そのとき神秘な事が起こった! 作:ゴルゴムの手先
悪の組織ショッカーがシャーレに襲撃を仕掛けてきた。
それに気付いた先生の初動は速かった。
▶【アロナ、監視カメラの映像を出して】
『はい先生!』
▶【アキヒ、キングストーンを持ってこっちに】
「は、はい!」
先生は仮眠室に入り、ベッドの下の隠し収納から『早瀬ユウカ(体操着)の抱き枕(非売品)』を取り出して布を巻く。
「あわわわ……せ、先生、それって……」
布を巻いて容量をかさ増ししたソレを布団の下に潜り込ませ、遠目から見ると眠っているように仕掛ける。
他にはロッカーからわざと服の切れ端をはみ出させたり。
カーペットが無駄にめくれていたり。
部屋中のところどころに「隠れているんじゃないか」と思わせる物を仕掛けていく。
そんなこんなしていれば、アロナの監視カメラの表示とアキヒの逃走準備が済んだようだ。
「先生、どうするんですか?」
▶【逃げるよ】
「で、ですよね!」
電気を消して、扉から出てカギをかける。
敢えて中で息をひそめていると感じるように。
外に出た先生は、アキヒの手を引きながら廊下を静かに走る。
監視カメラの映像から、どうやら相手は真正面の玄関から無理やり突入していたようだ。
半面、裏口には誰も映っていない。
「こ、これなら裏口から……」
▶【いや、罠だ】
「え?」
裏口は別に隠されている場所ではない。
にもかかわらず、真正面からド直球にド派手に突撃して、裏口を抑えてないなど考えられない。
恐らくは裏口からのんきに出てきたところをとらえるつもりだろう。
▶【相手は裏口のカメラの死角に張っている】
「そんな……!?」
窓から出てもダメだろう。そんな簡単な脱出路は想定されているとしか思えない。
ゆえに"さらなる裏口"を使うことにした。
『カフェテリア』
生徒達が頻繁に訪れるそこには、様々な物がわんさか置かれていた。
統一感のないその家具の中にあるひとつのカーペットをめくり、床タイルをひとつ外した。
▶【ここを潜って】
「は、はい!」
ここはシャーレが襲撃された時のために作られた脱出路である。
この場所を知るのは、この脱出路を作った生徒達と、先生のみである。
めくったカーペットとタイルをもとに戻して中に入ると、暗い通路がまっすぐに続いている。
「ひっ……」
▶【暗いのは苦手?】
「う、大丈夫です……」
どうやら夜に襲撃にあったことがトラウマになっているようだ。
安心させるようにぎゅっと手を握る。
▶【大丈夫。ここを出て助けを呼ぼう】
「せ、先生……はい!」
しばらく歩いた先にあった扉を開き、離れた裏路地に出た。
「残念でした♪ゲームオーバーです♡」
裏路地に女性の声が響いた。
ガチャリ
周囲をショッカーの戦闘員たちが囲んでいた。
戦闘員は銃器を容赦なく先生とアキヒに向けている。
「え……?」
▶【……やられた】
先生はようやく事態に気付いて空を仰ぐ。
ショッカーの戦闘員の奥から身長の高い女性が笑っているのが見えた。
▶【全部、罠か】
「正解です。はじめましてシャーレの先生?」
クスクスと女性が笑う。
明らかに周囲の戦闘員とオーラが違う。ショッカーの幹部といったところだろう。
「月影アキヒがシャーレに逃げ込むのは想定内です」
クスクスとショッカーの女幹部が笑いながら種明かしを始める。
「シャーレなら隠し脱出路のひとつやふたつあるでしょう?」
「流石に我々も特定には至りませんでした」
「なので"想定される場所"を全て張り込みました♪」
何となしに言われる言葉だが、それは相応な戦力と人員を必要とする人海戦術だ。
ショッカーが相当に大規模な組織であることと、この作戦にこれだけのリソースを注ぐほどに力を入れていることがわかった。
「さあ渡しなさい、キングストーンを」
「お断りします!」
即答したのは月影アキヒだ。
彼女は後方支援にもかかわらず、果敢に先生をかばうように立った。
「あら強情ですのね」
ショッカーの女幹部は淡白な反応と共にほほえみを返す。
「つまりませんわ、
「!?」
家族。
その言葉を受けて、月影アキヒは真っ青になるほど血の気が引いた。
「……まさか」
「連れてきなさい」
ショッカーの戦闘員たちに引っ張り出されたのは、先生には見覚えのない女子生徒だった。
その姿を見た月影アキヒが悲鳴のように叫んだ。
「お姉ちゃんっ!!」
その女子生徒は気を失っているのか、頭上のヘイローが消えている。
全身は銃創と打撲痕まみれで痛々しい。過剰に痛みつけられている形跡がある。
首に巻き付けられた鎖は傍に立つ戦闘員が握っていた。
「そ、そんな……」
「事態はご理解いただけましたか?」
ショッカーの女幹部はわざと丁寧な口調で語り掛ける。
「さあ、もう一度言いますよ?キングストーンを渡しなさい」
冷たい女の声が響く。
ここでキングストーンを渡せば、世界が崩壊しかねない大事件に発展するだろう。
渡さなければ姉の命はない。
