そのとき神秘な事が起こった! 作:ゴルゴムの手先
『キングストーン』
別名「太陽の石」「月の石」
遥か古の暗黒時代、創世王ゴルゴムが作り出したと言い伝えられる伝説の石である。
太陽の石は太陽の光を浴びて真っ赤に燃える。
月の石は月の光を浴びて蒼く輝く。
その2つの石に選ばれし者同士が戦い、勝者が全ての力を得るという。
キングストーンに選ばれるということは、即ち個人で世界を相手取るほどの力を持つということ。
それらがぶつかり合った時に発生する二次被害は想像に難くない。
「そして、この石こそがキングストーンの片割れ『月の石』です」
▶【つまり危険物では?】
【触っていい?】
「はい、危険なものです。世界を壊しかねないほどに」
独立連邦捜査部 通称『シャーレ』
学園都市キヴォトスの中でも異端とも言える場所、その主である『先生』と呼ばれる成人男性。
彼は急な来訪者と、その生徒の持ち込んだものに頭を捻っていた。
応接間のテーブルに置かれていたのは、小さな小包の中にあった蒼い石。
かの夜、女子生徒『月影アキヒ』が必死に持ち込んだものである。
「この石は、私の一族がずっと守ってきたものです」
このキングストーンが悪人の手に渡ればどうなるか、それは想像に難くない。
ゆえに秘匿されたものだが、その守りに問題が発生したためシャーレに持ち込んだのだ。
「この月の石の存在を知り、奪おうとする組織があります」
【……!】
▶︎【ゲマトリア?】
「げま…?い、いえ。キヴォトスの裏社会に蔓延る商会"ショッカー"……奴らの仕業です」
『ショッカー』
キヴォトスの裏社会に存在する悪の組織。
主にブラックマーケットへの品の流出を財源としている。
金のためなら何でもやる危険な組織だ。
彼らが何らかの方法でキングストーンのありかを突き止めたのだという。
月影家はショッカーからキングストーンを守り切る事が出来ないと判断し、彼女を派遣してここに届けたのだ。
【大丈夫?】
▶︎【ゲマトリアでは?】
「違います。彼らは追っ手を差し向けて来ましたが、何とか……」
アキヒが不安そうな顔をする。きっと怖い目にあったのだろう。
▶【これを預かろう】
【やっぱゲマトリアかも…】
「ありがとうございます!」
アキヒは机に頭を打ちかねない勢いで頭を下げた。
安堵のあまり半泣きになっていたのは、見なかった事にした。
ここでの先生の役割は、月のキングストーンを保護できる機関を紹介することだ。
シャーレは戦力こそ十分あるものの、組織の性質上、不特定多数の人間の出入りが予想される。
先生自身も自覚がある程度にはうっかりなため、防犯上の問題がある。いつまでも此処に置くわけにはいかない。
そこまで説明した後、月影アキヒの表情が曇っている事に気付いた。
▶︎【何か気掛かりなことが?】
【お腹すいたの?】
「あ、えっと……あの子、大丈夫かなって」
アキヒは話す。ここに駆け込む前に起きたことを。
曰く、追い詰められた時に突然現れて、ショッカーの構成員を瞬く間に撃退した黒衣の少女がいたのだという。
「お礼を言う前に姿を消してしまって…」
▶︎【その子の名前はわかる?】
【黒衣ならゲマトリアでは?】
「えっと、確か名前は……ブラックRXです」
▶︎【……なんて?】
「ブラックRXです」
聞き間違いではなかった。失礼だが個性的な名前だと思った。
偽名だろう。是非とも語源を聞いてみたいものだ。
【きっと大丈夫】
▶︎【会えたらお礼を言わないとね】
「はい!……あ、その」
アキヒが言いづらそうに切り出してくる。
このタイプの生徒は、急かして話させるのは良くない。
ちゃんと自分の言葉で語れるように、じっくり待ってあげるのが良い。
先生は静かに微笑んで待つ。
「キングストーンを守る間、私をシャーレに所属させてください!」
アキヒはガバッと頭を下げた。
【はい】
▶︎【いいよ】
【よろこんで】
「即答ですか!?」
ガビーンと効果音付きでアキヒは驚いた。
彼女にとってはよほど覚悟が必要な提案だったのだろう。
この承諾には勿論ちゃんとした理由がある。
ショッカーが月影アキヒを襲った以上、キングストーンの在処は特定されている。
またアキヒが狙われる可能性が高い。これは彼女を保護する意味もあるのだ。
決して『イベントのキャラは確保しておきたい』とか、そういったやましい気持ちは一切ない。
『先生!新しい生徒さんが来ましたよ!承認お願いします!』
バシーン!!
アロナがタブレット内で、いつものように通知を叩きつけた。
アロナは今日も元気いっぱいである。先生は嬉しい。
先生はいつもの祈祷癖で「☆☆☆」と一筆書きした。
全裸の儀式は自重した。
『月影 アキヒ』
レア:☆
学校:百鬼夜行連合学院
所属:茶道部
役割:SPECIAL
クラス:サポーター
属性:神秘/軽装備
「月影アキヒです。だ、大丈夫です!やれます!」
先生はタブレットに表示されたデータに目を通して思案する。
もう一つ、先生には懸念事項があったのだ。
▶︎【実は今、みんな忙しくて居ないんだよね】
「え?」
みんな居ない。ミンナイナイ。
シャーレは様々な組織から強力な生徒が集まることで有名であり、ある意味で最大級の戦力を有していると言える。
だけどミンナイナイ。つまり今のシャーレの戦力は、後方支援のアキヒのみ。
無防備同然である。
▶︎【ま、すぐにまた集まる予定だし、不安がらなくていいよ】
「で、ですよね!」
▶︎【こんなベストタイミングに襲撃されるはずは…】
ドカアーーーン!!
▶︎【………】
「……先生、フラグって知ってますか?」
▶︎【やっべ……】
【おのれゲマトリア帝国!】
「クッ…!」
一方、ブラックRXは苦戦を強いられていた。
彼女が誘い込まれたのは、太陽光が一切差し込まない密室である。
そこに無数のショッカー構成員が囲み、持久戦を仕掛けているのだ!
「RX、貴様は強い。だが三日三晩、無補給では戦えまい!」
攻撃の届かない安全な場所で、ショッカーの女幹部が堂々と断言した。
「やるなクライシス…!」
人違いである。
「RX敗れたり!フゥーハハハハ!!」
太陽光がなければキングストーンの力を十全には発揮できない!
どうするRX!
絶体絶命だぞRX!
はたしてRXは絶体絶命のピンチを乗り越えられるのか!
To Be Continue...
予告
「太陽光を封じたのに!」
「太陽の光なくとも、キングストーンある限り私は蘇る!」
「!?」
「何度でも!(誇張なし)」
次回「RX復活!そのとき神秘な事が起こった!」
続きますん