(21)お兄ちゃん   作:偽馬鹿

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良くある設定です。


(21)お兄ちゃんと敵

「名乗りって、重要だと思うんです」

 

いつもよりも力のこもった声。

一種のこだわりという奴だろうか。

魔法少女はかくあるべし。

そんなイメージが摺木さんの中で固まっているのかもしれない。

 

「前回はいきなりだったんで考えつかなかったですけど、やっぱり、必要です」

「そうかな」

「そうです」

 

本当に今日は押しが強い。

 

 

 

 

「いい、ですか。魔法少女は、ヒーロー……なんです!」

「そうだね」

「だから……堂々と、敵と戦って、勝つんです」

「うん」

「ロリお兄ちゃんも、その方が……いいよね?」

「ロリお兄ちゃんはやめて」

 

いつものお願いなのだけど、今日も今日とて聞いてはくれない。

何が彼女を頑なにするのか。

これがわからない。

 

「ロリお兄ちゃん」

「今男の恰好なんだけど」

「ロリお兄ちゃんにも……名乗りを、してもらいます」

「ガンスルー」

 

まるで聞いてくれていない。

仕方ない、このまま話を聞くことにしよう。

 

 

 

「げはははは! 今日こそはこの街を恐怖の底に叩き落してやる!」

 

それから数日後。

都合のいいタイミングで現れたEOJを倒すべく、私たちは繁華街へと繰り出した。

今日のEOJはサソリのような特徴を持った個体のようだ。

 

「じゃあ、手筈、通りに」

「はいはい」

 

逃げる市民たちをしり目に、私たちはそのEOJと向かい合い、決めポーズをした。

若干恥ずかしい。

 

「みんなの平和を守るため!」

「正義の力を振るいます!」

「青き星の魔法少女ヴェガ!」

「赤き星の魔法少女デネブ!」

「「あなたを綺麗にやっつけます!」」

 

最後に背後で爆発(演出)。

成功である。

何か摺木さんは感動している様子だ。

 

「げははは! 何を言っている! 猛毒の針に刺されて苦しみながら死ぬがいい!」

 

右腕が針のようになっているEOJは、その腕を伸ばしてこちらへと差し向けてきた。

最初に戦った相手よりも断然速い。

それが摺木さん、じゃなかったヴェガに向かう!

 

「危ない!」

 

しかし、ヴェガはその針を避けることなく、がっしりと右手で握って止めた。

相手も驚いているようだ。

魔法少女の戦闘方法は魔法。

そう思っていたのだろうか。

 

しかし、魔法は魔法でも、ヴェガの魔法は身体強化。

あれだけの速度の攻撃であっても、強化した腕でつかむことは簡単なのだろう。

 

……それにしても。

ヴェガは何やら震えている。

先程までの喜びではない。

怒りで震えているのだ。

 

「魔法少女の名乗りを―――――」

「うお、おおおおおおお1?」

 

掴んだ相手の尾を離すことなく、ヴェガは引っ張る。

相手は逆らうこともできず宙を舞い、空へと舞い上がった。

 

「―――――邪魔……する、なああああああ!!!」

 

そして、そのままの勢いで地面へと着弾した。

凄まじい力だ。

EOJはアスファルトの地面にたたきつけられて……ああいや、ぶっ刺さったうえに血塗れになっている。

 

……そういえば、私も初陣でアスファルトを砕いていたような覚えがある。

ああ、いつか謝らないと。

いつになるかわからないけれど。

 

「あ、やりました、ね!」

 

その惨状を見ながらVサインをするヴェガ。

うーん呑気。

これはまた過剰暴力で報道なのではないだろうか。

 

そう思っていると、ヴェガの元に小さな少女が近寄っていく。

危ないと思わないのだろうか。

ああいや、一応魔法少女。

見た目は可愛らしい女の子だ。

あのパワーだが。

 

「あの、あの! ありがとうございます!」

「え、あ」

「応援します!」

「あ……あ、はい!」

 

何やら感動しているヴェガ。

うんなるほど。

純粋な好意を向けられて硬直、そして後から高揚感がにじみ出てきたようだ。

 

「ありがとう魔法少女!」

「ありがとう!」

「助かった!」

 

そして、その少女を皮切りに周囲から感謝の声が聞こえ始めた。

なるほど、みな切っ掛けが欲しかったのか。

それはそうか。

少なくとも、この近くで魔法少女は見た事がない。

そんな相手に警戒しないわけがないのだ。

 

それが、あの少女のおかげで和らいだ。

少女様様である。

 

 

 

―――――いや待て。

これはおかしい。

 

魔法少女がいなかったのは分かる。

しかしその間、EOJは()()()()姿()()()()()()()()()()

これはどういうことなのか。

 

……まさか。

いや、私の推測が正しければ。

EOJのいるとこに魔法少女が現れるのではなく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

EOJのカウンターかと思っていた魔法少女は、実のところそうではなく、EOJこそが魔法少女のカウンターなのではないだろうか。

 

これは後であのマスコットを問い詰めなければならない。

住民の輪の中で微笑んでいるあの少女を巻き込む必要はない。

こういうのは大人のやることである。

 

 

 

『―――――気付いたんだね』

「まあ、ね」

 

マスコットと向かい合って話す。

ここは私の家である。

誰もいない、誰も話を聞いていない場所。

そこが最適だろうと思ったのだ。

 

『お察しの通り、EOJは魔法少女を害するために存在している。魔法少女を狩るために存在しているのさ』

「それは何のために?」

 

それが分からない。

何故元々が少女である魔法少女ばかり狙うのか。

いやまあ私という例外はいるにしても。

 

『そもそも、EOJは略称だね。君は最初こう思ったはずだ。Enemy Of Justis の略称だと』

「そうだね」

 

まさにその通り。

魔法少女が正義であり、その敵であるならば。

正義の敵という名称が似合う。

 

だがそれが間違いであるのならば。

彼らは一体何なのか。

 

『―――――Evolution Over Judgment』

「……それが本当の名前?」

『進化の判断、もしくは進化論。それが彼ら』

 

……それは。

魔法少女は、進化の敵ということなのだろうか。

 

『正解。彼らは彼らの進化を望んでいる。その結果があのような身体』

「それじゃあ、魔法少女とは一体何?」

『簡単に言えば、彼らの進化を妨害する癌細胞さ』

 

それは控えめに言っても害悪そのものなのではないだろうか。

少女を騙し、罪もない相手を害するために戦わせる。

それのどこが正義なのか。

 

 

 

―――――いや、これもおかしい。

確かに、彼らが進化を望んでいることそのものは悪いことではない。

しかし、彼らは実際のところ普通の市民に手を出している。

害している。

それはどうしてなのか。

 

……いや、それも進化の過程に必要なことなのか。

市民を恐怖に陥れることが?

何故?

答えは出ない。

 

『実のところ、彼らが市民を傷つけている理由には未だに行きついていない』

「そうなんだ」

『だけど、俺達は戦うしかない。魔法少女を囮にしてでも』

「それはどうして?」

 

囮。

魔法少女は囮なんだ。

魔法少女を使って奴らを誘っている。

何故か。

その答えが今発せられる。

 

 

 

『―――――彼らの総数は100億体だ』

「は?」

 

 

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