銀色の月   作:月光カナブン

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第5話 圧倒

 馬車が去ったのを気配で確認した。

 敵の大半は引きつけた。だが、数は少ないが伏兵はまだ残っているだろう。

 ロイド達は技術で劣るが1対多数でなければなんとでもなるだろう。

 今は目の前の者達を片付けよう。

 

 ルトガーは着弾した部位を確かめる。弾は戦闘用のギルドスーツを貫通する事は無かったが、それでも鈍器で殴られたに等しい衝撃と痛みがあった。もっとも竜の一撃と比べればかゆいものだ。

 ルトガーは倒れた者に言った。

 

「おいおい、わざわざ急所は外してやったんだ。そんな所で寝てると風邪引くぞ」

 

 ルトガーの言葉に反応して倒れていた人影が起きあがる。

 

「オッサンあとで泣いても知らないぜ」

 

「俺を呼ぶときはダンディ、もしくはハンサムなオジサンって言いな」

 

 ルトガーは不敵に笑いながら再び銃を構える。

 相対する一団が身構える。

 

「おっと、弾切れだ」

 

 ルトガーの緊張感の無い声。それに反応し、一団の攻撃を再開した。

 ある者は飛びかかり、ある者はボウガンで援護する。

 ルトガーは飛来する弾を横飛びにかわし、手に持ったボウガンを今度こそ撃ち尽くす。

 ルトガーの放った弾は、相手のボウガンの銃身に着弾し、ねじ曲げた。

 この銃身で引き金を引けば暴発して自滅するだけだ。

 

 振り下ろされる剣を身を捌いてかわし、勢いあまった男の首に銃床を叩きつけた。力は加減したがたまらず男は崩れ落ちた。

 ルトガーが駆ける。踊りかかる男達をかいくぐり、ボウガンを持った男達へ接近する。

 ボウガンを破壊された男達は腰から短刀を引き抜いたが、それを構えるより先に、ルトガーの拳が放たれる。

 一人目を正拳で沈め、二人目の胸板を横蹴りで叩き割る。弧を描いた爪先が三人目の脇腹を捉えた。

 背後に殺気。

 ルトガーは後ろも見ずにかかとを跳ね上げる。剣を振りかぶった男は顎を強打され目をむいて倒れた。

 ここまでに十秒とかかっていない。

 

「悪いな。ちょっと本気だし過ぎたかな?」

 

 ルトガーは倒れた五人を見ながら言った。

 一瞬で仲間を半分に減らされた男達に焦りが見えた。

 剣を構えてルトガーを包囲する様にじりじりと間合いを詰める。

 

「そう緊張するなよ。気を張りすぎると、あるはずの勝機も見逃すぞ」

 

 悠然と佇むルトガーは肩をすくめた。無防備なルトガー目掛け、男達は飛び掛った。

 五本の剣はそれぞれの軌道を描き、空を切る。

 ルトガーは後ろに飛びながら身を捻り剣戟を避けると。身体を回転させ木の幹に着地。同時に幹を蹴り再び宙を舞う。

 眼下にはたたらを振む男達。ルトガーの両手のボウガンが火を噴き、残った男達を地に沈めた。

 

「だらしない奴らだ。十人でかかって来てもオジサンに勝てないのか?」

 

 倒れた男達の中で意識のある者が呻きを上げた。

 

「くっ、最初の弾切れはペテンだったが、最後の銃撃はいつリロードしたんだ?」

 

 ルトガーは肩をすくめた。

 

「自分のボウガンのリロードくらいまばたきしてる間に出来るさ。五人倒してお前達が怯んだ瞬間に既に弾はリロードされていたのさ」

 

「化け物め……」

 

 そう言って男は意識を失った。

 ルトガーはまだ意識のある者を見つけ回復薬を渡した。

 

「この辺りはランポスやイーオスが出るからな。仲間が回復するまで見張っておけ」

 

「俺達が何者か聞かないのか?」

 

「お前達が隠密なのは想像はつく。誰の命でうごいているのかもな。それだけわかっていれば聞くことなど無い」

 

 ルトガーは馬車に追いつくべく走る。

 なだらかな傾斜とはいえ登り坂を駆け上がるのは骨が折れる。

 

「いや、骨より腰が折れそうだな」

 

 ふとルトガーは足を止めた。周りは生い茂った木に囲まれている。

 揺れる小枝のざわめき。不自然な程の静寂。

 ルトガーの頭上を黒い影が翔た。

 

「あの飛影は火竜。しかし、あの色は……。そうか、銀色の月と対をなす者か」

 

 不快な感覚が身にしみる。かすかな不安。これは殺気か。

 聞こえてくる風を切る音。

 

「っ!」

 

 ルトガーは顔を庇う様に腕を上げる。

 その手は飛来したナイフを摘みとっていた。

 

「シーマか、出てきたらどうだ?」

 

 ルトガーがナイフが飛んできた方に向かって言うと、藪の中から一人の男が現れた。

 

「やはりバレているか」

 

 三十歳前後で整った顔つきだが、鋭い目つきと険しさに荒々しい印象を受ける。

 

「さすがだな。あのリオソウルを倒したらしいな」

 

「お前が誰の命を受けて動いているのかは大体想像はついている。何故あの幼竜を狙うかもな」

 

「わかっているなら何故幼竜を守る? 邪竜の封印を強化するにはあの竜が必要だ」

 

 ルトガーは首を振る。

 

「それは知っている。だが俺も、ギルドマネージャーを始めとする竜人達も保身を続けるのに疲れたんだよ。だからティアは、銀色の月は邪竜を倒すために使う」

 

「バカな、危険すぎる。成功すれば災厄の影に怯える事はなくなるが、それが出来ないから今も封印を施しているんだぞ」

 

「ここで議論しても仕方ない。通らせてもらう」

 

 ルトガーがギルドセーバーを抜く。

 

「俺の役目はお前の足止めだ、簡単には通さない」

 

 シーマも槍を抜き、構えた。

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