もしもJK星歌ちゃんだったら。   作:三十路スキー

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最終回前に一度外伝を挟みます。時間軸はスターリー開店前。星山という謎概念。


次が最後かもしれないから

 近所にある小さな神社。あたしの密かなお気に入りスポット。正月でさえあまり人が来ない。今日は元旦。リョウとふたりで初詣。去年もふたりで来たんだ。

 

「リョウ、何お願いしたんだ?」

「秘密」

「なんだよそれ」

 

 こういう時にいじわる言うんだよな、リョウは。もう慣れたけど。どうせロクな願いじゃないだろうし。

 

「いいじゃん。星歌は?」

「じゃ、あたしも秘密で」

 

 正直言うと神様なんて信じてないんだ。もし神様なんてのがいるなら、あたしたちから母さんを奪ったことが許せない。認めたくない。それでもここに来た理由は、決意表明のためだ。姉貴が言ってた。こういうのは神様にお願いするんじゃなくて、無事生きてこれた感謝と1年の目標を心に誓うものだと。

 あたしが今年やりたいことはズバリ『バンドを組むこと』だ! 高校に入学してからは、勉強とかいろいろ忙しくてロクに音楽活動は出来てなかった。

 それでもドラムの練習だけは怠らずにやってきた。……殆ど雑誌を叩いての練習だけど。バンド自体は中学の部活でもやってたけど、高校では学外で本格的に活動したかった。夢はでっかく、やるからにはプロを目指すんだ! 今年こそは必ず始めてみせるぞ! まずメンバ―探さないと、だけど。

 

「おみくじ引きたい。星歌奢って」

「今日は金あんだろ。どうせ親と親戚からたっぷりお年玉貰ってるだろうし」

「親戚廻ってスマイルふりまいてきた。ちょろいビジネスだったぜ」

「ドヤってんじゃねぇよ! 少しは感謝しとけ」

「いいじゃん。親戚の集まりから抜け出してくるの大変だったし」

「よくねぇよ」

 

 全く。どういう神経してんだ。とりあえずおみくじを引いてみる。1回200円。もちろんリョウも自腹。

 

「お、大吉。星歌は?」

 

 まじか。リョウは昔から顔と運だけはいいよな。ついでにベースのウデも。

 

「吉だってさ。ま、平凡だね」

 

 平々凡々無難な結果。でも、一つだけ見どころがある『待ち人来る。必ず逃がすな』ってところ。

 

 

 

 

 

「で、結局ウチに来るのかよ」

「匿って。今家に戻りたくない」

 

 ここらで一番の名士、山田家の新年会なんてさぞや豪華だろうに。でもリョウはそういうのが苦手なんだよ。やたら溺愛する両親や親戚連中の期待、音楽の神童なんて言われてうんざりしてるってさ。

 

「ウチに来たって雑煮ぐらいしか無いぞ」

「えーおせちは?」

「やらねぇよ、バカ。お前は家でたらふく喰ったろ?」

「じゃあ、お雑煮だけでもいいや」

「じゃあってなんだよ。……しょうがねぇな」

 

 姉貴は最近忙しい。近日中には夢だったライブハウスを春には開店する予定だ。元日も諸々用事があって1日家を空けてるそうだ。おせちは通販で冷凍の物を買った。母さんが生きていたころは手作りしてくれてたっけ。ガキの頃はお手伝いもしてたっけな。まあ、今もガキだけどさ。

 父さんは今年の正月も戻らないらしい。姉貴もふたりきりじゃおせちを作る気にはならんだろうな。でもお雑煮は作っておいてくれた。澄まし汁と焼いた餅が美味いんだ。

 

「それじゃ、行くぞ」

「あ、ヨモギだ。あれ食べてから行こう」

「お前なぁ……」

 

 こんなときまで草食うなよ。

 

 

 

 

 

「へえ、あそこで新しく始めるんだ?」

「おう、来年からな」

 

 あたしんちがあるビルの地下テナント。ここにライブハウス『スターリー』ができる。少し前までは老舗のライブハウスが営業してたらしい。姉貴は幸運にもこの物件、知人を通じて借りている。

 

「お前のバンドも出てくれよ。な?」

「……」

「え? どうしたんだよ、急に黙っちまってさ」

「あのさ、星歌。来月路上ライブやるんだけど、絶対来てほしいんだ」

「なんだよ、あらたまって」

 

 最近忙しくて、リョウのライブは行けてなかったけどさ。

 

「次が最後かもしれないから」

「は? どういうことだよそれ」

 

 リョウの寂しげな顔。いつもトボけたリョウが、あたしに一度も見せたことのない表情。

 

「今のバンド、抜けようと思うんだ」

「なんで? 最近軌道に乗ってきたって言ってたじゃん」

「わからない。でも、このバンドじゃもう私のやりたい音楽はできない」

「……」

 

 リョウの音楽への拘りや頑固さはよく知っている。でも流石に結論を急ぎ過ぎだ。

 

「正直、まだ迷ってる。今度のライブが終わるまでには結論を出すつもり。だから、お願い星歌」

「わかった。……必ず行く」

 

 

 

 

 

 ――路上ライブの後でリョウはバンドを抜けた。相当揉めて、なし崩しにバンドは解散になったらしい。




次回最終回『ヒーローはひとり』 やべえ今年があと1日しかない!
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