ぐだアースSS 作:ウヤムヤ
そう、呼びたいのですか? 私を……?
……何故ですか?
……ククルカンが私をそう呼んでいたのを聞いたから、ですか。
確かに、彼女は私をそう呼びますが、それは同じアーキタイプとしての分類としてであり、別に私個人の名という訳ではありません。
彼女は汎人類史の神話をモチーフとして自らの在り方を定義しました。その結果、ククルカンという名を持つに至ったわけですが、私にはそういったものはありません。
ですので、名というのであれば『アーキタイプ:アース』が正にそれです。
……アルクェイドはどうなのか? ですか。
彼女は、私や『原型の私』とは違い、『宝石翁』を含めた独特の人脈(ネットワーク)を持っているようですから、その関係で得たとしてもおかしくはありません。
? 『宝石翁』についてですか?
現存する魔法使いの一人であり、並行世界を観測することも出来る人物です。他にも様々な魔術礼装生み出したりしています、あの二人の魔法少女が持つ杖もその内の一つですよ。
……そうですね、貴方からするともっと身近なものでは……『カレイドスコープ』と言えばわかるでしょうか?
はい、貴方が日頃お世話になっているあの礼装と縁ある人物です。もし、逢うような事態に出くわしたら敬意を払うのがいいでしょう。
……少し、脱線しました。
ともかく、ククルカンがそう呼んでいるからと言って貴方までそうする必要がないように思えますが?
……アルクェイドだけでなく、原型の私とも区別する為でもある、と。
確かに……アルクェイドはともかく、私と原型の私は容姿も姫としての在り方も近――
待ってください。まさかと思いますが、私と『アレ』を同列に見ているということですか?
…………その沈黙は肯定ですね。
いえ、確かに霊基然り、在り方然り同じところはあります。
しかし、私はあそこまでズボラでも怠慢でも傲慢でもありません。ましてや他人の手柄を横取りしようなどというハイエナの様な思考は持っては…………持ってはいません。
…………いいでしょう、許可します。
はい、貴方が呼びたいのなら、その様に呼んでいただいて結構です。
姫として見られ、扱われるのはともかく、流石に中身まで『アレ』と同じだと思われるのは心外です。
ですので、許しましょう。
『やったー! ありがとう! これからもよろしく! アース!』
………………そ、そこまで喜ぶようなことなのでしょうか?
それに、貴方に呼ばれるとこそばゆいというか……。
いえ、流石に撤回はしません。これも一つの学びとして享受します。
ですので、マスター。決して、『アレ』と私を混同しないようお願いします。
「やっほー、過去のわたし。カルデアくんから新しい名前着けられたんだって?」
「……アルクェイドですか。はい、ククルカンが呼んでいるところを見て、原型の私との区別としてマスターもそう呼ぶようです」
「なるほど、あの子由来なのね」
「それに、名前といっても略称みたいなものですよ?」
「あ、それ知ってる! 愛称、ニックネームってやつね!」
「? 略称とどう違うのですか?」
「簡略するか、親愛を込めるかの違いじゃないかしら。カルデアくんの場合後者の気がするわね」
「………………」
「嬉しい?」
「…………いえ、そのようなことは……ただ」
「ただ?」
「……不思議と、嫌ではないと、そう思っただけです」
「うんうん、そっかー」
「…………なにか、含みがありそうな顔ですが?」
「別におかしなことは考えてないわ。でも、そうね……小さくても、変化を受け入れることができるあなたの未来が少し楽しみになったのかも」
「? 私の未来は貴方では?」
「わたしもあなたも、それぞれ別の道を歩んでいるの。だから必ず同じ道筋を辿るわけではないわ。それとも原型のわたしみたいになりたい?」
「いえ、まったく。アレが理想の姿とは思えませんので」
「わたしも。だから、そう思えているのなら、きっとならないでしょう、あなたは」
「貴方にも、ですか?」
「ええ、わたしにも。あくまで時間軸的な意味で過去というだけで、同一の世界線にいるわけではないのだもの、わたしとあなたは。だから、あなたがどう変わっていくのか、少し楽しみなのかも」
「…………」
「今回のはその一歩だと思っているわ。だから嬉しくなっちゃった! 頑張ってね、過去のわたし」
「頑張る……どうやって?」
「う~ん……暫くはカルデアくんと一緒にいたらいいんじゃないかしら? 彼の周りって色々と問題が起きたりして退屈しなさそうじゃない? 手を貸す意味でも近くにいていいと思うけど」
「……そうですね。それに、エスコートを任せてしまった以上、理由もなく離れるのもおかしな話しですし……そうします」
「うんうん、この先どうなるか分からないけど、頑張ってね! 過去のわたし」