風は崩壊世界を救済す   作:レイラレイラ

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崩壊3rdにドハマリしたので投稿です


プロローグ

 少女は暗闇に満たされた空間でふと思う。

 

 もしも、唐突に世界が終わりを告げるとしたら自分は抗うことができるのだろうかと。

 

 答えは考えるまでもなく、否だと少女は即答する。

 

 少女は勉学に秀でているわけではないし、運動能力も平均の域を出たことはない。

 

 容姿も至って平凡で、バレンタインなどは友チョコを送り合うだけのちょっとしたイベント程度にしか考えていなかったくらいだ。

 

 そんな日常をぼんやりと送っていただけの少女だったが、死に至る直前までプレイしていたゲームがそんな疑問を彼女に抱かせた。

 

 その名は『崩壊3rd』。

 

 少女がこよなく愛し、世界で一番感動するゲームであると断言するアクションRPGである。

 

 喫茶店の屋外ラウンジで放課後のティータイムと洒落込んでいた少女は、頼んでいたパンケーキが来るまで崩壊3rdを楽しんでいる。

 

 崩壊という未知なる現象と戦い、心を削りながらも輝き続ける人々の生き様に少女は今日も見惚れており、トラックが衝突する直前まで自分に死が迫っていることに気づくことはなかった。

 

 トラック一つの接近にすら気づかず、あっけなく命を落とすような脆弱な人間が崩壊と戦うなどと烏滸がましいにも程がある。

 

 所詮、脆弱な一般人の自分は逃げ惑うことしかできない。

 

 いや、もしかしたら逃げるという選択肢すら与えられずに死ぬことすらも十分にありえる。

 

(それは…………嫌だな…………)

 

 抗う力があるかどうかは重要ではない、抗おうとする意思が、諦めないという意思を少女は確かに彼女たちから学んだのだ。

 

 死した自分に何ができるのか。

 

 何も映さない暗闇へと手を伸ばすことはできる。

 

 何処に向かっているのかも定かではないまま、前に進むことはできる。

 

 歩くという感覚すら失いながらも、少女は何かに逆らうように歩き続ける。

 

 一歩、また一歩と確かめるように。

 

 目的地すらもなく、ただ諦めたくないという意思に少女は従う。

 

 そうしてどれ程の時が経っただろうか。

 

 十分程度か、はたまた一時間か。もしかしたら一日経っているのかもしれない。

 

 やがて少女の心に影が差し込み始める。

 

 少女に冷たい声色で話しかけるものがいた。

 

 姿こそはっきりしないが、この声は自分のものだと少女は感じとる。

 

『もう止まったら?』

 

 嫌だ。

 

『あなたがそのまま歩いても、何も変わらないのに』

 

 だとしても、嫌だ。

 

『あなたは彼女たちにはなれないよ』

 

 そんなことは「私」が一番知ってるよ。

 

『なら、どうして進むの?』

 

 怖いから。

 

『何が怖いの?』

 

 このまま立ち止まることが。

 

『もう死んでるあなたには何もできないのに』

 

 少女の足が重りでも付けられたように重くなり、一つ歩を進めることが難しくなる。

 

 他ならぬ自分に告げられた死に、心が軋む音がする。

 

 どれだけ自分の中で死を否定しようとも、諦めるつもりが無かろうと、それは覆せない事実として少女の存在にのしかかってくる。

 

 嫌だ。

 

 嫌だ!

 

 嫌だ!!

 

「このまま何もできないまま死ぬなんて、絶対に嫌だ!!」

 

 少女には夢がなかった。

 

 幼少期の子供が抱くような正義の味方になりたい、お姫様になりたいという夢もなく。

 

 公務員になって安定した生活を送るといった堅実的な人生設計すらも持たない。

 

 だからこそ、少女は何もできないと諦めようとする自分を拒絶し再び進み始める。

 

 その強い意思が、暗闇の世界に一つの変化を与えた。

 

 少女の頬を風がそっと撫でる。

 

 その風が自分を呼んでいるような気がして、風の吹いた方向へと視線を向ける。

 

 何も映さない暗闇の世界に光が差した。

 

 エメラルドグリーンに輝く宝石のような『ナニカ』がふわふわと浮かんでいる。

 

 少女はその『ナニカ』をよく知っていた。

 

 渇望の嵐(デザイアジェム)と呼ばれる律者コア。

 

 律者を生み出し、人類種の天敵とするもの。

 

 しかし、少女は迷わなかった。

 

 自分の中の生きたいという()()に身を委ね、渇望の嵐へと手を伸ばす。

 

 コアを掴んだと同時に、少女の全身を引き裂かんばかりの嵐が発生する。

 

「ぐっ…………ぐぁああああああああああああああっ!!」

 

 少女の身体に亀裂が走る。

 

 腕から肩に、やがて胴体にまで亀裂は広がっていく。

 

 内側から弾け飛びそうな痛みが彼女を襲うが、少女は必死に自分を保つべく歯を食い縛った。

 

 意識が遠退きそうになりながらも、律者コアを決して離すことだけはしない。

 

「そこまで、あなたは生きたいって願うんだね」

 

 少女の声ではない、だが優しい声音が耳朶を打つ。

 

 律者コアの先に一人の像が浮かび上がる。

 

「ウェン…………ディ…………」

 

 緑混じりの黒髪を肩の辺りで切り揃えた少女が姿を見せる。

 

 第四律者『風の律者』となり、一時はキアナたちに保護されるもデザイアジェムを摘出され死亡した戦乙女。

 

 デザイアジェムを掴んだまま動けずにいる少女のもとに、ウェンディはゆっくりと歩み寄る。

 

 そしてウェンディは少女の頬に触れると優しく微笑む。

 

「きっと大変な道のりになる。普通に生きることはきっとできないけれど、あなたなら大丈夫だって私は思うんだ。だから、完璧じゃない物語かもしれないけど、強く生きてね」

 

 その言葉を最後に、少女の意識は途絶えた。

 

 ウェンディの満面の笑みを心に強く刻んで。

 

 

 

 




■■■:ウェンディに憑依することになった少女。無双とはいかないまでも活躍はさせたい。特にキアナと姫子少佐に憧れる。
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