丁度一年更新がなくてすいません。大学やバイトをしているとモチベが上がらなくて中々書けなかったんです。これからも亀更新ですので暖かく見守っていただけると幸いです。
季節は巡りもう一度桜吹雪が舞い起こる季節になってきた。窓から入ってくる心地よい暖かい風とカーテンからの木漏れ日を自然の目覚まし時計として私は起床した。どこか既知感を覚える状態を内心疑問に思っていると、やがて去年の今頃を思い出し今までの時間を思い返した。
オールマイトに保護された日の翌日に戸籍やらなんやらの手続きを行いオールマイトの自宅に住み始め、この世界の常識を知らないということで、オールマイトが出身だという雄英高校の校長に事情を話し常識や一般教養を教わった。鼠が校長という訳が分からない状況に最初は困惑したが、それもこの世界の特徴なのだと理解し順応していった。
そういえば、オールマイトとは本名ではなくヒーロー名>という偽名なのだと知って詳しく聞いたところ、この世界のヒーローという職業の者は皆偽名を名乗り活動するらしい。そして、そのオールマイトの本名である八木俊典の苗字から、八木ルシファーに名前がなった。戸籍上はオールマイトの遠い親戚ということになり、帰化する為に苗字を変えたことにするそうだ。
他にもストライクワールドとの違いが多くあったがやはりヒーローというものが職業としてあるのは異質だ。オラゴンが少し口にしていた程度の言葉が世間一般に浸透しているのは世界が違うというのを感じさせた。
そんな風に思い返していたら起床からだいぶ時間が経った事をリビングから漂ってくる魚の匂いが報せた。あまり冷めた朝食は食べたくないので少し早く動こうかと思ったがこの気温なので気分が上がらないのでゆっくりリビングに向う。
リビングに着くと朝食を配膳し終わったガリガリの男がこちらに気づいて煙を発生させ、筋肉隆々の大男に変身した。
「おはようルシファーくん!」
「ふあぁ…。ああ、おはよう。だが、朝からわざわざ個性を使ってまでして挨拶をするな、騒々しい」
そういうと大男はガリガリの状態に戻り、若干落ち込んだ様子になった。
「相変わらずクールだねェ。しかも今日はいつもよりダウナーだし」
「ただでさえ退屈なのに、この暖かさだ。眠くもなるし、気分も下がる。大体貴様もその姿の時はそこまで気分が高いわけでは無いだろう」
「まぁね。あまり元気を出しても吐血するだけだからね。ヒーロー活動を血まみれで行うわけにはいかないし」
「ならさっさと座れ。朝食が冷める」
その言葉を合図に朝食が並べられている食卓に着席した。
「「いただきます」」
食卓に並べられている食事はどれも雑な男飯ではなく、白米、味噌汁、焼き魚、玉子焼き、キュウリといった一般的な和食だ。だが、よくよく見ると玉子焼きは中に野菜が入っていたり、味噌汁の具材も多く、キュウリも自家製の漬物になっている。料理だけでなく食器や部屋の内装にも女子力が溢れており、公の場での雰囲気とほ打って変わって可愛らしくなっている。ただ、オールマイトの食事は圧倒的少ない。これは彼が胃の全摘出をしているからである。これを聞いた際に私はすぐに料理を覚えると決心した。帰宅が遅くなることが他のヒーローより多いので気を使わなければ身体を壊しそうと感じる位の自己犠牲精神による長時間労働をするので、自然と気を遣ってしまう。自身も似たようなことをした覚えがあるので、気の使い方はうまくできるようで料理の他にも家事の覚えは早く、彼の休む姿に少し安心を覚えた。
「そうだ、今日は雄英に挨拶に行ってくるよ」
「ああ、後継探しの為の教師か」
「うん。それと引っ越し挨拶とか諸々の手続きをしなければならないからね」
オールマイトの個性等の事情は凡そ全て聞いているので、彼の母校でありヒーローの育成機関のトップである雄英での後継探しは納得できる。その為に最近雄英付近でありセキュリティー等が万全であるマンションに引っ越した。ただ、雄英付近といっても近すぎると自宅が判明してしまう恐れがあるので、そこそこ距離がある場所である。