そもそも渡したところで、相手が約束を守るとは思えない。
だが渡さずに切り抜ける方法はない。
「(どうしよう、どうしようどうしようどうしよう)」
アキヒの頭の中がぐるぐると渦巻く。
「(私のせいで世界が危険にさらされる)」
「(私のせいで先生が危険な目にあっている)」
「(私のせいでお姉ちゃんが死ぬかもしれない)」
答えが出ない思考がぐるぐると渦巻く。
▶【断る】
そんなとき、一足先に返事をしたのは先生だった。
「あら……」
その返答に対してショッカーの女幹部は意外そうに反応を返す。
「あなた自分の立場を分かっていらっしゃる?」
▶【痛いほどわかってる】
【脚を舐めるから命だけは】
「せっかく譲歩して差し上げましたのに。こちらは交渉すらせず今すぐ撃ち殺しても……」
▶【殺したくないんでしょ】
「……!!」
先生の返事にショッカーの女幹部は言葉を詰まらせる。
先生は答え合わせをするように、自分の推測を話す。
▶【君たちの目的はキングストーンだけではない】
▶【何らかの理由でアキヒの生け捕りを必要としている】
▶【だからこんな回りくどいやり方をとっている】
▶【君たちは今、アキヒを撃ち殺すことが出来ない】
「……ふぅん。おおむね正解ですわ」
ショッカーの女幹部は面白くなさそうに口をとがらせる。
実際、先生の推測は当たりであった。
『キングストーン』
それは石に選ばれし者に力を与える。
石に選ばれなければただの綺麗な石ころなのである。
ショッカー達は現物を持っておらず、石に選ばれる条件を研究しきれていない。
恐らくは石を代々守る『月影家』ならば選ばれやすいかもしれない、という推測しか立て切れていないのだ。
月影アキヒを含めた月影家を全員捕えれば、あとは洗脳なり何なりすればいい。
だが殺してしまえば、もう二度とチャンスが訪れない可能性もある。
そういった事情から、ショッカーは月影家をなるべく生け捕りにしたい理由があった。
「シャーレの先生……あなた思っていたより面倒ですわね」
▶【そりゃどうも】
【ご褒美に見逃してほしいな】
「だから今ここで消すことにします」
ショッカーの女幹部が胸元からハンドガンを取り出して先生の頭部に照準する。
先生も生け捕りにして月影アキヒへの脅迫材料にしようとしたが、コレは残せば危険だと判断した。
「ま、待ってください!」
その一連のやり取りを聞いていたアキヒが再び前に出る。
「わ、私が行きます。だから先生は……」
▶【ダメだ!】
「先生は黙ってください!!」
悲痛な声だった。先生は言葉を詰まらせる。
「ま、まだ出会ったばかりですけれど、先生のことは何となくわかりました」
アキヒは半泣きになりながらも立ちふさがる。
「とても素敵な人です。命の危険を前にしても、私たち生徒のことばかり心配して……」
けれど、流石に巻き込みすぎた。
今の一連の話から、先生は人質として生かされる可能性が高いと判断した。
お姉ちゃんは無理かもしれないけど、先生だけはせめて解放されてほしかった。
「貴方達のもとに下ります。だから、どうか先生は」
「……ふぅん」
ショッカーの女幹部はあくどい笑みを浮かべた。
照準していたハンドガンを降ろす。だが周りを囲む傭兵たちは相変わらず銃を向けている。
「いいでしょう、その要求を飲みます」
「……!!」
「キングストーンを差し出しなさい」
女幹部の威圧的な命令を受けて、アキヒは懐に隠していたキングストーンを取り出した。
空から降り注ぐ月光を受けて、蒼い王者の石は光り輝いていた。
「おぉ……!」
それを見て女幹部が恍惚な笑みを浮かべる。
選ばれし者の選定が終わっていないにも関わらず、多大な力を感じる。
これが我々ショッカーのもとにあれば、もはや世界を手にするのもたやすいだろう。
「その女を連れてきなさい!」
半ば興奮したまま配下に指示を出す。
囲んでいた戦闘員数名がアキヒにゆっくりと近づいてくる。
ガシャリ
ガシャリ
ガシャリ
地面を叩く金属の音が響く。
「ごめんなさい、先生……」
▶【ダメだアキヒ!】
「短い間でしたが、ありがとうございます」
ガシャリ
ガシャリ
ガシャリ
死神の軍靴の音が響く。
「どうか私のことは忘れて」
▶【………!】
ガシャリ
ガシャリ
バシャッ
「お元気で……」
月影アキヒは精一杯の微笑みを浮かべて先生へ振り向いた。
流れ落ちる涙が月の光に照らされていた。
「さようなら」
その場で、その
▶【………?】
ひとりはシャーレの先生。
違和感に気付いたが、原因を知らないため理由が分からなかった。
「………ん?」
もうひとりはショッカーの女幹部。
その違和感に気付き、首をかしげる。
「水たまり?何故……」
▶【ここ数日、雨は降っていないはず】
「………まさか!?」
女幹部は原因となり得るものについて知っていた。
ゆえに考えるよりも先に指示を出した。
「下がれ!あの水たまりを撃て!!」
その命令とほぼ同時に、水たまりの水が突如として浮き上がった!
