アーシアは居間を出て、外に出た。
少しの間、一人になりたかった。
行き交う人の群をさけ、人気のない公園に着くとベンチに腰掛けた。
カダス、故郷。
そこにいるのは家族。母、父、そして姉のクラウディア。
そこにあるのは、災厄を倒すための武器、滅竜剣。
ロイド達は災厄を倒す気でいる。アーシアもそのつもりだ。
可愛いティアの為にもアーシアは戦うだろう。
ロイドは無茶ばかりするから放っておけない。彼が危険な戦いに挑むなら、自分は彼の隣で剣を振るおう。
彼らとなら、どこへでも行ける、何とでも戦える。そう思っている。
何も恐れるものはないと。
でも、今恐れている。故郷を、家族との再会を。
何故。
アーシアがクラウディアの生き甲斐を奪ったからか。努力を否定してしまったからか。
しかし、クラウディアがアーシアを恨む事はない。アーシアの行為は姉を気遣ってのものだったから。
頭ではわかっている。しかし、心は理解するより、怯える。
アーシアは許されていない。クラウディアにではない。他でもないアーシア自身が許さない。
右目の眼帯に触れる。
自らの体に竜の力を宿す技、降竜儀。
この力はロイドの助けとなる。仲間を守る力になる。
この力は今のアーシアに必要なもの。
「だけど、この力は姉様が……」
クラウディアが欲していたもの。
そしてアーシアが奪うように手にした力。
クラウディアは今どうしているだろう。
風の噂で聞いた古竜。その古竜はカダス近辺に現れ、ある人物に追い払われた。
そんな事が出来るのはクラウディアしか考えられない。他の候補は思いつかないし、知らない。
「元気にしてるかな……。身体は大丈夫かな……。会いたいな……。でも、私は……」
勇気が足りない。弱さに打ち勝つことが出来ない。
今はまだ心の弱さに振り回されるだけ。
ロイド達と行動をともにすればカダスに向かうことになる。それが嫌ならロイド達と別れればいい。だが、そんな事は出来るはずもない。彼らが好きだから。彼のそばにいたいから。
故に、アーシアは自らの意志で、故郷へ帰ることになる。夢の中で帰っていた場所に。
「姉様、私に会う勇気が無かったら、怯える心が残っていたら。その時は、ごめんなさい……」
夢の中でも会う勇気が無い。
心の中で何度、姉に謝罪しただろう。
足りないものは勇気。
捨てなければならないのは怯え。
欲しいものは、……わからない。
アーシアに出来るのは、心の弱さを隠すこと。
ロイド達がアーシアの心の弱さに気付いている事は、知っている。
だけど、余計な心配はかけられない。
だから、アーシアは弱さを秘める。
だから、
「お願い。強く心をもって。強く在ろう」
自分に言い聞かせた。