暗い夜道をひたすらに走る。
肺がはち切れそうだ、だが止まることは許されない
脳が酸素を欲して、体に信号を送る。
走れ、走れ、走れ
ひたすら前を向き走る。
生きるために...
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町が闇に沈む、異様な静けさがどこまでも広がる。
「行くぞ」
「うん」
俺たちは行動を開始した。
一歩また一歩と足を進める。
真っ暗な町、点々とある街灯だけが頼りだ。
街灯には大小さまざまな虫
50cmはあろうかというものもいれば
俺たちが普段目にするサイズのものもいる
どうやら巨大化したものもいれば
そのままのサイズのものもいるようだ
またすべての虫が人を食らうわけではない
例えばカゲロウなどは成虫となると口がなくなり何も食さない。
突然、裾が握られる。歩みが止まる。
「大丈夫だよ」
俺はその手を握り返しぎゅっと包み込む
握った手は小さく今にも壊れてしまいそうなほど華奢だ
しばらくの沈黙。
だが、いつまでも止まっていればどんな危険があるかもわからない
俺は手を引き歩みを進めた。
大通りに出る、そこにはひどい惨状が広がっていた。
足元には人であったのかもわからない肉塊が広がり
ひどい悪臭を放っている。
あまりの惨状に千絵は吐いてしまった。
介抱しつつさらに歩みを進める、
俺は嫌な気配を感じ、千絵を連れ近くの路地裏に隠れる。
10mほど先だろうか、黒い巨体がうごめいている
ゴキブリだ、死体を貪り喰っている。
遠目からわかるほどデカい
ここは通れないと判断し、俺たちは別ルートへ向かった。
人だかりができている。
俺はこの世界が始まってから初の人間に安堵しつつ
様子をうかがう、よくよく見れば何かもめているようだった。
しばらく観察していると、その人だかりに見知った顔を見つけた
あれは誰だったか?
「美彩ちゃんと慎吾君だよ」
千絵が答える。
ああ、そうだ確か同じ学校の同級生だったか
少ない交流関係を思い出しつつ頭をフル回転させていると
向こうもこちらに気づいたらしく、近づいてきた。
「お前らも無事だったか!!」
笑顔で駆け寄ってくる。慎吾と美彩
熱い抱擁をかわす。
しばしの再会を噛みしめつつ、俺たちは何があったのかを聞いた。
事の発端はこうだ、彼らは2つの団体らしい
大人数を維持するのには食料が必要だ。
彼らは食料を探し外に出たという、その過程で鉢合わせになったらしいのだが
極限状態のためか、片方のメンバーが相手のメンバーに襲いかかり
流血沙汰になってしまった。
二人はたまたま通りかかり、比較的落ち着いているメンバーに話を聞いていたらしい。
慎吾から事情を聴いている最中も、争いは収まらないむしろ襲い掛かりそうなほど
ヒートアップしてしまっている。
互いに、罵詈雑言の嵐、周りが一気に騒がしくなる。
バキッ
嫌な音があたりに響く、あれだけ争っていた声もその音で一気に静かになる。
「おいあれ」
メンバーの一人が指をさす、俺たちも異変を感じ指が刺された方向を見る。
蟻だ。巨大な蟻の群れがこちらを見ている。
蟻の複眼が不気味に輝く、瞬間奴らは襲い掛かった。
まるでアニメのワンシーン、瞬く間に人間は蹂躙されていった。
呆然とその光景を眺める。
俺は一匹の蟻がこちらを向いていることに気づく、いつから蟻がいたのかは
分からないが、少なからずこちらも音を出していたため気づかれてしまったようだ。
「逃げろっ!!」
俺の一声で、一気に駆け出す。
がむしゃらに走る。振り返れば2~3匹の蟻がこっちに駆け出してくるのが見えた
かなりのスピードだ。このままでは4人とも喰い殺されるだろう。
考えている時間はない。俺は叫ぶ
「このままだと全員捕まる!俺が囮になるから逃げろっ!!」
3人の顔が強張る。
皆が否定の言葉を口にするよりも早く
矢継ぎ早に言葉を続ける。
「この先の十字路で俺は右に曲がるから、お前らは左に曲がれ」
その言葉に、慎吾と美彩は頷く
「分かった...だけど必ず助けに来る!」
だが千絵がだけが否定する。
「ダメだよ!死んじゃうよ!ねぇ私を守ってくれるんでしょ!」
そんな顔するなよ、お前はこんなところで死んではいけない存在なんだよ。
ダメだ時間がない!
「千絵!俺は必ず帰るから、一生のお願いだ」
できる限り優しい声で声をかける。
俺の意思が通じたのだろう、表情が引き締まる。
「分かった...でも死んじゃダメだよ...必ず助けるから」
十字路が近づいてくる。
「今だっ!!」
あらん限りの声で叫び、二手に分かれた。
どれだけ走っただろうか
3人と分かれた後、俺は何とか蟻から逃げ延びていた。
すぐ背後には蟻がいる。追いつかれた瞬間、たちまち食い殺されるだろう。
体は限界、息は切れ、音すら聞こえない
苦しい、苦しい、苦しい
倒れそうな中、ふと千絵の顔が浮かぶ
そうだ俺は約束したんだ、必ず帰ると。
世界に音が戻る。
肺がはち切れそうだ、だが止まることは許されない
脳が酸素を欲して、体に信号を送る。
走れ走れ走れ
ひたすら前を向き走る。
「つかまれー」
後ろから声がする。最初は幻聴だと思ったが違う
慎吾だ、別れた後どこからか車を手に入れたのだろう
車から手が延ばされている。
車が近づき、俺はその手を取った。
車内に飛び込み、俺は安堵で体の力が抜ける。
瞬間、すごい勢いで抱き着かれた。
「じんじゃうがどおもった~」
目を真っ赤にはらした千絵が、もう離さないとばかりに俺を抱きしめる。
俺はそっと抱き返し、声をかけた。
「言ったろ、必ず帰るって」
安心感からか、意識が遠のく
抗うことができず、俺は暗闇に意識を手放した。