「バイオアタック!!」
浮き上がった水が迫っていた戦闘員に体当たりして、一瞬にしてなぎ倒す!
「な、何だ!」
「敵襲!敵襲!!」
周囲の戦闘員たちが錯乱したように水へ銃を放つ。
だがそれは水を散らすだけですり抜けていった。
「弾が全部ヤツの身体をすり抜けていくぞ!?」
その水たまりは、月影アキヒの姉を拘束していた戦闘員にぶつかって吹き飛ばした!
「ば、馬鹿な!?」
近くにいた女幹部はその水たまりに発砲する。
それもまたすり抜けて、地面に穴を開けるだけに終わった。
月影アキヒの姉の傍で、水たまりが形を変えていく。
やがてそれは青い髪、青い改造制服の女子生徒の姿となった。
「とうっ!」
その青い女子生徒は月影アキヒの姉を抱っこすると、すさまじいジャンプ力で跳び上がって戦闘員たちの団体を飛び越え、先生のすぐ傍まで降り立った。
「貴様は……!?」
謎の女子生徒は先生の傍で月影アキヒの姉を降ろすと、その姿の色が再び変わっていく。
黒く染まったひとつ結びの髪
丈が長い黒の改造制服
風に吹かれるのは緑色のマフラー
白い肌と真っ赤な瞳
頭上には太陽のマークのヘイロー
少女は右腕を正面に、左腕を腰だめに構える。
「私は太陽の子」
右正面で腕をクロスさせ、一度左下に振り下ろして右上に掲げる。
「覆面ライダーブラック!」
掲げた右腕を再び振り下ろし、左腕で拳を構える。
「
左の拳をグッと握り、堂々と宣言した。
1カメ
2カメ
3カメ
「RXだと!何故生きている!?」
その正体に最も驚愕したのは、ショッカーの女幹部であった。
「貴様は太陽光の届かぬ場所に封じたはず!」
女幹部は狼狽えて指を指して問いかける。
「その上で本隊で包囲して殺した!あの状況からどうやって…」
「キ゛ン゛ク゛ス゛ト゛ーン゛だ!」
【キングストーン!?】
▶︎【キ゛ン゛ク゛ス゛ト゛ーン゛!?】
キングストーンはこの騒動の渦中とも言えるものだ。
月の石はシャーレのもとにある。ということは…
「たとえ太陽の光がなくとも、キングストーンがある限り私は蘇る!」
「!?」
「何度でも!!(誇張なし)」
少女の胸元で、月のキングストーンにそっくりな赤い宝石のネックレスが揺れた。
かの少女こそ太陽のキングストーンに選ばれし者なのだ!
それにしても無限リザレクションは流石にクソゲーである。
「クッ…!」
「貴様らの目的は分かっている。好きにはさせんぞ」
少女は腕を組んだまま、ショッカー達を睨みつけた。
「クライシス帝国!」
「何の話?」
人違いである。
▶︎【ゲマトリアじゃないの?】
先生も人違いである。
「貴方が噂の先生か」
ブラックRXはショッカーと対峙したまま後ろに問いかける。
▶︎【はじめまして、先生です】
「はじめまして。先生、今の状況は?」
▶︎【正直、かなり厳しい】
【脚を舐めて許しを請うところだった】
「ならば先生、私を使え」
先生に背を向けたままブラックRXと名乗った少女は提案する。
【いいのか?】
▶︎【力を貸してくれるのか、RX!】
「ああ。私がいれば百人力、貴方がいれば千人力だ」
先生の持つ端末に新たな情報が加わる。
『倉田ミナコ』STRIKER、タンク、爆発/軽装備
少女の詳細なデータが掲載される。
それはブラックRXと名乗った少女が先生の味方として立った証明だ。
【わかった!力を貸してくれ!】
▶︎【共にゲマトリア皇帝を打倒しよう!】
「げま…?無論だ、先生!私達でクライシス帝国を打倒するぞ!」
人違いである。
「光あるところに私はある!」
「人の心ある限り私は戦う!」
「何度でも!!」
デデデデデデ♪
\カン/
デデデデデデ♪
\カンカン/
デデデデデデ♪
\カン/
W A K E U P
【戦闘開始!】
【ブラックRXと共に悪の組織ショッカーを打倒せよ!】
SPECIAL:
月影アキヒ「私に出来ることを……!」
STRIKER:
倉田ミナコ「おのれクライシス帝国!ゆ゛る゛さ゛ん゛」
続きは50年後