「私」の青春 作:せんせい
便利屋68は賞金首の確保から護衛依頼、その他さまざまな依頼を日々承っている。
彼女たちはたった4人にも関わらず、非常に高い能力を駆使し風紀委員たちでも相手取るには相応の戦力を必要とする。
そんな彼女たちだが、やはりゲヘナ生徒ということもあって問題の渦中にいることがしばしば。
今日もとある護衛任務でブラックマーケットを案内していたのだが、ここは些細なことが戦闘に繋がる危険地帯。
「……さて、今日は何があってこうなったのかな?」
ブラックマーケットでの戦闘なんて慣れたモノだが、最近少し事情が変わっていた。
半ば治外法権となっているここはルールとは無縁の無法地帯。
しかし、そんな場所での戦闘に「やりすぎ」だと首を突っ込んでくる厄介者がいた。
「わっアルちゃんあの子が来ちゃったよー!どうする~?」
「え‶!?」
彼女は一人で多数を相手取り、制圧したら事情を聴き、その後必要なら説教を行う優等生という皮を被った問題児だ。
その戦闘力はゲヘナ最強と言われる風紀委員長を相手に出来るという曰く付き。
しかも最近シャーレという特権の一部を振るうことを許され、その活動は狭まることはない。
「ん~~~っ今日は退却よ!護衛兼視察としては十分でしょ?!」
「オッケ~!」
何度か戦闘を経験したアルからすれば、四人そろって居れば倒せない相手ではない。
風紀委員長を先ほど引き合いに出したが、素の能力は流石に劣っている。少なくとも頭部に弾丸をぶち込んで無傷というほど無茶苦茶じゃない。
だが、とても
素早いアルの判断を聴き、好戦的な社員のムツキがニヤっと笑うと鞄から煙幕を発生させる威力強めの爆弾を多数放り投げる。
逃げる便利屋を見て、喧嘩相手は追って来ようとするが、彼女の銃弾がそれを阻んだ。
「これ以上の戦闘行為は周りに迷惑です……というか、何をやったらこんな穴ぼこだらけに…?」
爆弾をよく使う便利屋は勿論、今日の相手も似たように派手な攻撃手段を好んだからだろう、確かに周りの景色は結構荒れ果てていた。
出店は吹き飛び、大きな建物の壁は崩れ、なんなら3階程度の高さにも破壊痕が。
……なるほど、余りブラックマーケットの戦闘に介入することの少ない彼女が来たのも納得できる惨状である。
「便利屋の皆さん、またあとで」
「ア、ハイ」
退却を選んだ便利屋をあっさり逃がすのには簡単な理由があった。
彼女たちは会社を営んでおり、住所も電話番号も基本公開している。
たまーーに住所不定になることもあるが、基本的に便利屋の居場所は筒抜けなのだ。
(うぅぅ、あの子のお説教はチクチク刺さるのよねぇ……!)
しかし、今回便利屋に悪い所は……多少ならあるかもしれないが、そこまではない。
襲撃系の依頼を除き、売られた喧嘩を買うことはあれど彼女たちから喧嘩を吹っ掛けるなんてことは少ない。
(話せば、分かってくれるわよね…うん)
戦闘しなければ、彼女はまず最初に事情を聴いてくれる。
何なら場合によっては、時間を取らせたと言ってお金を出してくれたりもする。
「お茶菓子、用意しておこうね」
「えぇ、そうね」
「わ、わたしも選びます…!」
彼女は決してただの暴れん坊ではない。それはキヴォトスに住む皆が知っている。
話すと和むし、慣れた様に撫でてくる手は優しくて、社長であるアルを初めとして便利屋の全員が懐いている。
(……まぁ、私まで撫でてくるのはちょっと、えぇ)
社員は勿論、人目のない時になら、とアルは少し思案して頭を振った。
(イヤイヤイヤ、私はアウトロー!そう、誰しもが畏れ慄くアウトローなのよ!!)
彼女の手つきはとても慈愛が籠っており、決して撫でる相手をバカにしたものではないことはよく分かっている。
少女らしい細くも、数々の戦場を越えてきたと思われる傷が幾つも残っているカッコイイ手のひら…そんな手に自分が頭を撫でて欲しいなんてそんな…そん、な……。
(……ちょっとくらいは、ね)
これからお説教が待っているかもしれないというのに、どこか期待を隠せないアル。
「クフフ、アルちゃんか~わいい♪」
ムツキはそんな彼女の内心を察し、こっそり笑うのだった。
誤字脱字報告ありがとうございます!
勢いで書いているのでこれからも無くなることはないです、よろしくお願いします!(開き直り)