もしもJK星歌ちゃんだったら。   作:三十路スキー

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劇場総集編の追加シーンより。青春で何が悪い


あたしたちの星座②

喜多ちゃんを引き留めて二人で話をする。世間話や文化祭の話をしていたが喜多ちゃんが、少ししんみりした表情になる。

 

「子供の頃『この指止まれ』ってあったじゃないですか? 私は指を出す役やったことないんですよね。指を出すのはその場の主役なんですよ。でも、やったことがないんです」

 

 右手の人差し指を真上に立てる喜多ちゃん。

 

「なんだよ藪から棒に」

 

 喜多ちゃんの自信無い様子に、あたしはすこし戸惑う。

 

「自分で言うのもなんですが、私って昔から勉強も運動もそこそこに出来て、友達も多いんですよね」

「は? 自慢かよ」

「でも、人生で主役にはなったこと無いって思うんです。部活や委員会もあくまで助っ人。友達の間でも空気を呼んでリーダーのようなポジションにはなれずに来ました。それがずっと引っ掛かって……。だから私、変わりたいんです。ひとりちゃんのギターを聞いたあの日からそう思います」

 

 俯き加減の喜多ちゃんの表情には真実味がある。

 

「なんでだよ? ぼっちちゃんこそ、そういうタイプじゃないだろ?」

 

 あたしは訝しむ。二人は良くも悪くも対照的だ。

 

「ひとりちゃんは主役になれる人だってギターの音色を聞いた時、なんとなく解った気がするんです。最初は軽い気持ちで話しかけましたけど、今では憧れさえあるんです。クラスに友達の一人も居ないあの娘に。私、ヘン……ですよね?」

「んなことねぇよ、ちょっと手貸してみろ」

「え?」

 

 彼女の細い腕を掴んで、人差し指に触れる。固くなってるけど綺麗な指先。

 

「人差し指じゃなくて、中指を立てんだよ」

「いや、なんで……こんなポーズヤバイんじゃ?」

 

 強引に中指を立てられて困惑する喜多ちゃん。確かにここがアメリカだったら死んでるな、あたし達。

 

「この指止まらせんなよ! 空気読まねぇでテメェを貫くのがロックってもんだ。たぶん!」

 

 ゴチャゴチャ言う奴らに構ってる暇はねぇ。廣井さんみたいに『うっせぇなー!』って一喝するような演奏してやろう!

 

「あはは。ちょっと突然すぎてびっくりしましたけど、なんか吹っ切れちゃいました」

 

 ファックサインのままニッコリスマイル。ある意味喜多ちゃんらしいな。

 

「ババアになっても、みんなでバンドやろうな!」

 

 あたしも中指を立てて、喜多ちゃんに見せつける。

 

「はい! 約束ですよ!」

 

 二人中指を立て合って、別れた。これでこそロックだろ?

 

 

 

 

 

 喜多ちゃんも練習頑張ってるな。もちろんリョウやぼっちちゃんも。あたしだって負けられない。家に帰ってからも自主練習は怠れない。雑誌の山をドラムに見立てて叩く、叩く。

 

「すげぇ! あのドラマー神業だぞ!」

「文化祭のMVPは間違いなく彼女よ!」

「貴方は一体誰なんだー!」

 

 どこかから生徒たちの声がする。空想のスポットライトが華麗なるドラマーを照らす!

 

「ふっ……人呼んで嵐を呼ぶドラマー、伊地知星歌だぜ!」

 

 決まったな。ドヤ! ポーズを決めてイメトレばっちり!

 

「星歌ちゃん、さっさとお風呂入っちゃいなさーい」

「……姉貴、いつから見てた?」

「んー? 最初から。クスッ」

 

 姉貴が意地悪く笑う。

 

「ぬぅぅぅぅん!」

 

 あたし、多分顔真っ赤だ。




次回メイド喫茶編。
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