もしもJK星歌ちゃんだったら。   作:三十路スキー

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星歌ヒストリーを作ろう!②

 部屋に戻って、ドラムスティックと練習パッドを取り出す。文化祭で披露する新曲その1『忘れてやらない』しっかり練習しないと。ぼっちちゃんにしては珍しく前向きで素直な歌詞だ。ちょっと捻くれたところもあるけど、それがぼっちちゃんの味だ。これがあたしたち流の青春ソング、だよな。

 歌詞を読んだリョウがすぐにメロディを作ってくれた。リョウにしては珍しくストレートな明るい曲調。ぼっちちゃんが歌詞に詰め込んだ『今バンドができる喜び』を、ハイテンポでノリノリな曲で表現してる。今回は全部オリジナル曲の攻めたセトリだけど、キャッチーな1曲目で観客の心は鷲掴みだ。少なくとも中学時代のリョウみたいにお通夜状態にはならないはず。……多分。

 

「よし、あたしだってやれるんだ!」

 

 一心不乱にスティックで叩いて新曲のリズムを体に叩き込む。喜多ちゃんもぼっちちゃんも成長してる。リョウも元から上手いのにさらにキレを増してる。あたしは成長できてるのだろうか?そりゃこうやって毎日練習してるんだから、少しは成長してないと困るんだけどさ。

 ……正直才能の違いみたいのを感じずにはいられない。あたしからすれば3人ともモンスター級の才能があるとしか思えない。単純なキャリアはあたしが一番長いはずなのに。あの娘たちは、モノが違う。

 焦る。焦る。焦る……。

 

「ふう。一休みしよう」

 

 本棚を見ると、ふと古いアルバムが目に留まる。この本棚も大半をリョウの訳わからんサブカル本に侵略されつつあるが、ここは最後の砦だ。母さんが遺してくれた思い出がいっぱい詰まってるんだからな。

 まず目に入るのがあたしが赤ちゃんだったときの写真。オムツを替えてくれる姉貴が写ってる。時々姉貴が得意げに言う『私はあんたのオムツだって替えてあげてたんだからね』の根拠がこれ。まあ、この後あたしにおしっこ引っかけられたらしいけど。

 うちは父さんが単身赴任が多くて、家に居ない時期が長いから、あたしと姉貴のカメラマンは母さんの仕事だった。ドライブが好きで、あたしたちを色んな所に連れて行ってくれたっけ。

 あたしたちの写真、年を経るごとに仲良し姉妹から、ムスッとしてそっぽを向く写真が増えてくるのが少し笑えてくる。いや、笑っていいもんじゃないんだけどさ。姉貴の高校の卒業式なんかひどいもんだ。下らないことで喧嘩した後で撮ったもんだから、見事にいがみ合ってる。でも、これが家族4人で撮った最後の写真になっちまったんだよな……。

 そんな感じで久々にアルバムを見てると、あっという間に時間が過ぎてしまう。

 

「やべ! もうこんな時間だ!」

 

 アルバムを本棚に戻して練習を再開しようとすると、ピンポーン♪ とインターホンが鳴る。

 

「はーい! 今出まーす」

 

 この間頼んだアメゾンかな? しゃべるめんだこちゃんぬいぐるみ(Lサイズ)楽しみだな。

 

 

 

 

 

「よっ、星歌」

「なんだリョウか。練習の時間にはまだ早いはずだけど?」

「この世界のYAMADAに向かって『なんだ』とはご挨拶だね」

「はいはい。そのセカイノヤマダサマが何の御用で?」

「お願い何か食べさせて……。もう限界」

 

 ぐぎゅるるーと腹の虫を鳴らしながらリョウが涙目で懇願してくる。

 

「最近ちょっとウチに来なくなったと思ったらこれだ。まったくいい加減にしろよ!」

「ううぅ。もう無駄遣いしません……。ぼっちにお金借りません……」

 

 涙目になるリョウ。この間ぼっちちゃんに何回かカネを借りてたのがバレて、姉貴がブチギレ。『伊地知式パワーボム』を食らわされてから死ぬほど説教されてたな。

 

「……しょうがねぇな。ほら、あがれよ。テキトーなもんで良かったら何か食わせてやる」

「星歌やさしい。好きぃ……」

 

 ん? なんか一瞬『計画通り』って感じのゲスい顔をしたような? ……今日は機嫌が良いからな。見なかったことにしてやろう。




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