「諸々の手続きに時間が掛かるから昼食は向こうで食べるよ。それと、食材がなくなってきたから買い出しを頼めるかな?多めにお金を渡すから余った代金は好きに使っていいよ。お金は貯まるばかりで使う機会がないから遠慮はしなくていいよ」
「態々、逃げ道を塞がなくてもいい。余りは適当にカフェにでも使う。元より今日はカフェ時間を潰す予定だった。何かあったら連絡しろ」
「わかったよ」
「「御馳走様でした」」
**
「はぁ・・・・」
買い物を終えて一度帰宅し昼食を済ませ、当初の予定通りにカフェに来た。想定よりも多く金が余ったので少し高めのカフェでアイスコーヒーと数種類の菓子を嗜んでいる。この超人社会において個性は原則禁止の為飛行が出来ない。そのせいで移動が不便であり時間が掛かるせいもあって無駄に疲れ、カフェまでの移動は高めの店に行き先を変更したこともあり、予定の倍近くかかった。勿論、この程度で体力は疲労しないので飽くまでも精神的な疲れである。この程度で疲労しては少し身体が退化したとしても、元とはいえ天界の大天使長は務まらないのである。
それはそれとして、兎も角疲れを癒す為に菓子に手を付ける。菓子の甘味が口の中に広がり、ほんの少し気分が良くなる。飲み込んだ後も余韻を楽しみながら適当に音楽を聴きながらSNSを見る。あまり分からなかったこの世界特有の言葉も、約1年過ごした今では凡そは理解できるようになった。最近は猫の動画が流行っているのかと思いながらアイスコーヒーを飲んでいると、
Boooooooooooooooom!
『キャァァァァァァァァァァ』
爆発音が聞え、それと同時に火災が付近で発生し共鳴するように悲鳴が上がった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
この瞬間ルシファーの機嫌は一気にマイナスに突入した。
ルシファーの機嫌は最悪に近くなってきたが、その一方で思考は冷静である。それは今までの様々な戦闘経験や統率者の一翼を担っていたことから、周囲を確認し状況を把握する為に自然とその状態になれるようになっている。特に激情を隠しながら計画を立てるのは彼女にとってよくあったことから得意分野である。
周囲の人間が火元から離れるために一斉に避難をするが商店街の中に店があるので道が狭い。パニックになっているのも相俟って避難がうまくいっていない。爆発は数回連続しているのがそれを増長している。少し耳を澄ましてみると内容までは聞き取れないが、少々大きめの声で会話しながらこちらに急ぎ足で来る人間が数人いる。恐らく周辺をパトロールしていたヒーローだ。元の世界ならともかく状況が特殊なれども今は一般人、個性に関する法律がある上、救援が来ている以上手を出すべきではない。
結論は出た。これ以上ここにいるのは無意味だ。だが、このままこのパニックが発生している火の手の中、避難経路は人が多くいるので避難は遅れる。そして一応事件の終息までは見ておきたい。
仕方なく周囲の視線がそれているうちに飛翔して全体が一望でき、周囲に見つかりづらい場所に移動した。状況は泥のようなヴィランが中学生程度の少年を拘束している。そして恐らく拘束されている少年の個性による抵抗により爆発が発生。ヴィラン犯罪の中でも中規模程度の被害状況である。
分析がある程度終了してこれからどうしようか考えているとき、警察とヒーローが到着した。
「子供を人質に?卑劣なァァァァァァ」
ヒーローの一人が先行し攻撃を仕掛けた。
「何だこりゃ、つかめねェ!」
ヒーローの攻撃は通じていない、どころかヒーローの拳がヴィランの身体が沈んでいる。恐らくヴィランの個性は流動的なものでありある程度は物理耐性も持ち合わせているのだろう。
