魔法少女リリカルなのはViVid キャリバーオブデザイア 作:エステバリス
不良主人公が人間的によくできたヒロインによくやられるパターン。
連行。
別にこういうタイトルだからって右と左が究極のバランスで魅せるわけじゃないですよ?
「出てけ」
「今日こそは帰らない!コウガミくんにはちゃんと出席してもらいます!」
「ふざけんな高町!なにが悲しくて暴力沙汰起こして悪い意味で有名になった俺が学校の優等生と一緒に学校行かにゃならん!?ラブコメか!?」
「ラブコメなわけないでしょ!とにかく、今日だけでいいから来てよ……!」
「今日だけだろうが行くもんか……!」
一軒家のドアを引っ張り合う小学生二人の姿は正直微笑ましいものだった。ヴィヴィオは格闘技で鍛えた腕力にモノを言わせてエイジとの押し合いに若干勝っている。同時に不良のエイジは同い年の女子に力負けしてるのに悲しくなってくる。
「んぐぐぐぐぐぅ……よいしょぉおっ!」
「ぬわーーっっ!!」
そしてヴィヴィオはついにエイジの家に踏み込んだ。
「さあ!学校行くよ!」
「だから……はぁっ、もういい。好きにしろよ」
つまり始めから強攻策をしていればエイジを連れ出せたということである。エイジは鞄にバックルとアンク、それと適当に教科書を詰め込んでヴィヴィオに連れて行かれた。
◆◇◆
「コウガミくんは私とおんなじクラスだから、着いて来て!」
「あーはいはい、わかったよ……」
ヴィヴィオに強引に引っ張られながらエイジは学園の廊下を歩く。エイジの予想通り、ヴィヴィオがエイジを引っ張っている姿は嫌でも周りに注目されていた。
「えー、アイツコウガミじゃん」「なんでヴィヴィオちゃんといるの?」「近寄りたくねー」
なんていう話し声が隠れもせずに飛び交っていたのでエイジは軽く一睨みする。すると面白いように目を逸らす。
「……聖王教会の魔法学校っても、やっぱ所詮坊っちゃん嬢様学校だな。睨むだけでこの反応は逆に面白いな」
ヴィヴィオに引っ張られながらそう呟くエイジは知らない大人から見ると、可愛い近所の子や孫を見ているような気分にかるかもしれない感じだった。
◆◇◆
ごきげんよう。それがSt.ヒルデ魔法学院の挨拶である。
エイジにとっては幼い頃からずっと聞きなれたうざったい言葉でもある。かなりアバウトな祖父と父親と、本人の性格から忘れられがちなのだが、仮にもエイジは大企業の跡取りなのだ。当然実家には住み込みで働く人もいる(今は企業の跡取りとして色々な責任を知るためにエイジは一人暮らしをしている)し、その人達はエイジに対して敬語しか使わない。
まあ、流石に10歳の少年が一人暮らしというのはかなり危ないので、定期的に会長代理の部下が来るのだが、その部下がどうも面白い。
彼なりの配慮なのだろうが、エイジにそう無闇と学校に行けとは言わず、ヤミー退治にも協力してくれる……のだが、何故かよくバズーカをエイジに誤射する。
オーズの鎧を装着していたからいいものの、生身のエイジにやらかしていたら確実にヤバいことになっている。
結構人付き合いも堅いところがないからいい方で、マ◯カーを一緒にプレイした時はすごい攻略本に忠実なドラテクだった。
どうやってるのかと聞いても「俺はマニュアルが大好きなんだ」とドヤ顔ではぐらかされるのだが、どう見てもマニュアル云々で済まされない凄さだった。
まあ、そんな路線からズレまくった余談は放っておいて、現在エイジは教室についた途端、学園長室に呼び出されていた。
「エイジ・コウガミくん。なぜ貴方がここに呼ばれたのかわかってますか?」
「知りません」
エイジは学園長の前に立たされてもなお態度は改めない。
「……三日間の無断欠席。無断欠席してる三日間に真夜中に貴方の姿を見たという生徒がいます」
ああ、とエイジは手をぽんと叩く。確か昨日の夜中もヤミーが出て来て退治していた。うっかり帰りに変身も変身魔法も解いていたから、その時に見られたのか。と納得する。
「どういうことか、説明してもらえますか?」
「企業のほうの用事っすよ。あんまり企業に頼ってるとダメ人間になるといけないからと思って昨日は一人で歩いて帰ってました」
ぶっちゃけ企業の用事以外は嘘もいいとこである。コウガミファウンデーションの最高傑作と言われたあの剣、メダジャリバーを振り回してファウンデーション製のバイクを乗り回し、停学処分を受けて以降はダメ人間街道真っ盛り。
これを嘘と言わずしてなんと言うか。
