もしもJK星歌ちゃんだったら。   作:三十路スキー

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渇愛(トリシュナー)③

「これあげる! 私のバンドライブすんだよね。良かったら来てよ」

 

 いきなり廣井さんから貰ったライブのチケット。この間のお返しだって。

 

『SICK HACKワンマンライブ 新宿サイコー!』

 

 普段はグダグダだけどすげぇバンドマンなんだよなこの人。前オーチューブで動画見たら200万再生目前だったしな。……ってライブ今日じゃねぇか! 油売ってる場合じゃないだろ! もうリハとか始まっててもおかしくないだろうに何やってんだ。

 

「いってらっしゃい。きくりのバンドはすごいんだから。勉強のつもりで聞いてくるんだよ」

 

 なお、ぼっちちゃんに金返してないことが発覚した廣井さんは、姉貴の『伊地知式原爆固め』の餌食となった。

 

 

 

 

「それじゃあ新宿にれっつごー! うっぷ……はぎそう……」

 

 廣井さんもう出来上がってんな。千鳥足でフラフラと歩いていく。新宿までの道中、ぼっちちゃんが何度か瀕死になるもんだから、あたしが引っ張って連れて来るはめになった。でも、ガキの頃やってた電車ごっこみたいでちょっと楽しんでるあたしがいる。ぼっちちゃんの胸が背中に当たってキモチイイのはナイショ。

 

「じゃーん! ここが私のホーム、新宿FOLTでーす!」

 

 ここが廣井さんの『拠点』か……。姉貴が言ってたっけ。FOLTはギョーカイでは老舗。ここに上がれるバンドは精鋭揃い。スターリーとは『格』が違う。まあ営業前の雰囲気はスターリーと大して変わらない。ぼっちちゃんたちもどことなく安心してる。テーブル席には、普段からここで演ってるバンドマンとおぼしき連中が結構座ってる。それを横目にあたしたちは廣井さんに付いていく。

 

「……」

 

 ぬぅん? 向こうのテーブルからやたらガンを飛ばしてくる女がいる。ツインテールにベレー帽。かわいらしい顔立ちに似合わないキツい表情と、レザーの厳ついコスチュームが印象的だ。

 

「……」

 

 不動の姿勢でこっちを睨むアイツ。

 

「ひゅいぃぃ……」

 

 あいつ! ぼっちちゃんビビらせやがって! アウェイの洗礼ってやつか。すかさずあたしが間に入って睨み返す。こういうのはナメられたらおしまいだ。ガン飛ばし女はこっちの意図を察したのか立ち上がってあたしをさらに睨み返してくる。体格は小柄。見た感じ、あたしらと同年代か? 上等じゃねぇか! このツインテールベレーチビ女!

 

「……なによ」

「……あんだよ」

 

 一触即発、その刹那。

 

「ほら、ヨヨコ先輩。向こうでミーティングっすよー」

「いだだ! あくび!! 耳は引っ張らないでって何度も言ってるでしょ! 姐さん助けて―!」

 

 黒マスクを着けた女がツインテチビの耳を引っ張っていく。衣装からしてあいつの仲間か?

 

「星歌、じゃれてないで、ほらこっち」

「ぬぅぅぅぅん! やめろー! そこは引っ張るなー! ち、千切れる!」

 

 頭のソレはあたしの大事なチャームポイントなんだ! ドリトスじゃねぇぞ! 姉貴とあたまおそろい! つーか引っ張るな、リョウ抜かないでくれー!

 

「……どもっす」

 

 去り際にマスク女がこちらにペコリと頭を下げる。それを見てリョウも無言でペコリ。ぬぅん! これじゃあたしとあのチビっ娘だけがガキみたいじゃねえかぁ!!

 

「おうおう、若いねぇー」

 

 廣井さんがしたり顔でニヤついてる。ちょっとムカつく。なんだかんだと話しながらさらに奥まで進んでいく。




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