「本当にすみませんでした!」
教室で思い切り頭を下げる。あたしは勢いよく直角に頭を下げながら、後藤の頭を押さえつけるように頭を下げさせる。ライブ本番の前日に、なんてことをしでかしてくれたんだこいつは!
「あわわ! 困ります! 頭を上げてください!」
困惑するメイド女子たち。
「あわわわわ……ちーん」
ぼっちちゃんは真っ白にフリーズ。この状況でもメイド服が似合ってるのがちょっとムカつく
――ああ、なんでこんなことに!
秀華祭の一日目、楽しみにしていた後輩たちのクラス訪問。と、く、に! ぼっちちゃんのクラス、メイド喫茶! ぜーったい行くって決めてたもんね! ああ、ラブラブご奉仕でガチ恋営業かけてもらいてぇな……。
「今回の件、メイド喫茶でメイドが逃亡とあらば敵前逃亡も同じ! 学級魔女裁判モノの重罪であることは重々承知しております。しかし! そこを曲げて! どうか! 後藤をクラスで仲間外れにしたり、集団で虐めたりしないでやってください! この通りです!」
あたしは再び頭を下げた。見事な直角最敬礼。誠意ある謝罪は攻撃的なのだ。
「そんなことしませんよ! 人聞きの悪いこと言わないでください!」
「後藤さんもイヤだったら言ってくれたらよかったのに……」
メイドさんたちが今にも泣きそうな顔をしてる。泣きたいのはこっちなのに……。
「あはは……まあ、逃げちゃったものはしょうがないですよ。だったらみんなで罪滅ぼしをするってのはどうでしょうか? 例えば……メイドを手伝うとか?」
喜多ちゃん、何を言い出すんだ?
「いいですね! ぜひお願いします!」
メイドさんたちも乗り気だ。……こりゃ逃げられねぇな。
「あのな、ぼっちちゃん」
「は、はい……」
ここは更衣室。4人でメイド服に着替えている最中。あたしはぼっちちゃんに諭すように言う。
「あたしだって、別にぼっちちゃんがメイドを嫌がるから怒ってるんじゃないんだ。クラスのみんなで決めたことから逃げたから怒ってるんだ。そりゃ多数決とかだろうから、やりたいわけじゃないだろうけどさ」
「……」
「そうよひとりちゃん。大事な時に逃げるのは良くないわ。みんなに迷惑を掛けてしまうもの。……私が言えた話じゃないんだけど」
まあ喜多ちゃんも『ニゲタギター!』だしな。でもいまは十分すぎるほど貢献してくれてる。覆水は盆に返らずだけど、こぼれた水はまた汲めばいいんだから。
「ププっ……星歌スカート短すぎ」
「高身長用のサイズが残ってなかったんだから仕方ないだろ! つーかなんでお前だけ執事服なんだよ!」
「かっこいいからな。私は何を着ても似合う」
「ぬぅぅぅん……。確かにカッコイイからムカつく」
「キャー! リョウ先輩ステキ!」
服そのものは入ったんだからあたしはスレンダーボディなんだよ! さすがにこのスカートは国民的アニメの妹みたいで恥ずかしいけどさ。まあ、全年齢鉄壁理論で見えてない。これもケジメだ。
さて着替え終わったし、オトシマエ付けてくるか!
「では、私はこれでシツレイシマス……」
「おっと、逃げんじゃねぇぞ後藤」
ぼっちちゃんの頭のアレを捕まえつつ捉えるあたし。ゴムが伸びて逃がさない仕組みだ。