「……まあ、貴方が企業の方で色々忙しいことは貴方のお爺様がこの学校に資金を投資してくださった縁から色々知ってはいるつもりです。
今度からは休む時はきちんと連絡して理由も話してください。コウガミくんが話せない時は、企業の人に連絡してもらえれば結構ですので」
「りょーかいっす」
因みにこの学園長が言っている色々忙しいはオーズのことではなく、企業の跡取りのことである。
「じゃ、失礼しました」
◆◇◆
「どうしてこうなった」
学校の帰り、さっさと家に帰って寝ようと思っていたエイジはそれよりも早くヴィヴィオとその友達、コロナとリオの三人に囲まれて連行された。
よく連行される男だ。ここ三日で自分の意思と関係なく場所移動するのが合計三回。よもやヒロイン属性でもあるのか。
そして連行された先には───
「……げっ、」
「偶然も行き過ぎだな……」
鞄の中のアンクがそう言う。ヴィヴィオに連れて来られた先には、ノーヴェとスバル、そしてティアナもいた。
「……おー。ヴィヴィオに知り合いに一人引き籠りがいるから引っ張り出して来るって言われてたけど……エイジだったのね」
「勝手に連れ回されていい迷惑っすよ。しかもアンタらに会わされて……なにを言えばいいのやら、世界は狭いとか?」
「あれ?コウガミくんとスバルさん達って知り合いなの?」
「昨日ちょっと、ね」
本当はちょっとで済ませられない内容なのだが、四人して微妙にはぐらかす。
「一昨日企業の件の帰りに会ったんだよ。そのまま昨日は商談っぽいことして終了……と思ったんだけどなぁ……」
はぁ、と露骨なため息をつくエイジ。すると丁度そのタイミングで最後の客人がやって来た。
「失礼します」
そんな声が聞こえたので、全員揃って後ろを振り返る。
「アインハルト・ストラトス、参りました。遅くなってすみません」
現れた少女を一目見ただけでエイジは泣きたくなってきた。紫と青のオッドアイに碧銀の髪。エイジの中にあるクソジジイの記憶から、その人物が自分にとって厄介すぎる相手であると即座に理解した。
「オイスバルさん、ティアナさん……アイツまさか」
「そのまさかよ。一昨日アンタが助けた覇王の子」
「エイジが来るってわかってたらエイジにも伝えたかったんだけどねー……」
一応、エイジはまだスバル達にオーズと聖王、覇王の確執を伝えていない。そもそもオーズのことだってメダルで強くなる古代ベルカの遺産としか教えていない。だからスバル達はエイジのことをあまり気にしていないのだろう。
エイジは自分が楽観的すぎたと自分のミスに頭を抱えると、ただでさえ聖王のクローンという面倒な知り合いが一人いるのに、そこに覇王の末裔なんて加わったら更に面倒なことになると思うだけで頭が痛くなる。
しかも、一昨日のヤミーの反応からして、恐らく覇王の記憶は受け継いでいる。迂闊にオーズにでもなろうとすれば、それはかーなーりヤバいことになる。
だが、だがだ。相手はまだ自分がオーズだと気づいていない。むしろ変身魔法を使って意図的に体格を偽って変身していたため、バレないはずがない……エイジや事情を知るノーヴェ、スバル、ティアナの三人がヘマをしなければ、だが。
以上、小声の会話。
「いやいや、全然大丈夫だ。それよりアインハルト。コイツが例の」
「え、えと、はじめまして!!ミッド式のストライクアーツをやってます、高町ヴィヴィオです」
ノーヴェに紹介され、ヴィヴィオは若干緊張しながらも挨拶をする。
(……震えたいのはこっちだっつーのによ)
エイジも足元をガクガクと震えさせるが、なんとか上半身は平静を保つ。
(───この子が)
アインハルトは差し出されたヴィヴィオの手を取る。
小さな手と、脆そうな身体。それがアインハルトがヴィヴィオに感じた感想。
だが、ヴィヴィオの二色の眼は紛れもなくアインハルトの中にある覇王の記憶が知る、聖王女オリヴィエ・ゼーゲブレヒトのもので、アインハルトの感情を複雑にしていく。
「ベルカ式カイザーアーツ。アインハルト・ストラトスです」
(カイザーアーツ……覇王流ねぇ。ネーミングセンスは……イイと思う。タトバよりは)
ぶっちゃけ覇王の流派だから覇王流とタカトラバッタでタトバは、お互いストレートすぎてあまり変わらないのだが、少年はやはり覇王とか皇帝とか、そういうのに憧れるのか。
エイジは自分の先祖にネーミングセンスを問いただしてやりたいと思ったが、もしかして古代ベルカはみんなネーミングセンスはストレートなのだろうか。
「あ、あの、アインハルトさん?」
