「みんなー今日のライブどうだったー?」
開口一番に廣井さんがあたしたちに感想を聞いてくる。ライブ後で吉田店長のご厚意で楽屋に入れてもらった。楽屋の壁一面に出演バンドのバックステージパスが貼り付けられてる。東京では有名な老舗ライブハウス、スターリーの軽く倍は入る新宿フォルトだ。いずれはここでも結束バンドでライブしてみたいな。
「ライブすげー良かったです!」
「私、サイケデリックロックって初めて聴きましたけど、好きになっちゃいました!」
あたしと喜多ちゃんが率直に感想を述べる。正直想像以上だ。まじサイコーのライブだった! 特に廣井さんは普段のだらしねぇ酒クズと違い過ぎて頭バグりそうだ。
「志麻さんのハチャメチャな変調子を完璧に叩くドラム、イライザさんのバカテクで情熱的かつ論理的なギター、そして廣井さんのベースが演奏全体を支える音の壁、そして圧倒的なカリスマ性! 今日のライブも最高でした!」
厄介ヲタクモード全開のリョウ。楽屋に入れてもらえてうれしいのか、珍しくはしゃいでる。
「あ、ありがとう……。楽しんでもらえたみたいで嬉しいよ」
リョウの勢いに押されて、志麻さんがちょっと引き気味だ。
「あれれ? ぼっちちゃん浮かない顔だけど……もしかしてライブ良くなかった?」
少し離れたところで俯いてるぼっちちゃん。廣井さんが、心配そうにぼっちちゃんの顔を覗き込む。
「あ、ライブはホントに、よ、よかったです……。でも……」
「どしたぁ? こっちおいでー」
ぼっちちゃんと廣井さんは楽屋端の席に座る。廣井さんが静かに何か語り始めたが、よく聞こえない。
「今日はみんなに音を聴いてもらいたかったから後ろに居ましたけど、普段なら聖水を直で浴びることができる最前列で聴かせてもらってます! 酒ぶちまけながらのライブ最高です!」
リョウがますます目をキターンと光らせながらまくし立てる。うるせえ!
「アハハ……ごめんね、きくりがお調子乗ってライブ中に飲んだくれてお酒吹いちゃうカラ……」
「廣井には後でよく言って聞かせます……」
イライザさんもタジタジだ。志麻さんはちょっとヘコみ始めたぞ。
「廣井さーん! また下駄で踏んで下さーい!」
リョウのテンションますますやばいって。
「お、おう……」
廣井さんまで気圧されてるぞ……。
「そういやイライザさんは日本でバンドやってるってことは、邦ロック好きなんですか?」
ここは話題を変えよう。リョウの暴走が止まらない。
「ノー! コミマ参加したくてニホン来ました! 本当はアニソンコピーバンドやりたいデス!」
「そ、そうなんですか……」
「アニソンこそ、ニホンの最先端ミュージックデスヨ!」
となりで志麻さんが何とも言えない顔をしてる。コミマはネットニュースぐらいでしか知らないけど、かなりオタクなんだなこの人。すげー美人なのに。
「じゃあアニメとかお好きなんですね」
「イエス! ニホンのカワイイは世界に誇る文化デス!」
イライザさんが取り出したスマホには『めんだこちゃん』の大きめストラップが。実はあたしこのアニメが大好きなんだよね。教養テレビで毎朝5分ぐらいやってる幼児向けアニメだけど、凄く癒される。オーチューブとかでも大人たちに大好評だ。メンダコたちがとってもかわいい。
「めんだこちゃんだ! かわいい!」
「オーイエー! せーかちゃんご存じデスかー! ならこれあげマース!」
イライザさんが取り出したのは同人誌ってやつか。詳しくは知らないけどコミマはこれやってる人たちのお祭りみたいなもんだっけ?
えっと『めんだこちゃんほのぼの擬人化本』らしい……。このかわいい女の子たちが擬人化したメンダコか……。『ぴんく×きいろ』イチャラブってなんのことだろ? この2匹はアニメでも一番の親友だよな。きいろの子はあたまお揃いだし、なんとなく愛着あんだよね。
「えっと、いいんですかもらっちゃって」
「イエス! 貴重な同志にプレゼントフォーユー! 全年齢なのでご安心デス!」
「ありがとうございます。あたしもなんかうれしいです」
「文化祭ライブ……良かったら来てください」
「いえーい! その意気だー!」
笑みを浮かべる向こうの二人。ぼっちちゃん、文化祭に出る決心がついたようだ。
「壁の修繕費、10万加算しとくからね……」
廣井さんが壁をパンチで破壊。店長、笑いながらキレてる……。廣井さん顔面蒼白。
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