「ルトガー、その四人のハンターはどれほどの腕だったんだ?」
「四人の中に俺の知ってる奴がいた。並みの飛竜なら彼一人で倒せるはずだ。他の連中は知らないが、似たような腕前だっただろうな」
「その彼は?」
「行方不明だ。生還した者の話では、仲間を逃がすため竜の気を引いて戦ったらしい。相手の竜はリオソウルだった。あれほど強力な個体は見たことが無いとも言っていたな」
右利き、いや腕利きのハンターが四人がかりで勝てない相手、ロイドは少し興味を持った。
その時、キッチンから茶菓子の皿を持った赤い影が現れた。燃え盛る炎の化身、リオレウス、などでは無い。ロイドの雇ったアイルーのうち一匹、ヨシツネだ。
「マスター、お茶請けを持って来たニャゴ」
「ありがとうニャゴ」
しまった。語尾がうつってしまった。
ヨシツネは机の上にクッキーを盛った皿を置くと、ニャゴニャゴ言いながらキッチンへ帰っていった。
「この仕事受けるが、他のメンバーは誰だ?」
「まず俺だ」
ルトガーが不敵に言った。
やっぱり。
この男はギルドナイトのクセに対人戦と同じくらいに対竜戦を得意としていた。角竜と戦った時もロイドを囮にし自分はボウガンをぶっ放していたのだ。たまにルトガーが狙われる事があったが角竜の突進をことごとくかわしまくり翻弄していた。その様は闘牛だった。
「そしてアーシア・セイクリッド。以上だ」
アーシア・セイクリッドはロイドの親友だ。
その実力はロイドもよく知っている。身を以て知っている。かなりの右利き、じゃなくて腕利きなので異存は無い。
ちなみにルトガーは両利きだ。
「三人で色々な竜と、フルフルとかフルフルとかフルフルと戦ったな」
「この面子だと負ける気がしないからな。っていうか老山竜と戦った時、俺だけ踏まれそうにもなったな」
過去に思いを馳せたロイドは、ペラペラになった自分を想像していた。
食器がぶつかり合う音ともに紺色のアイルーが居間に入ってきた。アップルだ。
「親方様、冷えたアールグレイを持ってきたでござるよ」
アップルがフラフラ歩いてくる。
「それは客に対して失礼でごさるよ」
冷えたアールグレイを客に出すのは礼儀に反する行為である。
アップルが何もないところで転んだ。紅茶のカップが放物線を描いて華麗に宙を舞い、中身がルトガーに降り注いだ。
「ロイド、クリーニング代はお前の報酬から差し引いておく」
ロイドは居間の床を掘って逃亡を図る猫を捕獲しながら了解した。
ロイドが席に戻ると机の上でスコットとヨシツネがロイドの分のクッキーを貪るように食い荒らしていた。ロイドは懐からマタタビを取り出すと脇に投げた。それに飛びつく猫達を尻目にルトガーがソファから立ち上がる。
「出発は明日の早朝だ。街の門に馬車を用意した。質問は?」
「無い」
「それでは、また明日な」
ルトガーの皿のクッキーが姿を消していた。
「これもらっていくぞ」
袋に入れたクッキーを持ったルトガーが言った。いつの間に……。
「どうぞ」
ロイドは手にクッキーを持ち、頭から紅茶を被ったギルドナイトを見送った。