手を握ったまま放さないアインハルトにヴィヴィオは声をかける。するとアインハルトはごめんなさいと一言言って手を放す。
「まぁ、二人とも格闘技者同士、ごちゃごちゃ話すより手合わせでもした方がはやいだろ?場所は、押さえてあるから、さっそく行くとするか」
「……なぁ、俺帰っていいか?」
「ダメだよコウガミくん。一応コウガミくんも我流とはいえ格闘技やってたでしょ?」
「あのバケモン高町のなにを見てどう学べと言うか!アイツのガチ殴り結構痛いしバカみたいな動きするんだぞ!?普通の人間の俺にあんなん参考になるか!」
因みにエイジもオーズという人外変身があるので、一概にうんそうだねとは言えない。
「行きたくない……あんな面倒なヤツらと一緒にいるなんてたとえほんの少しだろうと嫌だあぁぁぁぁぁああああああああああぁぁぁぁ!!」
哀れエイジ。彼は覇王と聖王、そしてオーズという過去に悪い意味で色々あった関係を理解していながら連れ回されたのだった。
◆◇◆
区民センター内 スポーツコート
「帰せー!俺を家に帰せー!」
コロナとリオに縛られたままスポーツコートに連行されるエイジ。ちょっと涙目をしている。
「面倒なことになったなぁ、エージ」
「面倒すぎる……こんな時にヤミーが来たらどうするつもりなんだ……」
一級フラグなんとかとはよく言ったものだ。ここで本当にヤミーが来たらエイジはホンモノだろう。
鞄の中のアンクがヴィヴィオとアインハルトの手合わせを見ている。
「なるほど……アイツらが今のイングヴァルトと、件の聖王のクローンか」
「そうだよ……アンクはどう思う」
「……ま、歳の割りには十分すぎるほどだな。だがやっぱり……ヤツらに比べると弱すぎる。
アイツらは……殺し合いの中で生きてたから、現代のヤツらとは比較するのもバカらしいけどな」
エイジはアンクの言葉を聞きながら手合わせをする二人を見る。やはり、アインハルトの方が押している。
年齢と経験の差か、それとも、過去を知っていることから来る信念の差か。いずれにせよ、アインハルトの拳はクラウスのものと似ている。
悲しみというべきか。エイジの予想が正しければ、アインハルトはクラウスの悲しみがそのまま記憶と一緒に抱え込んでしまっている。
「……ま、オーズの俺がアイツに言うことなんてない……というか、言ってやれることはないな」
エイジも初代オーズの記憶を少なからず受け継いでいる。だからアインハルトのことも理解できるし、理解できるからこそアインハルトに言ってやれることもない。
ただまあ、エイジはアインハルトと違って受け継いだ記憶の全てを憎いものと見ている。初めてオーズの殺戮の記憶を覗いた時は、こんなモノの血を引き継いでいるのかと戦慄したし、そんな自分に嫌悪感すら抱いた。
「お、掌底入った」
エイジがそう呟くとほぼ同時にアインハルトの掌底でヴィヴィオが吹っ飛ばされる。
アインハルトの表情は落胆したような、自分とは違ったことに少し安心したような表情をしていた。
「お手合わせ、ありがとうございました」
アインハルトがヴィヴィオに背中を見せて表情を読まれないようにしていた。だが大昔から様々なものを見てきたアンクには表情なんてなくてもアインハルトの思っていることはなんとなく理解している。
「あ、あのっ!!すみません、私なにか失礼を……?」
「いいえ」
「じゃ、じゃあ、あの……私、弱すぎました?」
「いえ……趣味と遊びの範囲でしたら、充分すぎるほどに」
やはり、アインハルトにとってこれは趣味でも遊びでもなければ、格闘技でもないのだ。
覇王と聖王の、神聖な決闘……そうでありたかったのだろう。
結局、ノーヴェ達が取り合った結果、ちゃんとした練習試合というカタチで終わる、なんとも不完全燃焼な結果となった。
◆◇◆
夜、帰路につくエイジを後ろの壁からこっそりと見ている一人の人影。何故見てるのかは、エイジの鞄の中身が物語っている。
「見つけたぞオーズ、そしてアンク……俺の二枚のコア、返してもらうぞ……!」
緑色のジャケットを来た男は隠せない笑い声を上げ、ちょっと周囲に引かれていた。
カウント ザ メダルズ
現在オーズが使えるメダルは?
赤 タカ×1
緑 カマキリ×1、バッタ×1
黄色 ライオン×1、トラ×1、チーター×1
灰色 サイ×1
青 ウナギ×1
紫 なし
橙 なし
特殊系 なし
緑の人……ナズェミテルンディス!!
初登場のわずか一つのセリフでドエライインパクトだぜ……緑の男、一体何者なんだ……