マギア転生    作:川崎三文

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寝技とリッチと牧道の女達⑤

 

『モカウサギ搾り』も『牧道』も、地下迷宮の不思議アイテム、『タタミ』の上で行われる。

 道場の奥の壁には、タタミの上で搾られた『黒汁』を回収するための銀色の小型のタンクがいくつも並べられており、一匹のモカウサギからそのタンク一本分、約20リットルの黒汁が搾り取られると『一本!』となる。『一本!』を取られたモカウサギは、翌日までウサギ搾りの対象から外されることになる。

 

 このはによる簡単な説明が終ると、葉月とモカウサギによる実演が始まった。

 

 両者は道場の真ん中で一礼。

 そこから激しい立ち技の応酬が始まるかと思いきや、モカウサギの腕を掴んだ葉月はヒーローが怪獣の尻尾を掴んで振り回すように、モカウサギの巨体を軽々と投げ飛ばした。

 葉月はタタミに叩きつけられたウサギに素早く絡みつく。

 為す術無く背後から羽交い締めにされるモカウサギ。

 葉月の長い手足に締め付けられて、モカウサギの顔と胴体から黒汁がボトボト溢れ出した。

 モカウサギの顔は半分潰れていた。

 絵面的には、美少女が大きなウサギの抱き枕を力一杯抱きしめているようだが、黒汁のせいで肉汁たっぷりのギトギトな餃子を抱き潰しているようにも見えた。 

 

「これは演習だけど、本番になるとモカウサギはもっと暴れるからねえ。でも嫌がっているわけじゃないから安心して。抵抗しているように見えて喜んでるから!」

 葉月はモカウサギを締め付けながら言った。

 説明している間も、圧迫されたモカウサギの顔や胴から、ドバドバと黒汁が溢れて、葉月の道着をコーヒー色に染めながら、残りの汁はタタミに吸い込まれていく。

「モカァ! モカァ!」とモカウサギが鳴き声をあげる。

「苦しそうだよ。もうやめてあげたら?」灯花が言った。

「いえ、喜んでます」ちかが言った。

「虐待じゃない? これって動物虐待じゃない?」

 珍しく帆奈がアセアセとした表情を見せている。

「喜んでます」

「ほんとうに?」瀬奈が言った。

「モカァ! モカキュキュキュゥゥゥッ! キリマンジャッキュゥゥゥッ!」

 モカウサギが雄叫びを上げる。

 瞼を閉じたちかが、聖獣の鳴き声に耳を傾ける。

「やっぱり苦しんでるよ、ウサギさん死んじゃうよ」ういが言った。

「いえ、喜んでます」

「「ほんとに!!!?」」ういと灯花が同時にちかに詰め寄った。

「私は動物の言葉が分かりますから」ちかは胸を張ってそう答えた。

「あちしはよくこうやって耳から搾ってるんだよ」

 あやめが横になったモカウサギの両耳をぎゅーっと抱きしめるように搾った。

 ドボボボボォッと黒汁が床に垂れる。

「モカッツォォ! モカッツォォ! ブルマ、ブルマ」

「凄く、痛そうだよ」ういが言った。

「いえ、喜んでます」

「耳を搾るとブルーマウンテン汁が取れるの」このはが言った。

 

 突然、モカウサギの身体の下のタタミがピンク色に輝いた。

「一本!」というこのはの叫びが道場に響き渡る。

 

 葉月がモカウサギを締め付けていた手足をほどいた。

 数秒後、タタミに染みこんだ黒汁と、葉月の道着に染みこんだ黒汁が、タタミの隙間や道着の生地から、黒い触手を伸ばすように浮いて、離れ、生き物のように宙に集まり、三つの綺麗な球体を形作った。

 耳と胴と頭から黒汁を絞ったので、三種類の黒汁を搾ることができたのだ。

 黒汁の玉は放物線を描いて、壁際のタンクに吸い込まれていく。

 

「これで一匹分のノルマは達成だよ。このモカウサギは明日まで絞れないからねえ」

 葉月の道着は新品のように真っさらな色に戻っていた。

 モカウサギの青い瞳にはピンク色のハートのような模様が浮き出ている。

 搾り済みになった証である。

 

 一連の現象を不思議がる灯花達に、タタミがピンクに色に光ったり、染みこんだ黒汁が空中で玉になったりするのは、不思議アイテムのタタミや銀色のタンクの効果なのだと、経験者のやちよが説明した。

 原理は不明よ、と開き直ると、灯花は「そこが知りたいのにー」と文句を垂れた。

『タタミ』は地下大迷宮の『ガッコウ』』と呼ばれるポイントの『ブドウジョウ』で手に入れることができるらしい。

 話を聞いていた瀬奈は「まんまだね」と呆れ声で言った。

 

「ウサギ搾りについてはこれで大体分かったかな」葉月が言った。

「分からないよ! もっと細かいルールとかないの?」灯花が言った。

「外のモカウサギにも同じようなことをすればOKだから」このはが言った。

「曖昧だなぁ」ねむが言った。

「何していいか分からないヤツは、腕でも足でも、とにかくしがみついて搾ればいいからな」

 あやめが言った。

「次は『牧道』の説明に入るからねえ」葉月が言った。

「ここまでで質問のある方?」このはが言った。

「はい」瀬奈が手を上げた。

「タタミが光って知らせてくれるなら、このはさんが『一本!』って叫ぶ意味ないと思うんだけど」

「目隠ししてクエストに参加したがる冒険者もいるかも知れないでしょ?」このはが言った。

「スイカ割りなの?」帆奈が言った。

「他に質問のある人?」このはが言った。

 誰も挙手しなかった。

「無ければ『牧道』の講習に入ります。経験者の方は外に出て、モカウサギ搾りを始めて下さい」

 やちよとちかが立ち上がった。

「ちかさんも経験者だったんですね」ういが言った。

「はい、昔、旭さんと一緒に参加したことがあります」

 その時のことを思い出したのか、ちかは嬉しそうに言った。

「では、経験者の方は私と一緒に外へ。葉月、あとはお願いね」

「うん、任せて」

 

 

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