文化祭+エピローグとおまけで完結予定。
あたしたちの星座①
「私、変わりたいんです!」
廣井さんたちのライブから少し経つ。あたしたちは文化祭本番に向けて、練習漬けの日々。ある日のバイト前、喜多ちゃんが突然リョウに追加レッスンを希望してきた。リョウは最初ぼっちと練習してるでしょとノリ気ではなかったけど、喜多ちゃんの意気込みに考えを変えたようだった。
「じゃあ、レッスン料はカラダで払って?」
「は? 何言ってんだリョウ!」
さすがにそれは冗談にならんぞリョウ!
「リョウ先輩になら私、何をされても……ポッ……」
「違う。何考えてんの。演奏で返してって意味」
リョウがピシャリとツッコむ。紛らわしいな。
「わ、分かってますよ!」
ホントか喜多ちゃん。かなり乗り気だったぞ。
「そうだな……。郁代はバッキング、分かるよね?」
「はい。ひとりちゃんに習いました」
「なら十分。郁代にもソロパートやってもらうから」
2曲目の『星座になれたら』でリョウは、ぼっちちゃんにソロパートを提案した。ぼっちちゃんの隠れた実力を発揮させるためにはうってつけのアイデアだ。8月のライブみたいにカッコイイところ見せてくれるはずだ。
「いや、流石に喜多ちゃんには早すぎる。確かに大分上手くはなったけど、まだまだ初心者だぞ?」
あの『逃げたギター事件』からもうすぐ半年。喜多ちゃんはギターと歌をずっと一生懸命に練習してきた。その熱意はあたしたちも舌を巻くほどだ。リョウも彼女の才能を認めている。
「どうする? 無理強いはしないけど。やらないならレッスンは無しだね」
リョウが少し意地悪に言う。喜多ちゃんの負けん気を煽る様に。
「……やります!」
喜多ちゃんはやる気十分だ。正直残り時間を考えるとあたしには無謀な挑戦にも思えるが。
「よし、早速今日から始めよう」
早速今日のバイト終わりからリョウと喜多ちゃんのマンツーマンレッスンが始まった。リョウのレクチャーは冷静かつ的確だ。ギター門外漢のあたしから見ても教え方が上手いと思う。割とマジで金取れるんじゃないかってぐらいには。バッキングという技法を上手く使えば、短いが見栄えのするソロパートが出来るらしい。リョウはこういうとこセンスあるよな。
それを喜多ちゃんはスマホで撮影して何度も見返して練習してる。いつものキターンはナシで、真剣なまなざしをリョウに向ける。
ちなみにぼっちちゃんはまさかの全科目補修。あいつどうやって今の高校に入ったんだ? あいつのことだから練習をサボることは考えられないが、無理しすぎないか心配だ。
「忘れ物だぞ喜多ちゃん。大事なスマホを忘れるとはらしくないな」
スターリー出てすぐにある自販機の群れ。ぼっちちゃんと喜多ちゃんは駅に向かう道で必ずここを通る。バイトや練習の帰りは2人一緒だ。
「はぁ……はぁ……伊地、知……せん、ぱい……すま、ほひゅう……」
忘れ物に気づいて走って戻ったのか、はぁはぁと息を切らせている。こんな喜多ちゃんは初めて見る。
「落ち着け。まずは呼吸を整えろ。……ほら、無くしたら大変だろ?」
「ぜぇぜぇ……あ、ありがとうございましゅうぅ……」
スマホを手渡してやる。逃げたギター以来の、弱った喜多ちゃん。ちょっと斬新かも。なんて思ってる場合じゃない!
「よかった……。大切なリョウ先輩のレッスン動画、見れなくなったらどうしようかと……」
「あ、ちょっと待ってろ」
「はひ?」
適当な自販機に硬貨を入れる。2本のペットボトルを買う。
「これ、好きだろ?」
あたしはミルクスウォーターを差し出す。喜多ちゃんがよく飲んでるやつだ。
「え? 頂いちゃっていいんですか? スマホを見つけてくれただけじゃなくて飲物まで……」
「遠慮すんな。先輩の好意は受け取っとけ」
「ありがとうございます! いただきます!」
もういつもの元気な喜多ちゃんが戻ってきた。
「よかったら、少し話さないか? 時間まだ大丈夫なら」
「はい! 伊地知先輩!」
もうすぐ10月。日中はまだまだ暑いが、夜は過ごしやすくなった。自販機の向かい、いい具合に座りやすい場所がある。2人で横に並んで腰掛ける。そういや喜多ちゃんと2人きりでじっくり話したこと、無かったな。
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本編は年内完結したい(願望)