銀色の月   作:月光カナブン

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第一章 猛る守護者
第1話 厄介事


 商いの街カナン。

 古代の書物にも、乳と蜜が流れる地、と称される豊かな土地だ。

 交通の便も良く交易が盛んなこの街は、ハンターが拠点を構えるのも好都合だった。

 

 ロイドもカナンを拠点に活動するハンターだ。

 

 年は22歳。端正とも言える顔と褐色の肌と銀髪が特徴的な青年だ。

 

 ロイドは腕利きだ。いや、むしろ右利きだ。その腕はカナンの中でも屈指のモノと言える。

 

 彼が住まいとする、町外れの小さな家。

 ロイドが密かに自慢としている蔵書をひもといている時のことだった。珍しい古書、新しく再版された書籍とは違う楽しみは、玄関をノックする音で中断させられた。

 

 ロイドがドアを開けると、壮年のギルドナイトが立っていた。

 

 このギルドナイトは厄介事とともにやって来る。

 

 それがロイドのハンターとしての経験則だった。ギルドナイトの友人は何人かいるが、彼らがロイドを訪ねて来るのは大抵仕事の依頼が目的だからだ。

 

 特に今回訪ねてきたルトガーの仕事は危険度が高い。

 

 過去にフルフルの亜種を二頭同時に相手をしたり、荒ぶる角竜の的にされ追い回されたりもした。

 

 しかし、ロイドはルトガーの仕事は嫌いではなかった。危険と隣り合わせなのはいつものことだし、何よりルトガーは良き友であり師でもあり、そして父の様な存在だ。

 

 ロイドは彼を信頼し慕っていた。

 

「上がってくれ。お茶でも出すよ」

 

 ロイド達が居間に入ると一つの影が振り返った。それは黒い毛並みのアイルーで、ロイドが雇ったコックだった。

 

「スコット、お茶をいれてくれ」

 

「了解だワン」

 

 ……ワン?

 

 スコットはニャンニャン言いながらキッチンに向かっていった。

 

 どうやら気のせいらしい。

 

「それじゃ、改めて話を聞かせてもらおうか」

 

 ロイドはソファに腰を下ろし、ルトガーに席を勧めた。ソファに座ったルトガーが頷いた。

 

 

 

 事は1ヶ月程前、辺境の村で始まった。

 

 リオレウスらしき竜を村人が目撃した。目撃された場所は村からある程度の距離があり、竜を刺激しなければ害は無いと思われた。

 

 しかし、その数日後、三人分の死体が発見された。そのいずれも黒こげにされていて、元が誰か判別出来ない程だった。

 

 そしてその死体は村からさほど離れていない場所で見つかった。そこは村人達が食物の採集に利用していた丘だった。

 

 竜の縄張りは想像より広かった、もしかしたら村が襲われるかも知れない。村に不安と恐怖が広がった。

 

 知らせを受けたギルドは四人のハンターを派遣したが、二人が行方不明となり、二人がほうほうの体でかろうじて村に生還した。

 ハンターが返り討ちにあった事から、相当危険な相手であることは想像に難く無かった。

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