねぇか! こっち向くまで分からなかったぞ!

 

「あー! ぼっちちゃん制服だ!」

「きょ、今日は始業式ですから。し、式典は制服じゃないと……お、怒られるん、です」

 

 やべぇ、めちゃくちゃ可愛い。普段の芋ジャージとはえらい違いだ! いつもの髪飾りも外してる。1学期の最終日はあたしバイト休みだったから知らなかった。惜しいことしたな。なんで姉貴は言ってくれなかったんだろ。

 

「うーむ。やはりここはビジュアル路線で売るべきか……いてっ!」

 

 銭の目になった山田を無言でシバく。

 

「すげぇ似合ってる! つーかこれからも制服着ろよ!」

「はうええ! むむむむ無理です!」

 

 いや、高校生が制服着るのは当たり前のことだぞ。あのピンクジャージでよく今まで生活指導食らわなかったな。

 

「まあまあ、その話はその辺で。それよりほら、ぼっちちゃんは言いたいことがあるんだよね?」

 

 姉貴がぼっちちゃんの背中を軽く叩く。

 

「お、ぼっちちゃんどした?」

「あ、あの……文化祭、結束バンドで、で、出ませんか?」

 

 おお! ぼっちちゃんから珍しく積極的な提案! あたしはうれしいぞ!

 

「……なんて、やっぱムリ、ですよね?」

「んなことねぇよ。あたしは結束バンドでライブやりたいぞ。なあリョウ?」

「うん。中学以来の文化祭ライブ、胸熱。あの時はマイナー曲やって会場お通夜にしてやったぜ」

「なんでドヤ顔なんだよ」

「私もやるべきだと思うな。一生に一度、青春の舞台だよ!」

 

 あたしとしては歓迎だし、リョウも乗り気だ。姉貴もノリノリで援護射撃してくれる。

 

「で、ですかね、でも……」

「あーもー! ウジウジすんな! いつも言ってるだろ? 女は度胸だってさ!」

 

 いつものビビリ虫。大丈夫だって、8月のライブもなんだかんだ上手くいったろ?

 

「でも、ぼっちの気持ちも分かる」

「なんだよリョウ、水差すのか」

「そうじゃない。よく考えるべきだって言ってるの。学校でのライブなら、ここよりはるかに多くの人の前で演奏することになるんだから。半端な気持ちでやるわけにはいかない」

「ぬぬ、確かに……」

 

 音楽に関してはいつも真っすぐ、妥協を許さないのが山田リョウだ。そういうところ、かっこいいよ。

 

「私もあの時の惨状を今でもたまに夢に見るし」

「さっきのは強がりだったのかよ」

 

 まあ、お前はそういう奴だよな。知ってた。

 

「そういや、喜多ちゃんには相談したの?」

「あ、いえ、こ……これから、です」

 

 ん? 妙に歯切れ悪いな。他の人からすればいつもと同じに見えるが、ぼっちちゃん検定1級のあたしには分かる。嘘や隠し事ってほどじゃないけど、ひっかかることがあるのかな? まあ空気読みの鬼こと喜多ちゃんだ。とっくに何か察してそう。ぼっちちゃんは分かりやすいし。

 

「そもそも学外の人間は出られるかとかも確認しないといけないし、出るとするなら、細かいことは喜多ちゃんに任せよう。ぼっちちゃんの頼みなら絶対断らないだろうし」

「そうだね、郁代に押し付けよう」

「言い方!」

 

 我らが広報担当大臣、行動力とコミュ力の化身な喜多ちゃんなら上手いことやってくれるだろ。正直ぼっちちゃんじゃ不安だ。

 

「まだ時間はあるんだろ? よく考えて悔いの無い選択をしろ。あたしはそれに従うよ」

「ぼっちの意思を尊重する。焦って決める必要はないよ」

「か、考えて……みます……」

 

 ぼっちちゃんまだ迷ってるな。ま、締め切り前まではゆっくり考えればいいさ。あたしはぼっちちゃんの気持ちを上手く後押しできただろうか。つーか、あたしたちの高校のステージは部外者禁止でそもそも軽音部すら無いからな。ライブやるとしたら秀華でやるしかない。あとはぼっちちゃんの気持ち次第だ。

 

「よし! そうと決まれば仕事の時間だよ。今日は余裕あるし、普段掃除しないところをしっかりやってもらうよ!」

「はいはい、行こうかふたりとも」

「星歌ちゃん、ハイは一回でしょ!」

 

 ぼっちちゃんも今日は制服でバイトだ。むほほ。……いかん本音が溢れる。

 

 

 

 

 

「ぼっちが死んだ」

「あああ……私罪人だ……」

 

 次の日、出勤早々ぼっちちゃんが死んでる。もちろん本当に死んだわけでなくて、比喩表現。正確には出勤早々ゴミ箱に入ったまま気絶してる。服装もピンクジャージに戻ってるし。

 

「新しいギタリスト探さないと……なんて言ってる場合か! 喜多ちゃんよ、一体全体これはどういうことだよ?」

「実は私、ひとりちゃんはてっきり文化祭に参加したいんだと思って申込書勝手に出しちゃったんです」

 

 喜多ちゃんをしても読めなかったか。ぼっちちゃん検定失格。まだまだだな。昨日はやる気だったのにな、ぼっちちゃん。

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