ヒーローが反撃を受け、他のヒーローが加勢しようとするがヴィランの反撃、そして人質の抵抗の大きさにより迂闊に手を出しづらい。それを知ってか知らずか、応援のヒーローが数人来たが個性の制限や消火に手を割いていて手詰まりの状況になっている。
「ダメだ。これ解決できるのは今この場に居ねェぞ!」
「誰か有利な個性の奴を待つしかねェ!」
「それまで被害を抑えよう」
「何、すぐに誰か来るさ。あの子には悪いがもう少し耐えてもらおう」
確かに判断としては間違っていないのだろう。だがそれでは周囲に不安を広げてしまうし、何より人質に聞こえる声で言うものではない。実際、周囲から不安がっている様子が見でとれる。更に体力の低下からか人質の抵抗が小さくなっている。
「ハァ・・・・・」
このままでは人質が死んでしまう。この状況では解決は困難である。仕方ないが多少個性の法律を逸脱しても救援しようとレーザーを数本で泥を削り取ろうと指を構えた時、一般人の中から一人の少年が飛び出してきた。
「!!」
そのあまりにも無謀な光景を見て思わず一瞬固まってしまった。ヒーローの静止が聞こえてくる中、緑髪の少年は駆け足でヴィランがいる方向へと走っていた。ヴィランが少年を認識した時に少年はリュックサックをヴィランの顔面らしき場所へと投げつけた。おそらく目くらましだろう。拙い策だが有効なようでヴィランの動きが一瞬止まり、その隙にヴィランの懐へ辿り着き人質の少年を救出しようとしていた。だが、流動的なものを掴めることはなく、どころかより深い位置に隠されようとしていた。
そのような状況で何か少年達が会話をしている。殆どよく聞こえないが、これだけはハッキリと聞えた。
「君が、助けを求める顔をしていたから!」
涙ながらのその言葉を聞いて全く似ていないはずのこの少年を自身の恩師の姿に重ねて見てしまった。考えるよりも先に身体が動いていること、助けを求める人間に迷わず手を差し伸べることなどある一点を除けば酷似していた。
そしてそのある一点、戦闘力の違いを嘲笑うようにヴィランが激昂して攻撃を仕掛けた。周囲のヒーローが少年を守ろうとするが間に合わないと判断して、レーザーで守ろうとしたが少年の位置が絶妙に攻撃の射線上にあるせいで打てなく思わず舌打ちをしてしまいこのまま少年に攻撃が当たってしまうと思った時、彼は来た。
攻撃で爆煙が起こり惨状が広がっていると思う人間もいる中、煙が晴れたとき思わず安心を覚えた人間は少なくないだろう。間一髪のところで彼が、オールマイトが攻撃を防いでいた。
「本当に情けない」
「オールマイト・・・」
「君に諭しておいて己が実践しないなんて!!」
「プロはいつだって命がけェ!!
DETROIT SMAAAAAASH!!!! 」
竜巻が起こるほどの物凄い風圧に吹き飛ばされそうになりながらも結末を見る為にその現場に目を向ける。竜巻が収まるが、その物凄い光景に啞然としていると幾人かが雨が降ってきたことに気づいた。上昇気流により曇が発生し雨が降ったのだ。拳一発で。
解決した雰囲気が周囲の人間から出てきたとき、彼が拳を上に掲げ、その瞬間周囲の人間から大歓声が湧いた。
**
その後、ヴィランの泥の回収は警察と他のヒーローで行われている中、オールマイトはヒーローインタビューを受け、ギャラリーは興奮が冷めない中、彼を囲んでいる。少々鬱陶しいのではないかと思う光景に眉をひそめるがこれがこの世界の一般的な光景なのだと己を納得させ他の場所に目を向ける。
飛び出した少年はヒーローに怒られている。正直どの口が、と思う部分もあるが飛び出す必要がなかったのも正論である。対照的に人質の少年はヒーローからの絶賛と勧誘を受け、テレビカメラの取材も行われている。晒し者のようで個人的には好かない。どちらもあまり好ましくないが何もしていない人間が関わる必要はない。オールマイトの取材が終わるのも時間が掛かる。事態の収集の完了しているようだし、先に帰ってよいだろう。
