(21)お兄ちゃん   作:偽馬鹿

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知り合いにこの話を見せたら
「ゲッターじゃん……」
という御言葉をいただきました。


(21)お兄ちゃんとEOJ

―――――あれから、摺木さんとは会っていない。

スマホは解約したし、泣く泣く引っ越しもした。

これで彼女は私を追うことはできないだろう。

 

「はぁ……」

「どうした?」

 

声をかけてきたのは私の友人だ。

名前を葛城 阿月(かつらぎ あつき)

簡単に言うと超絶イケメンだ。

ただしロリコン。

フリだと思うが、それによって女子から言い寄られるのを回避しているようだ。

 

「なんでもないよ」

「お前がそういう時は決まって問題が起こってるんだが」

「そう?」

「そうだ」

 

一体こいつは私を何だと思っているのか。

そんなに問題を起こしたことはないはずだ。

 

「最近俺に代返させているの、何かあったからだろ」

「……」

「ほら!」

 

仕方ないことなのだ。

魔法少女のことはこいつには教えられないのだから。

 

 

 

摺木さんと行動をしなくなってから、私は単独で魔法少女の活動をするようになった。

とはいえ基本的にはパトロールであり、人の多い場所を歩いているだけだ。

何かが起これば変身して対処する。

勿論、周りには十分注意してだ。

またレディダイバーに狙われては困る。

 

「しかし、この街にも魔法少女が来るとはなー」

「……そうだね」

「一度会ってみたいもんだ」

 

……その内一人は私なんだよなぁ。

 

 

 

今この街には4人の魔法少女がいる。

私と、摺木さんと、この間会った少女と……レディダイバーだ。

あの少女はアルタイルと名乗っているようだ。

 

戦闘方法は遠距離。

魔法というか、機械を作り出してそれに攻撃させているような印象。

もしかしたら近接戦闘も可能かもしれない。

……まあ、ヴェガ相手だと分が悪いだろうが。

 

そしてその戦闘にレディダイバーも加わる。

遠近両方で活躍する彼女は、潤滑油のように動いている。

やはり歴戦の戦士というべきか。

いや、魔法少女か。

 

彼女たちは大丈夫だろう。

問題は私だ。

何せ行動の指針だったマスコットもいない。

何をすればいいのか分からない状態で、魔法少女の活動だけ続けているありさまだ。

 

……しかしまあ、このままEOJに侵略されてしまうのもごめんだ。

これからも魔法少女活動は続けていくだろう。

例え、私が魔法少女でなくても、だ。

 

 

 

「……」

 

その翌日。

大学も休みなので、ゆっくりパトロールしようかと思っていたところ、見覚えのある少女の姿を見かけた。

アルタイルだ。

その頭からは特徴的な猫の耳が生えているが、元気がなさそうだ。

 

魔法少女……なのか未だに分からないが、彼女が単独で行動しているのは珍しい。

いつも3人一緒にいるのだ。

もしかしたら何か理由があるのか。

 

「アルタイルさん」

「っ!?」

 

私は変身して彼女に話しかける。

当然相手から気付かれないようにだ。

 

すると、彼女はまるで敵を見るかのような目でこちらを見てくる。

どういうことか。

ああいや、魔法少女からしたらEOJは敵なのだけど。

一応摺木さんの先輩ということも知っているはずなのに。

 

「お前は……」

「知ってるでしょ、デネブだよ」

 

そう言って、アルタイルの真正面に立つ。

特に力を籠めたりしない。

自然体だ。

そもそも敵対するつもりがないのだ。

力なんて必要ない。

 

「何か悩み事かな?」

「……」

 

軽く首を傾げながら聞くと、アルタイルはため息をついて歩き出した。

進む先は公園だ。

そう、先日レディダイバーと戦闘をした場所だった。

 

 

 

「アタシは今、ヴェガの家に居候させてもらってる」

「うん」

 

ブランコに座るアルタイルと、隣に座る私。

何やら人生相談に乗るような感じになってしまっている。

まあいいけれど。

 

「アタシは……まあ、感づいてると思うけど、EOJなんだけど」

「うん」

「あいつらは……そんなアタシを受け入れてくれた。仲間だって言ってくれた」

「うん」

 

ぶらぶらと揺れるアルタイル。

その言葉をずっと聞いているだけの私。

まあ、吐き出す先があるだけで違うものだ。

 

「でもさ。あいつら以外にも、アタシには友達がいるんだ。向こうにさ」

「うん」

「だから……どうすればいいのか、分からなくなって」

「うん」

 

向こう、というのは恐らくEOJがいる場所のことだろう。

それはそうだ。

100億という個体がいるのだ、そのいくらかが友人関係であってもおかしくはない。

そういう概念があるのか不明ではあったが、この様子だとそれがあるらしい。

 

「裏切られて、捨てられておいてなんだけどさ。やっぱり友達なんだ」

「うん」

「だから……」

「そうだね」

 

聞けば聞くほど沼にはまっていくような感覚。

そうか、EOJの輪から弾かれたのか、この子は。

 

「それじゃあ、喧嘩しよう」

「え……?」

「だってそうでしょ。友達と喧嘩して仲直りする。そういうこともあるよ」

 

まあ一般論ではあるが。

それがEOJの生活様式に合うか分からないけれど。

もしかしたら、そういうきっかけで仲直りができるかもしれない。

ぶつかり合うことでしか気付けないこともあるのだ。

 

