ぐだアースSS 作:ウヤムヤ
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用事があるからと、先に部屋に行くように言われましたが、困りましたね……。
いざ到着し、待つことにしましたが……。
(ちらっと時計を見る)
……まだ二十分……その程度しか経っていないのですね。
時間の流れを意識したなどなかったのですが、意識してみると意外と緩やかなのですね。知りませんでした。
いえ、それとも『誰かを待つ』という行為がそうさせているのでしょうか?
『うんうん、わかるわかる。わたしもよく待たされていたから、その気持ちよくわかるわ』
…………アルクェイド?
『でも、待ってる時間もそれはそれで悪くないでしょ? 相手のこと考えながら待つのって結構楽しいものよ。まあ、もちろんその相手が来てくれること前提だけど』
………………アルクェイド。
『うん? なにかしら、過去のわたし』
……今は『私』の時間です。それなのに表層に出てくるのは如何なものかと。
『あら、いいじゃない。どうせ暇なんでしょ? 話相手くらいにはなるわよ』
そう言って、話したいのは貴方の方では?
『それは……うん! 実は、そうなのです!』
……はぁ。
『呆れないでほしいんですけど』
……貴方は本当に話すことが好きなのですね。
『ええ、それはもちろん。でも、あなただって最近はよく話す方じゃない?』
そう、なのですか……?
『そうなのです。これもカルデアくんのおかげかしら。あの子との出会いがあなたに変化を齎しているのかも』
……自覚はありませんが……。
『わたしと違ってあなたはゆっくりだもの。わたしが隕石の衝突のような激烈的な変化だとするのなら、あなたは川の流水によって削れる石のように緩やかな変化をしているの』
………………緩やかに。
『ええ。徐々に、ゆっくりと、でも確かに変わってはいるわ。そこはわたしが保証してあげる。まあ川だから偶に氾濫とか起きて大変かもしれないけど、その時は頑張ってね☆』
……まるで他人事、ですね。
『……原型を同じくしているけど、わたしとあなたは別物よ。身体(外)を構成するものは同じでも、心(内)に宿る想いは別、でしょ?』
それは……確かに。
貴方が『未来の私』だと言われても信じられなかったですし……。
『そうでしょう、そうでしょう。わたしも『ああ、昔のわたしってこんなだったんだぁ』ってなったもの。それほどまでに違うのよ、わたしとあなたは』
………………。
『怖い? 変わることが』
……はい。少しだけ……。
『わかるわ。基本わたしたちは変化しない存在だもの。もしそうなる時は往々にして――』
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もし……もし、そうなってしまったら、私は……やはり、マスターを……。
『あ、安心して、そこは大丈夫』
……何故、そう言い切れるのですか?
『だってあなたは、『まだ何も過ちを犯していないわたし』だもの。だから大丈夫よ』
……え?
『それにね、その状態であるのにも拘わらず、あなたは変わっていってる。これはね、すごいことよ』
……そう、なのですか?
『ええ、そうよ。なにせ、わたしの変化はいずれも過ちの後なの。過ちを犯して、力の一部を奪われ、その元凶を追い続け、そして――『あの人』に逢って……。だから、前提からして違うあなたは大丈夫よ。保証してあげる』
…………アルクェイド……。
『おっと、廊下から聴こえてくる足音……急いで走ってきてるわね、もしかしてカルデアくんかしら? なら、そろそろわたしはお邪魔するわね』
……え?
『さすがにそこまで無粋なことはしないから、ゆっくりと楽しんでね。過去のわたし。じゃあね☆』
…………まったく、本当に勝手、ですね。
……お帰りなさい、マスター。
少し、遅かったですね?
報告し忘れていたことがあって、それを伝えていたら遅れた?
その程度のことの為に、私だけを先に行かせたのですか?
……ええ、その『程度』です。その程度の時間なら、貴方の側で待ちます。その方が貴方も走る必要はなかったでしょうに。
次からは、そうしますよう心掛けてください。
……では、マスター。こちらへ。
はい、私の隣へ。
今日もまた、貴方の知る『日常』を私に教えてください。
楽しく愉快なことだけでなく苦しくて辛いことも、です。
箱入り娘の私は知らないことが多いのですから、まずは貴方のことから教えて貰わないと……。
ええ、些細なことでもいいのです。
貴方と語り合う、この緩やかな時間が、今の私にはなにより大切なのですから――。