村長の屋敷からは馬に乗って出発した。リオソウルが住処にしている地点は徒歩で向かうには離れすぎているらしい。
ロイド達の他に何人かの村の若者が荷物の運搬のため同行した。その中にソフィの姿もあった。彼女は先頭を進んでいく。どうやら案内役の様だ。
村を出てしばらく進むとソフィが馬を止めた。
「ここで死体が発見されたんです」
なるほど、ソフィが指さした地面は少し窪んでいる。火球が空から叩きつられたのだろう。
「妙な事に、発見された人達の身元が未だに分からないのです。セレム村以外にもこの辺りには小さな集落が幾つかあるんですがそこも心当たりは無いらしくて……。でも友達やその家族が無事だから少し安心できるかな」
ルトガーが馬から下りクレーター状になっている地面に屈みこんだ。表面の土を少し払って何やら思案している様子だ。
「何かあったのか?」
「いや、何でもない」
ロイドの外套の端で手を拭いながらルトガーが答えた。
「ルトガー、クリーニング代はあんたの報酬から差し引かせてもらう」
そう言ったのはアーシアだった。
「俺のセリフ……」
ソフィと村人が失笑していた。ロイドは何だかアンニュイな気分になった。
そこからは強行軍で進んだ。馬達は平野を優雅に駆け、颯爽と通り過ぎて行った。
馬の上でロイドが感嘆の声をあげ、アーシアはスカートがはだける、とか言っていた。アーシアは赤いスカートをはいていたがその下は健全な男子の期待を裏切る素敵なハーフパンツに包まれている。けしからん事だ。
キャンプを設営する地点に着いたのは昼前だった。ロイドは尻が痛いと言い、アーシアは脚がつりそうで、ルトガーは腰を押さえていた。普段から馬に乗っているのか村人達はピンピンしていた。村人は三人が悶えている間に手際よくキャンプを設営していた。
「じゃあ私達はここで待機してますから」
設営を終えたソフィが言った。
「大丈夫か?」
「はい、こう見えても結構強いんですよ私達」
ロイドの問いにソフィは自信満々で答えた。
「それに私達がいなかったら帰りが大変ですし、万が一の時は馬で逃げられます。私達の心配はせずに仕事に励んで下さい」
そう言われてはロイドは何も言え無い。自分達は自分達の仕事をするだけだ。
ロイドは地図を受け取るとキャンプをあとにした。
ロイドは地図を開きリオソウルの巣を確認した。赤い点で印された場所、岩の壁に囲まれた空間に巣はあるようだ。地図を横切る太い帯が竜脈らしく、赤い点は帯の中心にあった。
「行くか」
ロイドは先頭をきって歩きだした。
ロイドとアーシアの荷物は少ないが、ガンナーのルトガーは弾の入ったケースを背負っていた。見た目こそ大きくはないが、その重量はロイドの鬼斬破より重い。加えてボウガン、シルバースパルタカスも担いでいる。
防具でもあるギルドナイトの制服は軽いが肩への負担は尋常ではない、はずなのだがルトガーが涼しい顔で歩いていた。
アーシアの方は赤いロングスカートとノースリーブのタートルネックの服、籠手とブーツという出で立ちだ。
スカートはロイドの外套と同じく赤いフルフル、フルフレアを素材としている。絶縁性と耐熱性に優れ、弾力があるため衝撃にも強い。ただ通気性はあまり良くないため、アーシアのスカートには腰までスリットがある。が、スカートの下にはハーフパンツというけしからんものがあるため、ロイドは心踊るチラリズムを堪能出来ない。
タートルネックは訓練所からの贈り物。籠手とブーツはリオレウスから作られており、見た目より凶悪な性能を持っている。腰に差された剣、オデッセイも美しさとは裏腹に切れ味は鋭く、水属性の力を持つ強力な業物だ。
「ソフィ達はどうして危険を犯して俺達を待ってくれるんだろう」
爽やかな風がロイド髪を撫でた。
「恐らくハンターが負傷したことに負い目を感じているんだろう。あの速い馬がいれば四人が逃げる事も出来たとな」
起伏の急な丘を登った先には岩場があった。ルトガーが空を仰いだ。晴れ渡った空に鳥が戯れている。
強い陽射しにアーシアが目を細めた。
「あの村長やソフィなら考えそうな事だよね。私達はそれに応えよう。生きて帰る事で」
一陣の風が吹き付けた。空には鳥の戯れるさえずりはもう無い。巨大な影が日光を遮った。
青い翼が羽ばたく音が響く。
見つめる瞳を焼くような蒼い炎、リオソウル。大地を揺らしそれは着地した。
「さぁ、役者は揃った。そろそろ始めようか」
ロイドは愛刀を引き抜いた。