書いてるから…犯され(以下略)も少しずつ書いてるから…許して…
受付の方に頂いた簡易マップに従い、バイトの間上司となる警備会社のスタッフさんのいる集合場所へと歩く。
数分ほど迷いつつも歩き、集合時間ギリギリになってスタッフさんの元へ辿り着いた。
そこには、わたくしがいま袖を通している制服と同じ物を着た、年若い男性が立っていた。
彼はこちらに気が付くと、小走りで駆け寄って来た。
「待ってたよ、新人ってのは君かい?」
「はい。本日から数日の間ですが、こちらで車両誘導のお仕事をやらせて頂くことになりました。東北イタコと申します、よろしくお願い致しますわ」
ぺこりとお辞儀を行って挨拶する。
わたくしの挨拶がお気に召したのか、彼はにこやかな笑みを浮かべて答えた。
「うん、礼儀正しくていいね!期待してるよ。さて、今日の仕事は基地内の車両誘導だ。見学ツアーに大勢来るからなぁ…忙しくなるぞ!」
彼はそう答えると、ぐっと握りこぶしを作って頑張るぞとアピールをする。
「そう言えば、車両誘導の仕事は初めてなんだっけ?一から十まで丁寧に教えてあげるから、緊張しなくても良いよ!でも、基地には戦車やコンバットフレームもある。気を抜かないようにね。」
コンバットフレーム、確か二足歩行型の人型戦車だと聞いた事がありますわ。
つまり量産型スーパーロボット的なアレですわね。
「さて、今いる所は基地の地下倉庫だ。こんな場所しか借りられなかった。ここで簡単なテストをしよう。この制服、慣れないと動きにくいでしょ?だから問題無く動けるかどうか、簡単なテストをするよ。」
そう言って彼…便宜上先輩と呼ぶ事にしますが、先輩の言う通りテストと言う名目で簡単な運動を行った。
軽く走ってみたり、ジャンプしたりと本当にとても簡単な運動だった。
「うん、合格!問題なく動けてるね、これなら大丈夫だ。それじゃあ仕事にかかろう。案内するよ、着いてきて」
先輩に合格を貰い、歩き出す。
「はぐれないように、基地の地下は広いから迷子になるよ」
そう言って先輩は茶化す様に朗らかに笑い、地下倉庫の出入り口シャッターへ向かう。
そんな時でしたわ
「怪物だ!逃げろ、逃げろー!」
基地内に、おそらく全体放送で隊員の物らしき悲鳴が響く。
「先輩…これは…」
「大丈夫、問題ないよ」
まるでいつもの事の様に振る舞う先輩。
もしかして、パレードの一環なのだろうか?
少し不安になりながらシャッターの前に着くと、急に照明の電気が消えて真っ暗になる。
「ん、なんだ?」
「せ…先輩…?」
「停電かな?まぁ照明はすぐに直るさ」
のんきと言うのか、ポジティブなのか、ともかく先輩は特に気にしていない様だった。
実際先輩の言う通りに停電は直ぐに直り、また照明に明かりが灯った。
「ほら直った、それじゃあ扉を開けるよ」
そう言ってスイッチを操作すると、大きな音を立ててシャッターが上がる。
「こっちだ。車両に気をつけて」
上がったシャッターを潜り、通路へ出る。
通路へ出たわたくし達の目の前を多数の兵士の方々が通り過ぎて行く。そんな中、目の前を黒いフルアーマータイプの軍用パワードスケルトンを着た兵士が横切って行った。
彼らの持つ盾に描かれた模様を見た時、軽い頭痛がした。
思い出されるのは夢での一幕。
戦場を高速で駆け抜ける黒い重装備の兵士。
もしかしたら、目の前の彼らも夢の様に高速で駆け抜けるのだろうか……。
「パワードスケルトンっていうのは車と同じだ。ぶつかると危ないよ」
いつの間にか少し離れていた先輩の言葉にハッとなり慌てて追いかける。
その時
『応答しろ! どうなってるんだ!』
『食われた…! ジョージが食われた!』
基地内放送によってジョージ何某が食われたと聞かされる。
「気にしなくていいよ。軍人ってのはこういう悪ふざけが大好きなんだ」
「えぇ…?」
多数の兵士が完全武装で物々しく走っていると言う明らかに異常事態らしき状態だと言うのにこの人は……能天気なのか…それともわたくしが不安にならないようにわざと茶化してるのか…多分前者ですわね。
そう内心呟きながら後を着いて行くと、前の方から戦車が走って来た。
「戦車に気をつけて。ここは車両用の通路なんだ、轢かれないように」
そう先輩が注意をすると同時に、また停電が起きた。
「またか……電気のトラブルかな?でも、ヘッドライトをつければ大丈夫」
先輩はヘルメットに付けられたヘッドライトを付けるとまた走り出した。
わたくしもヘッドライトを付けて追いかける。
少し走った所で赤いランプが点灯し、サイレンの様な物が鳴り響く。
警報装置だろうか?
