もしもJK星歌ちゃんだったら。   作:三十路スキー

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渇愛(トリシュナー)④

「おはよー! ごめーん! 遅れたー!」

 

 廣井さんが奥の事務スペースらしきところに居る人に話しかける。

 

「あぁ? 廣井てめぇ今何時だと思ってんだ?」

 

 うわ……なんかすげー厳ついおっさんだ。ピアスバチバチでなんか明らかにカタギじゃねぇぞ! こ、怖い……。さっきのガキんちょとはワケが違う!

 もうだめだ、おしまいだ……。最期に一目、お姉ちゃんに会いたい。

 

「い、伊地知先輩しっかりして!」

 

 ゴメン、喜多ちゃん。無理かも。

 

「……ちーん」

「おおおおお……」

「ひとりちゃん! リョウ先輩まで!?」

 

「ちょ、タンマタンマ! お客さん連れて来たんだからさ、銀ちゃんスマイルスマイルー! ほら、みんなも挨拶しなよー」

「こ、コンニチワ……」

 

 声が裏返る。ううう……。あたしすっかりビビっちまってる。みんなごめん、おしっこチビった。

 

「あらやだー! 廣井ちゃん、こんなかわいいお友達がいるのねー! アタシ吉田銀次郎37歳でーす! 新宿FOLTの店長よん♪」

「安心して、銀ちゃんは心が乙女なただのおっさんだからー」

 

 うへぇ、さっきのコワモテな雰囲気とはずいぶん違うぞ。オネェ系ってやつか。

 

「おっさんは余計よー! もう、失礼しちゃうわね! プンプン!」

「見た目とのギャップに頭バグるよねー」

 

 ぞぞぞぉ……。37歳男性のぶりっ子、気持ち悪ぅ……。

 

「おい廣井、遅刻すんなって何度も言ってるよな?」

「もう、リハ終わっちゃいましたヨ!」

「ごめーん! まあ何とかなるっしょ!」

 

 向こうから二人の女性がこちらにやって来る。二人とも遅刻を咎めてるようだが、廣井さんは反省ゼロだ。スカジャンの女性は、ユニセックスな雰囲気の美人さん。リョウとはまた違った感じで『男前』って感じだ。女性に男前なんていうのは失礼だけど、あたしの貧弱なボキャブラリーでは他にいい例えが見つからない。

 もう一人は外国の人かな? 綺麗なブロンドヘアに碧い瞳、透き通るような白い肌。男前さんにも負けない美形。服装は浴衣を大胆に着崩した恰好。ダイナマイトボディが眩しい……。

 

「……もしかして結束バンドの人たちですか?」

「は、はい! えっと……」

「SICK HACKの人」

 

 後ろから小声で教えてくれた。ナイスフォロー、リョウ。つーかあたしたちのこと何で知ってんだろ?

 

「ドラムスの岩下志麻です。よろしく」

「こ、これはご丁寧にどうも」

 

 深々としたお辞儀。礼儀正しい態度にこっちも恐縮してしまう。

 

「初めまして! ワタシ、イライザ! ギターやってマス。イギリスから日本来てイマ3年目ー! 仲良くしてネー!」

 

 イライザさんはハイテンションで元気いっぱい。岩下さんとは対照的だ。

 

「ども、伊地知星歌って言います。ドラムスで一応リーダーです」

「ご、後藤ひとりです……。いちお、リ、リードギターです。お、お、おながいします!」

「ギターボーカルの喜多です♪ よろしくお願いします!」

「ベースの山田です。SICK HACKのコアなファンです」

 

 それぞれに自己紹介。名乗られたら名乗り返すのが礼儀だ。リョウは謎のドヤ顔。

 

「え? 伊地知ってことは……伊地知先輩の妹さん?」

「はい、そうですけど?」

「いやぁ、大きくなったね。私とは一回しか話したこと無いから覚えてないだろうけど。大学時代は、伊地知先輩には廣井とお世話になってたんだよ。あ、廣井がみんなにご迷惑をお掛けしてるみたいで。よかったらこれどうぞ。つまらないものですが」

 

 小さいけど高級感のある包み紙。こ、これは! 『ねこや』の芋ようかんじゃねぇか! お詫びの秘密兵器って姉貴が言ってたっけ。これさえあれば大体のお詫びは上手くいくらしい。渋いお茶とよく合うんだよな。

 

「え、岩下さん迷惑だなんてそんな! それにこんないいものいただけませんよ!」

「志麻でいいよ。その方が通りがいいし。みなさんで召し上がれ。伊地知先輩にもよろしく」

「ありがとうございます! 志麻さん」

 

 とことん礼儀正しいなこの人。3人ともキャラバラバラだな。うちもそうだけど。

 

「はーい! おしゃべりはそこまで。あんたたち、そろそろ準備なさい。あ、ゲストちゃんたちはライブの後で楽屋行っていいわよ。アタシSTARRYのジカちゃんとはマブダチだもんね。特別サービスよん♪」

 

 この人も姉貴の知り合いなのか。まあ狭いギョーカイらしいしな。

 

「へいへい。それじゃ、ぼっちちゃんたちはごゆっくりー」

「みんな、今日はライブ楽しんでいってね」

「後でイッパイおしゃべりしようネー!」

 

 SICK HACKの3人がライブの準備に向かう。廣井さんたちのライブ今から楽しみだ。

 

「さ、キミたちも。客席は向こうよ。あの娘たちのナマ本番、聴いたらトブわよ! んーちゅ♪」

 

 新宿オネェの投げキッス。……げろげろー!!




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