もしもJK星歌ちゃんだったら。   作:三十路スキー

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特別編の姉妹逆バージョンです。
姉妹愛です。卑猥は一切ない。いいね?
ここでは姉が虹夏(21)で妹が星歌(9)です。

久々にJK星歌更新。
総合評価1000突破記念(予定)
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虹夏と星歌 姉side前編

「……ごめんね。ダメなお姉ちゃんで」

「やめろよ。ダメなんて……言うなよ。ぶっとばすぞ。……お願いだから、さ」

 

 私が職場で倒れたあの日、病院のベッドでふたり抱き合って泣いてたっけ。そして誓ったんだ。私がこの娘を守る。世界一仲の良い姉妹になるんだって。

 

 

 

 

 

 

 私は伊地知虹夏、21歳。神田の芳文大学に通っている。今は独り暮らし。実家には去年の正月以来帰ってないかな。なにせ実家は下北沢。かなり近くていつでも帰れるからね。そう思うと意外と帰らなくなる。それに最近は家族となんか気まずくてさ。特に12歳も離れた妹の星歌とは。

 

『お姉ちゃんの嘘つき! 今日は一緒にアニメ見るって言ってたじゃん』

『ごめんね。こっちもバンドが忙しくてさ……』

『またバンドバンドって! バンドなんて大嫌い!』

『あっそ。こっちだって別に好いてほしいなんて頼んでないよ』

 

 ――仲直り、出来てないな。

 

 独り暮らしの理由はバンドに専念したいから。バンドが今私の全て。人生分からないもんだね。高校までは優等生で通してきたのにさ。教科書がボーイフレンド灰色の青春。国家公務員志望だったはずなんだけど。

 第一志望の大学には入れなかった。そんなささやかな挫折を抱えて、特に夢中になれるようなものも無かった私の心を捉えたのは、バンドだった。下北沢生まれだからバンドマンなんてさして珍しいものでもなかったんだけど、何となく避けていた。お父さんの仕事関係でバンドマンとは付き合いもあった。日常に近すぎるから、バンドマンの駄目なところも沢山見ることになる。憧れよりも嫌悪が上回ってたのかもね。

 実は子供の頃にキッズドラム教室に通ってた時期もあったりする。お父さんが言うにはドラムが脳の発達にいいらしいのでやらせてたってさ。大学一年生の春、思い立ったが吉日とばかりにあたしは仲間を集めてバンドを始めた。多少なりともドラムの経験がある私は引く手あまたでメンバー集めには困らなかった。根が生真面目でチャラい下北沢バンドカルチャーに馴染めない私は、ストイックにバンド活動に打ち込んだ。アイドル性が求められがちなガールズバンドらしからぬ真摯さは、正直異彩を放ってたと我ながら思う。

 

『虹夏、練習ばっかりで暑苦しいよ』

『バンドできるのなんてどうせ大学のうちだけなんだから、もっと遊ぼうよ』

 

 辞めていった連中の捨て台詞。挙げたらキリがない。メンバーはコロコロ変わったけど、あえて去る者は追わなかった。チャラチャラと遊んでるような連中は相手にしたくなかった。大学生のくせに拗らせてるよね。『人生の夏休み』に何やってんだか。

 たまに告白してくるような男の人もいた。何人か女の子もいたっけ。私は正直モテた。でもあの子たち物好きだよね。見た目も地味で性格も可愛げなんて無い私なんかの何がいいんだろ? 全て誠実かつ穏便に断ったつもり。恋だ愛だの浮かれた連中に私の夢の邪魔をされたくない。私はプロのバンドマンになるんだ。

 

『ねぇお母さん、もし私がバンドで食べていくって言ったら……どう思う?』

『虹夏ちゃんがそうしたいなら、お母さんは応援する。でもね、家族のことは軽んじちゃダメだよね? 星歌とちゃんと仲直りするんだよ。いつまでも意地張ってないでさ』

『……別に意地張ってるわけじゃない』

『とにかく今度の連休にでも実家に帰ってらっしゃい。忙しいだろうけどなんとか時間作ってさ』

『分かったよ。そうする』

 

 わざわざ下宿に押しかけて来たお母さんとの会話。これが最期のやりとりになってしまうなんて、この時には思わなかったな……。

 

 

 

 

 

 ――お母さんが死んだ日、私は泣かなかった。いや、泣けなかったんだ。

 

 お母さんが死んだ。警察はお父さんに玉突き事故の巻き添えだとか説明してたな。即死だったらしい。棺の中にはお母さんの亡骸。四肢はほとんどバラバラになってたけど、なんとか繋ぎ合わせて棺桶に入れたらしい。ただ燃やすためだけに亡骸を綺麗に整えるっていうのが、私にはひどく滑稽に思えた。綺麗に死に化粧を施された母さんの顔を見ながらぼんやりと私は思う。

 葬儀自体はお父さんがしっかりと取り仕切ってくれた。葬儀に来た親戚連中は、私たちを見て好き勝手に噂し合う。同情でもしてるように見せながら好奇の目を向けてくる。お父さんは仕事で忙しく、親戚付き合いはもっぱらお母さんの仕事だった。

 その後のことは覚えてない。細かいことはお父さんがやってくれた。私たち姉妹も葬儀が終わった後にそれぞれ学校へ復帰した。……塞ぎ込む妹のことはあっけなく無視をして。なんて言葉を掛ければいいかなんて分からなかった。

 私には大学があるしバンドもある。ここで止まるわけにはいかない。そう自分に言い訳をして、星歌のことは考えないように心に蓋をした。きっと大丈夫、あの娘はちょっと生意気だけど強い子だ。私はそう思い込むことにしたんだ。

 

 ――でも、そうじゃなかった。

 

 

 

 

後編に続く




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