「私」の青春   作:せんせい

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遠い記憶を持って

 キヴォトスには様々な学園があり、多種多様な部活動が存在している。

数は余りに膨大で、統治するなんて並大抵の天才じゃ不可能。

良く言えば自由で尊大、悪く言えば無法で奔放。

 

「ぐすっうぅ」

 

 そんな場所に暮らす生徒たちは、皆各々の悩みを抱え、時には泣いてしまうこともある。

今日もどこかで誰かが困っている。助けが全てに行き渡ることはあり得ない。

 

 

「どうかしましたか?」

「ふぇ??」

 

 

 だからといって、必ずしも救いの手が差し伸べられないとも限らない。

どんな世の中にも見て見ぬふりが出来ない、そんな性格をもって生まれた誰かが居る。

理由はどうあれ、今日も彼女は誰かの、困っている同じ生徒の為に優しく微笑むのだった。

 

 

 ありがとうを言いながら、走り去っていく生徒を一人見送る。

長い髪が風に揺られ、頬をくすぐるのを片手で抑えながら、空を見上げた。

 

(日が高い……遅刻確定かな)

 

 ま、しょうがないと気持ちをサッと切り替え学校へ向かう。

遅刻は日常茶飯事、せめて欠席はしないように段々と走り出す。

なるべくショートカットするために、時には高い場所から跳び下り、たまに通行人を驚かせながら。

 

「……ん?」

 

 しかし、どんなに急いでいても騒ぎを聴きつければ脚が止まる。

少し遠い場所から爆発音、しばらくすれば銃撃音が響き始めた。

キャーキャーと生徒たちがまばらに離れていく中、逆に近づくために駆け出す。

 

「何やってるのやら……」

 

 態々首を突っ込もうとしている自分に対してボヤきながら、彼女は喧嘩両成敗だと自分の武装を抱えて戦場へと繰り出した。

 

――キヴォトスに暮らす生徒の身体は頑丈だ。

 

 普通に弾丸を受けただけでは死んだりしない。

勿論怪我はするし、当たり所が悪ければ相応にダメージを受けて気絶したりする。

 でも、外の人間(過去の記憶)に比べれば、致命傷さえ避ければ……否、本来ならば致命に至る攻撃だとしても、よっぽどのコトじゃない限りダメージで済むというのは、彼女にとってとても安心できる要素だった。

 

「むっ」

 

 ガンッと身体に衝撃が奔る。

単身で無理矢理戦闘に割り込んだ彼女は、結果として集中砲火のような形になるのは仕方がない。

折り畳み式の小さな盾で全てを防ぐことは出来ず、気絶しない様に歯を食いしばる。

 

 彼女は元々、戦闘が得意ではない自覚がある。

記憶に残る知識は大体指揮を中心としたバックアップがメインだし、何より……誰か(生徒)を傷つけるのを嫌っているから。

 

 それでも喧嘩(銃撃戦)を放っておけば、多くの人が傷つくだろう。

みんなが傷つくのをただ観ていることなんて、彼女の脳内辞書には存在しない。

少しでも早期決着するために、全身全霊を持ってなるべく優しく気絶、撤退させる。

 例え不利な状況でも諦めず効率よく動く方法なら知っている。

彼女ではないあの人(誰か)の記憶が、知識が、経験が、彼女を動かしてくれる。

 

「……ふぅ」

 

 自分の(知らない)記憶なのに、誰か(自分)がまるで少し離れた場所で指揮しているような不思議な感覚。

強い意志を持って戦闘を指揮し、終われば安否を心配してくれる、そんな優しくて甘い大人。

 

 あり得ないのに、不思議と背後から声をかけてくるような気さえする。

そう――「大丈夫?」って心配を隠さない、優しい声、が……?

 

「キミ、怪我はない?」

「……??」

「騒ぎを聴きつけたら、もう解決しててビックリしたよ」

 

 聞き覚えの無い(有る)声が聞こえた。

駆け寄ってきた誰か(既知)は、心配そうに微笑んでいる。

そう、知っている(身に覚えはない)。そうか、もうそんな時期だったのかと、彼女は一人納得した。

 

「あなた、は」

「あぁ、初めまして。最近赴任してきたシャーレの先生です。よろしくね」

「――」

 

 知らない(知っている)分からない(分かっている)、私は先生を――。

 

「どうかした?」

「……いえ、何でもありません」

 

 記憶にある、託されたあの(・・)先生ではない。

そして私も、託したあの人じゃ、ない。

既知ではない、全ては未知。未来は全て、子供(生徒)たちがこれから作り出していく。

 

「初めまして、先生」

 

 それは先生も同じ。未来の責任という重い選択肢を、この人はもっている。

でも、それを決めるのはまだこれから。全てはまだ、始まったばかり。

 

 

 これから始まるのだ、先生と生徒たちの――「私」の青春が。

 




キャラ紹介
「私」
 プレナパテス先生の記憶、知識、経験、前世を持つ生徒。ヘイローは蒼い折り鶴。
武器のえり好みは無いが、小さくても良いので盾は欠かさない。
本人としては出来れば大きいのが欲しいが、フットワークの軽さが相まって、中々持ち歩くには不便で断念。
 戦闘行為によく参戦するが、戦闘そのものを苦手としている。
相手が生徒じゃなく、カイザー等なら苦手意識が無いので殲滅力が上がっているのは無自覚。

先生→「私」
 たまに喧嘩(戦闘)の現場に駆け付けると、既に解決している怪我の絶えない子。
心配しているが、同時にとても頼りにしている。

ホシノ→「私」
 よく一人で無茶をしている子。大人相手でも突っかかっていくため、とても心配している。偶にお金を渡そうとしてくる困ったちゃん。
一緒にのんびり日向ぼっこするのが好き。

ヒナ→「私」
 風紀を知らぬ間に正してくれているのに、風紀委員に所属していないから罰しなきゃいけない、お説教をすればちゃんと聞いてくれるのに、全く行動に反映されない困ったちゃん。
でも優しいし、撫でてくれる手の暖かさと心地よさは先生によく似ていて拒めない。

アル→「私」
 戦闘行為が始まるとよく割り込んでくるヤベー奴。でも逃げる背中を撃ってきたりはしないし、降参した生徒の手当てすら行う姿も見かける。……もしかしてかなりアウトローな子なのでは?!

アリス→「私」
 とっても頼りになる勇者の仲間です!

ネル→「私」
 強いし認めているが、それはそれとしてヨシヨシって頭を撫でるのを止めてほしい。撫でられるのが嫌いというわけではない。

ヒフミ→「私」
 よく人から相談を持ち掛けられる自分とは逆に、悩みを聴きに駆けつけている、優しく暖かな雰囲気を持った不思議な子。
甘い物や美味しい食べ物の情報をよく知っており、飴やクッキーを常に持ち歩いていたりもするのを知っている。

ワカモ→「私」
 どこか先生に似た雰囲気を持っていて、不思議と説教染みていても話を聴いてしまう。





全生徒→「私」
 どこか既視感を覚えている。先生と似ているせい……?
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