「向こうの友達と喧嘩して、仲直りして、また友達に戻ればいいんだよ。その後のことは、その時考えよう?」

「……」

「駄目なら駄目で、諦めがつくでしょ?」

「思ったより酷いこと言うな、お前」

 

そう言うと、アルタイルは勢いよくブランコを振って跳び、綺麗に着地する。

そんな台詞の割には明るく、何か吹っ切れたような印象を受けた。

 

「そうするよ。喧嘩して……話してみる」

「それがいいよ」

 

どうやら人生相談に成功したようだ。

一安心して私も立ち上がろうとするが、その前に背後から気配がする。

アルタイルも気付いたのか、警戒するように構えた。

 

「どうも、裏切り者のおふたり方」

 

裏切った覚えはないのだけど。

そう言う前に、攻撃が飛んできた。

ナイフだ。

それが私の頬をかすめていった。

 

「不意打ちがそちらの流儀だったっけ?」

「まさか。変身済みのあなた達相手に容赦する必要はないと思いまして……ね!」

「チッ!」

 

台詞を言い切ることなく、新たに攻撃を加えてきた相手。

またもやナイフだ。

それを私は引力強化で地面に縫い付ける。

その隙に、アルタイルが巨大な機関銃のようなものを作り出し、銃口を私の後ろのEOJへと向けた。

気付けば変身もしていた。

緑を基調とした鎖骨まで露出した艶やかなドレス。

足元はがっしりとした茶色のブーツだ。

 

「どいてな先輩!」

 

言われなくても避けますよ。

転がるように横へと飛び退き、その直後に放たれる銃弾の嵐。

振り返るとそこにはハチの巣になったEOJの姿が……。

 

「あれは偽物だね」

「何!?」

 

私には分かる。

何故なら、地面に接しているはずの靴が浮いている。

恐らく紙か何かでできたハリボテだ。

 

「おや、気付かれてしまいましたか」

「手品なら本職に習うといいよ」

 

アルタイルの背後から襲い掛かろうとするEOJを自転操作で吹き飛ばす。

近くに頑丈な建造物はない。

ダメージを与えることはできないだろう。

とはいえ、距離を保つことはできる。

 

「これは手厳しい」

 

ホホホ、と笑いながらEOJはナイフを更に取り出す。

シルクハットに気持ちの悪い笑顔の仮面。

そして華奢な肉体という格好のEOJは、素人の手品師のような手際でナイフを扱っていた。

 

「近接は?」

「苦手」

「じゃあアタシが前に出る!」

 

短く対応。

即座に行動を起こす。

アルタイルは金属の板を重ねたような巨大な剣を作り出すと、EOJに向かって突貫した。

 

ぶおん、という風を切るような音とともに振るわれる大剣。

威力は十全なのだろうが、いかんせん当たらない。

あのEOJは回避が得意なのだろう。

 

それでもヴェガなら……と考えてしまう。

あの子なら恐らく回避されてもされてもくらいついて殴り倒すだろう。

そういう子だ。

 

何か魔法少女を理解しているようでどこか勘違いしているあの子を思い出しながら、私は魔法を練る。

最近では大味の魔法ばかりではない、細やかな魔法も使えるようになってきたのだ。

 

右手に小さな小さな惑星群を作る。

魔法によるもの9だ。

それの内一つを高速で回転させて、射出する。

 

私の魔弾は威力がないらしい。

かつてあのマスコットに言われたことを考えながら思いついた、私だけの魔弾だ。

威力は十全、速度も申し分ない。

誘導性はないが、連射性はある。

惑星群がなくなるまで連射ができる。

 

今回生み出した惑星群は8つ。

つまり8連式のリボルバーみたいなものだ。

威力は下手な家なら吹っ飛ぶそれだが。

 

だぁん! だぁん! だぁん!

 

地面に着弾し爆音を響かせる。

それはEOJの足元を狙っていて、動きを封じるために放っている。

本当なら引力強化で止めてしまいたいが、あれは相手の質量が大きくないと駄目だ。

効きが悪い。

今回のEOJは重量がなさそうなので、即効性がないだろうと考えた結果、この惑星弾を放っているのである。

 

それにだ。

あの引力制御を行うには若干の隙が必要だ。

先程のナイフを縫い付けた時は、相手が何かを放ってくることを想定してあらかじめ準備していたから発動できたのである。

 

「ちょこまかと……!」

「吾輩は貧弱ですからねぇ……そのような野蛮な攻撃を受けてはいけないのですよ」

 

しかし、どれだけ弾丸を放っても、剣を振り回しても当たらない。

まるで影法師だ。

面倒臭いタイプだ。

 

隙があれば。

もしくは相手を追い込むことが出来れば。

()()()()()を披露するというのに。

 

しかし、時間がない。

これだけ騒ぎを起こしているのだ。

そろそろ他の魔法少女……つまり、ヴェガが来てしまう。

それは避けたいところだ。

 

やりたくない。

やりたくはないが……仕方がない。

 

「最終兵器を―――――」

 

禁断、私が持ちうる最強の一撃を放つ。

そうしようとしたところで……来てしまった。

 

「―――――その必要はありません!」

 

バアン! という擬音とともに、現れた。

私の後輩で、魔法少女で、EOJの。

摺木さん……いや、ヴェガが現れたのだった。

 

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