先輩はまるで気にもとめず走って行く。
先輩の後を追い掛けていると、今度は二足歩行のカッコいいロボットががしょんがしょんと音を立てて歩いて来る。
「コンバットフレームが来た。気をつけて」
「そういえば、コンバットフレームってどんな物なんですの?」
「確か…対テロリストとの市街戦を想定して開発された搭乗式の強化外骨格で、兵士の全身を包み込むように保護して銃弾や爆弾などの危険から守りつつ、人間同様に活動することができるってロボットらしいよ」
「ほへー…スタイリッシュなデザインがカッコいいですわね…」
「カッコいいよねぇ、でも搭乗するには専用のライセンスが必要だから、猛勉強して資格試験に合格しないとね!」
そう言って先輩はカラカラと笑う。
わたくしはあまり機械に強くないので、猛勉強した所でライセンス取得は実技試験で落ちるでしょうね……
「それにしても、この基地は人間には広すぎるよ。軍事用の車両に合わせて作ってあるらしい、通路なんて幅も高さもすごいのに迷路みたいに入り組んでる。遭難しちゃうよ…っと、ここを曲がろう」
先輩がそう冗談交じりに呟いて道を曲がると、再び基地内放送が響く。
「非常事態発生! 非常事態発生! これは訓練ではない! 繰り返す、これは訓練ではない!」
明らかな異常事態、何かが起きているのは確実のようですわね。
「本当に何かあったのかもしれないな」
………嘘でしょ?この期に及んでその反応ですの…?
能天気にも程がありますわ……
そうやってわたくしが呆れていると、目的地に着いたらしくこちらに振り返って話しかけてくる。
「そう緊張しなくいいよ、この扉の奥が……」
先輩がシャッターの開閉スイッチを操作する。
シャッターが、上へと上がる。
そして
「ええっ!?」
シャッターの奥から、夢で嫌と言う程見た…あの怪物が先輩に喰らいついた。
「う、うわああああああ!助けてえええ!ぐあああああ!」
目の前で先輩が喰われ、その血がわたくしの顔にぴちゃりと散った。
理解が追い付かず、呆然と立ち尽くす。
すると通路の奥にあるシャッターが開き、そこから軍人が数名出て来るのが見えた。
「撃て! 撃て!」
「なんてデカさだ!」
「死ね! 化け物め!」
その手に持った銃を撃ち、怪物を仕留める。
先輩の遺体が、わたくしの目の前にどちゃりと音を立てて落ちる。
…その身体はお腹から半分に食いちぎられて内臓が露出しており、辛うじて繋がっている状態だった。
余りにも惨い先輩の遺体を見て、吐き気が込み上げる。
「こいつらは一体なんだ!」
「こんな生き物は見たことがねえ!」
「恐竜の生き残りって訳じゃないよな」
部屋の中に残っていた怪物も掃討した軍人さん達が話し始める。
「危ないところだったな」
「誰だこいつ?」
「大丈夫か?お前は民間人だな。着いて来い、武器をやる」
リーダーらしき軍人さんに半ば強引に話を進められ、死にたくないから後ろをついて行く事にする。
怪物のいない通路を少し歩くと、広い空間に出た。
いくつかの射撃訓練用らしき的があるのを見るに射撃訓練場なのかもしれない。
先程のリーダーらしき軍人さんか銃を渡してくる。
「非常事態だ、基地に怪物が侵入した怪物の数は不明、正体も不明。どうやって地下に入ってきたのかも分からない。地上とは連絡が取れず、俺たちは孤立している」
孤立、その言葉を聞いて血の気が引いて行く。
助けは来ないのか、みんな死んでしまうのか、恐怖で体が震える。
「救援部隊が到着するまで、自力で身を守るしかない。お前にも、武器を渡しておく。民間人を守るのが軍人の務め。守ってやる……と言いたいが、敵の正体が分からない以上、約束は出来ない。いざという時は、この武器で自分の身を守れ」
そう言って銃を一丁渡された。
彼らが持っているのと同じ、アサルトライフルと呼ばれるタイプの銃だった。
「使い方はこれから教える」
そうしてリーダーさんは優しく銃の撃ち方、リロードの仕方、スムーズな武器の持ち替え方、銃を持ったままの状態での走り方など様々な事を教えてくれた。
……夢の内容を覚えていたが為に、思っていたよりスムーズに出来てしまい、リーダーさんから筋が良いとお褒めの言葉を頂いた。
「少しは戦えるようになったな。よし、ついて来い」
「警報システムが作動したせいで隔壁が下りています。予定のルートは通れそうもありません」
「そうか、俺なら隔壁のロックを解除できる。全員でここから脱出するぞ。俺が先頭を進む、周囲を警戒しながらついて来い。民間人! 怪物と遭遇するかもしれない。俺達が守ってやれると言う保証は無い、いざとなれば自分の身は自分で守れ。いいな!」
「はいっ!」
震える体に喝を入れ、元気よく返事を返す。
こうしてわたくしは、生きるために銃を手に取った。
そしてこれが……長い長い、地獄の様な旅路の始まりだったのですわ。