「私」の青春 作:せんせい
今日も今日とて彼女は大回りの遠回りをして登下校を行う。
早起きは三文の徳とは言ったもので、こうして朝早くから、もしくは夜遅くまでフラフラするだけで、割と誰かの助けになることができる。
こんなことをするなら何処かに所属するべき、とよく言われるが、そうしてしまうと行動範囲が決められてしまうため、彼女は委員会や部活動に参加することはしてこなかった。
「……今日も派手に頑張ってるね」
「そちらも、いつもお疲れ様です」
とはいえ、そういった人たちと全く関わらないというわけではない。
寧ろ勝手に暴れているのはこちらであることを自覚している彼女は、苦労を掛けていると少し申し訳なく思うほどだ。
感謝の意も込めて、目の前に現れた最強の一角である風紀委員長、
「貴女、コレで何回目なのか覚えてる?」
「あ、アハハ……」
何処かの自称平凡な一般人だと気にしている
回数なんて数えていないが、風紀委員相手だけでも相当数お世話になっている自覚はあるのだ。
何なら、生徒の「事情」次第では彼女たちを相手に戦闘を吹っ掛けることもあり、目の前の最強相手にも数度挑みかかったコトが脳裏をよぎった。
勿論勝利したことはない。自分に出来ることなんて、せいぜい時間稼ぎが関の山。
「まぁいいわ。貴女と戦うと、後処理も面倒になってしまったし」
「うっご、ごめんなさい」
「別に、謝ることじゃない」
最近
なんと、先生からある程度の戦闘行為に干渉することを許可されたのだ。
勿論、戦闘行為に介入する際は先生に連絡を入れる事、事情をしっかり把握しておくこと、修繕などには最後まで協力すること、等々を条件としたものだったが。
「理由はどうあれ、貴女は誰かと一緒にいた方が良い」
「そう…?」
「えぇ。じゃないと……」
じゃないと――どう、なるのだろうか。
ヒナは不思議と言葉に詰まった。目の前の少女が、一瞬
その姿がとても愛おしくて、胸の内側が痛みを覚える程に――切ない。
「ヒナ……?」
「っ!!」
「ぼーっとして、大丈夫?」
謎の感傷に気を取られ、知らぬ間に彼女が接近していた。
心配している顔が近距離に迫って、彼女の額がコツンッとヒナの額に触れた。
「ん~、熱はないね」
「~~~!?ちょ、ちょっと……!」
妙な気恥しさが湧き上がって、バッと勢いよく顔を離した。
彼女はヒナの様子を気にせず、何処までも優しい雰囲気のまま微笑みかけてくる。
「ヒナは頑張り屋さんだから、ちゃんと休まなきゃダメだよ?」
「うっ」
よしよしと頭を慣れた様子で撫でる手は何処までも優しく、暖かく、甘い。
何時までも撫でられていたいと思ってしまう程で、いつも振り払うのに躊躇する。
しかし今日も今日とて、まだまだやらなきゃいけないことがあるのだ。
「もぅ、いいから……ともかく、気を付けなさい」
「はーい」
分かりました~と緩く敬礼し、茶化してくる。
ふざけた姿に憤ることはなく、呆れるような、安心するような気持ちでヒナはその場を後にした。
「またね」
「えぇ……また」
また、次はもっとゆっくりしたいと、不思議と思える。
ヒナにとって、彼女は陽だまりの様な、包み込んでくれる優しく暖かな存在だった。
シャーレ所属に関して
日常の書類仕事を手伝ってくれる生徒、一緒に戦闘行為を手伝ってくれる生徒、先生や生徒の手当てをしてくれる生徒等々。
様々な生徒が、各々シャーレの先生の手伝いを行う。
「彼女」は様々な前提条件があるが、戦闘行為に介入することをシャーレ所属として認められた。
なお、緊急事態の際には色々な要項を後回しにすることに躊躇はしないため、困ったちゃんなことに変わりはない。