ぐだアースSS 作:ウヤムヤ
それは、日本で発生した特異点に向かった時のこと。
――ゆびきりげんまんうそついたらはりせんぼんのーます♪ ゆーびきった♪
…………マスター。あの子供たちは一体なにをしているのでしょう。……はい、少し気になったもので。
指切り? あの子たちはこれから指を切り落とすのですか?
……そうではなく、約束をする時の決まり事のようなもの、なのですか?
…………なるほど。元々は遊女が意中の男性客に誓いを建てる為、自らの小指の先を切って渡すという儀式。それが形骸化し、広まってしまったものである、と。
実際に針千本も呑まなければ、げんまんもなく、そのような唄と共に伝わっただけ。
……マスター、確認してもよろしいですか? 人類は小指が欠損したら修復は可能でしょうか?
……無理? なるほど。つまり、一部とはいえ肉体を失ってまででも守らなければならない誓い、だったのですね。
――それは、まるで呪いのようですね。
建てた約束は反故に出来ず、それを成す為実行する。魔術じみてもいます。
……いえ、悪いとは思いません。
古来より、契りや誓いは魔術と切っても切れないものです。だから、私はそれを否定しません。
…………ですが、魔術師でもない人間が、修復不可能な己が身を差し出してまで行うのは、正直に言って驚嘆します。
根源への到達でもなければ、神秘の再現でもなく、魔術の代償でも、信仰への供物でもない。
ただ一人。添い遂げたいと思える一人の為だけに、その身を捧げる。
(――そこまでの覚悟を、果たして私が持てる日は来るのでしょうか……いいえ、おそらく……)
……すみません、マスター。少し耽ってしまいました。
疑問は解消出来ました。いきましょう。
……どうしましたか、小指を突き出したりして?
え? 指切りをしよう、と?
ですが、その……私たちに特別約束をするようなものなど…………特別なものでなくてもいい? 試しに一回やってみよう?
……呆れます。貴方の中ではそのように軽いものなのですか、約束とは。
……下手に重くしなくてもいい? 普段している当たり前のことでも約束にできる? 変に気負う必要はない?
…………ふふ、やはり呆れます。
……ですが、はい。わかりました、しましょうか、指切り。
内容は、そうですね……。はい、決めました。
――これから先も、貴方は私をエスコートし続けてください。さすれば、私も貴方に力を貸し続けましょう。貴方の肉体が朽ちるまで、私の霊基が砕け散る、その時まで……。
……はい。ゆーびきった。
どうしましたか? 私はただ、サーヴァントとマスターの関係を再度口にしただけです。他意はありませんよ。
ですが、マスター。
努々、私との約束お忘れなきよう。
私は淑女ですので、針千本もげんまんもしませんが、指は切ってしまうかもしれませんので。
「…………」
「……古き姫は一体どうしたのだ? 近頃は、小指を見てほくそ笑むことが多いようだが」
「あー、あれでしょ。カルデアくんとした……そう! 『指切り』ってやつ!」
「む、あれは契りを再度確認しただけであろう? 何故あそこまでだらしなく(当社比)笑うことが出来る」
「うーん……契りとか契約とかとはちょっと違うのよね、人間の約束って」
「そんなものか」
「そうそう! 本格的なのと比べると内容は軽いんだけどね、破られた時ってすっっっっごい頭に来るの! わたしも約束した待ち合わせをすっぽかされたことがあってね!」
「ええい! やめぬか! 貴様の惚気話なぞ聞いていられるか!」
「あ! ちょっ、待ちなさいよ! 原型のわたし!」