もしもJK星歌ちゃんだったら。   作:三十路スキー

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ちゃんと見てるから②

「おーい! ぼっちちゃん、しっかりしろー!」

 

「……ぽやぽやぽやー」

 

 姉貴に頭を軽く撫でられてからぼっちちゃんが真っ赤になって動かなくなった。姉貴は『にひひ♪』と白い歯を出して笑ってる。出たよ、魔性のコンビネーション。

 姉貴の笑顔とスキンシップで大抵の男はやられてしまう。昔からこれでフラれ虫どもの屍を積み上げてきた。これで本人は全く自覚無し。我が姉ながら恐ろしい。……って、ぼっちちゃんは女なのになんでやられてんだよ!

 そうこうしてると、姉貴がパンパン! と手を叩く。

 

「ほらほら! ぼっちちゃん、休んでる暇無いよ! 掃除終わったら接客。星歌ちゃんドリンク教えてあげて。リョウちゃんは受付お願い」

 

「あっ、はい!」

 

「あいよ」

 

「イエッサー」

 

「……星歌ちゃん、リョウちゃん、返事はハイでしょ?」

 

 姉貴が呆れたように訂正を促す。

 

「……はい、店長」

 

「ハイ、ショウチシマシタ」

 

「い、イキってすみません!」

 

「全くもう。って! なんでぼっちちゃんが謝るの!」

 

 

 

「じゃあドリンクやろうかぼっちちゃん」

 

「あ、はい」

 

「ソフトドリンクはこの機械から。トニックウォーターはここで、ビールサーバーはこれ。カクテルは向こうの棚で……」

 

「あ、お、覚えきれない……」

 

「あ~いっぺんに覚えなくても大丈夫……って! ぼっちちゃん!?」

 

「カクテルはー♪ 向こうの棚からぁ♪」

 

 なんか歌いだした!? エアギターで! ぼっちちゃんたまにマジ怖い。でも、歌はうまいな。声がいい。それから、エアギターも地味にすごい。まるで本当にギターを持っているようだ。とにかく止めないと! 仕事にならん!

 

「ぼっちちゃん! やめろって! スタッフさんたちからめっちゃ見られてるし!」

 

「こらー! 仕事しろー!」

 

 スタッフさんとの打ち合わせを終えたらしい姉貴が、遠くから怒ってる。

 

「姉貴ごめん! ぼっちちゃん、な、いい子だからやめて! ……マジやめろ後藤」

 

 ぼっちちゃんを羽交い絞めにして止める。

 

 

 

「これ、一応マニュアルだから。少しずつ覚えればいいよ」

 

「あ、ありがとうございます。わ、私みたいな、ミジンコのために、これを?」

 

「気にすんな。べ、別にお前のために作ったわけじゃねーし。どうせ誰か後輩入れる予定だったから、前から作ってたんだ」

 

 ぼっちちゃんに数枚の紙を手渡す。あたしお手製の業務マニュアルだ。本当はぼっちちゃんのために夜遅くまで頑張って作ったのはナイショだ。図解やかわいいイラストも沢山入れた自信作。おかげで寝不足。今もちょっと眠い。

 

「あ、この子、か、かわいいですね」

 

 ぼっちちゃんがマニュアルの片隅にいるギターをディフォルメしたキャラクターを指差す。

 

「だろ? ギタ男くんっていうんだ。あたしイラストとかちょっと得意なんだよね」

 

 ぼっちちゃんがはにかみながら笑ってる。やっぱぼっちちゃんの笑顔かわいいな。頑張って作った甲斐があった。

 

「とりあえず今日はあたしが注文受けるから、ぼっちちゃんはドリンク作ってお客さんに渡して。あ、酒はあたしがやるよ。アルコール類はもし間違いがあったら大変だし、慣れてからやろうな」

 

「わ、わかりました!」

 

 ドリンクチケットやワンドリンク制の話なんかをしながら営業開始を待つ。ライブハウスは法律上は飲食店だ。詳しいことはあたしも知らん!ドリンクの価格がぼったくりだってのはあたしも思うよ? でもライブハウスってそういうもんなんだよね。とりあえず納得してな?ぼっちちゃん。

 

「さ、営業開始だ。忙しくなるぞ!」

 

「は、はい!」




おまけ

伊地知星歌(16歳 下北沢高校2年)
 身長は山田よりデカイ。原典よりツン控えめ。一見ヤンキーっぽいがガサツなだけ。妙に達観しているけど、内面はいろいろ未熟。コワモテだけど実は乙女。紆余曲折あって、姉に憧れてドラマーを目指す。山田リョウとは幼馴染。
 目つきはキツいがかなりの美形。本人は無自覚。彼氏いない歴=年齢。低めの声と老け顔がコンプレックス。制服じゃないとまず10代に見られることが無い。たまに男に間違えられることも。
 スカートは足がスース―するから苦手。制服以外で履きたくないので私服では下はジーンズが多い。上はTシャツやトレーナー。
 少し前までショートヘアだったが、最近髪を伸ばし始めた。
 実はかわいいもの大好き。新宿のとあるファンシーショップの常連。
 最近はポイントがかなり溜まっていて使い道に迷っている。

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