最後にもう一度今回の関係者を一瞥し、何処か恩師の面影を漂わせる少年の顔を覚え、静かにビルから飛び去った。
**
遅い。
とにかく遅い。もう日が暮れ始めたのにまだ帰ってこない。流石にもう帰って来ていい時間帯なのにもかかわらず帰ってこない。帰ってこない理由はいつもなら人助けのし過ぎで遅くなることはあるが、今日は違う。あのヘドロ事件時点で活動限界は来ていた。なのにもかかわらず、やせ我慢でヒーローインタビューを受けているが、抜け出すにしても遅い。まさかと思うが度を越えた人助けをまたしているのではないかという考えが頭をよぎる。常人ならあり得ないが、あの男なら十分にあり得る。
心配になった彼女はまたもや周囲の人間の確認をしてから、ベランダから飛び去った。飛んでいるところを目撃され変に騒ぎ立てないように高度を高めにして飛ぶ。捜索範囲は自宅周辺、ヘドロ事件発生周辺、都市部、住宅地の順で探し、ついに見つけた。
明らかに住宅街で出してはいけない速度で彼は疾走している。ヴィランの可能性もあるので、一体何を追っているのか彼の進行方向上を確認するが特にそれらしき人間はいない。一体何を追っているのか疑問に思いつつも後を追うとあるT字路で急停止した。何故そこなのか理由を探すと昼間の飛び出したほうの少年がいた。何かを話しているようなので少し離れた電柱の上から様子を伺う。次の瞬間衝撃をまた受けることになる。
いつも通り明るく見せるためか気さくに話し、更にポーズを取ると活動限界が来たのだろう。トゥルーフォームになってしまい吐血する彼を見て衝撃を受けていないのだ。そしてオールマイト口止めや誤魔化しをしていないのだ。関係者かと考え、一通り伝えられた関係者のリストを頭の中で浮かべ、参照してみるがそもそもあの年代の関係者はいない。
情報を集める為に少しでも会話を聞こうと、オールマイトに気づかれないように気配を殺しつつゆっくりと近づき彼らの死角で聞き耳を立てる。
「少年。礼と訂正、そして提案をしに来たんだ」
「え?」
「君がいなければ、君の身の上を聞いていなければ口先だけのニセ筋となるところだった。ありがとう」
少年が自身を卑下しているが、友人の為にあの場の誰もが動けない中、無個性でありながら助けようと行動できるのは少なくとも称賛できる行動である。勿論、勝算がないなど拙い部分はあるがそれを学生に求めるのは酷である。
オールマイトもそれはわかっているからこそ、話題に挙げずにその勇気ある行動に素直な称賛を送る。
「トップヒーローは学生時から逸話を残している。彼らの多くが話をこう結ぶ。考えるより先に、身体が動いていたと」
その言葉は自分でも理解できる言葉である。反逆や天聖どもと戦う時に仲間の盾に即座になるなど、そういった経験には覚えがある。そしてオールマイトはその言葉の体現者であると言える。正直自分よりも度が過ぎていると感じる。
尚、仲間の盾どころか、正真正銘世界の為に自身の命を迷い無く捨てた
そしてそれはあの少年にも感じる。ただ無謀とかそういった自身のことを勘定に入れていない行動は私やオールマイトと違い無知故である。私達はある程度はリスクを考えている上での行動である。こればかりは経験であるので仕方がない。だが、恐らく彼は経験を積めばいい人材になる。
「君はヒーローになれる」
同じように彼もそう考えたのだろう。ただ、無個性でヒーローになるには難しい。故にオールマイトがどうするのかも予想がついた。これ以上は藪蛇であるし、元々の目的である安否確認は完了しているのでこれ以上は居る意味はない。これから明かされるであろう内容でキャパオーバーするであろうから、ここで更に自分のことまでは蛇足である。
気づかれないように少し離れてから飛んで自宅に帰宅する為に、気配を殺しその場を離れた。
ルシファーのカフェ好き:初代モンストアニメよりカフェらしき場所でくつろいでいたことから。