銀色の月   作:月光カナブン

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第14話 恐れるもの

 アーシアは居間を出て、外に出た。

 

 少しの間、一人になりたかった。

 行き交う人の群をさけ、人気のない公園に着くとベンチに腰掛けた。

 

 カダス、故郷。

 そこにいるのは家族。母、父、そして姉のクラウディア。

 そこにあるのは、災厄を倒すための武器、滅竜剣。

 

 ロイド達は災厄を倒す気でいる。アーシアもそのつもりだ。

 可愛いティアの為にもアーシアは戦うだろう。

 ロイドは無茶ばかりするから放っておけない。彼が危険な戦いに挑むなら、自分は彼の隣で剣を振るおう。

 彼らとなら、どこへでも行ける、何とでも戦える。そう思っている。

 何も恐れるものはないと。

 

 でも、今恐れている。故郷を、家族との再会を。

 何故。

 アーシアがクラウディアの生き甲斐を奪ったからか。努力を否定してしまったからか。

 

 しかし、クラウディアがアーシアを恨む事はない。アーシアの行為は姉を気遣ってのものだったから。

 

 頭ではわかっている。しかし、心は理解するより、怯える。

 アーシアは許されていない。クラウディアにではない。他でもないアーシア自身が許さない。

 

 右目の眼帯に触れる。

 自らの体に竜の力を宿す技、降竜儀。

 この力はロイドの助けとなる。仲間を守る力になる。

 この力は今のアーシアに必要なもの。

 

「だけど、この力は姉様が……」

 

 クラウディアが欲していたもの。

 そしてアーシアが奪うように手にした力。

 

 クラウディアは今どうしているだろう。

 風の噂で聞いた古竜。その古竜はカダス近辺に現れ、ある人物に追い払われた。

 そんな事が出来るのはクラウディアしか考えられない。他の候補は思いつかないし、知らない。

 

「元気にしてるかな……。身体は大丈夫かな……。会いたいな……。でも、私は……」

 

 勇気が足りない。弱さに打ち勝つことが出来ない。

 今はまだ心の弱さに振り回されるだけ。

 ロイド達と行動をともにすればカダスに向かうことになる。それが嫌ならロイド達と別れればいい。だが、そんな事は出来るはずもない。彼らが好きだから。彼のそばにいたいから。

 

 故に、アーシアは自らの意志で、故郷へ帰ることになる。夢の中で帰っていた場所に。

 

「姉様、私に会う勇気が無かったら、怯える心が残っていたら。その時は、ごめんなさい……」

 

 夢の中でも会う勇気が無い。

 心の中で何度、姉に謝罪しただろう。

 足りないものは勇気。

 捨てなければならないのは怯え。

 欲しいものは、……わからない。

 アーシアに出来るのは、心の弱さを隠すこと。

 ロイド達がアーシアの心の弱さに気付いている事は、知っている。

 だけど、余計な心配はかけられない。

 だから、アーシアは弱さを秘める。

 だから、

 

「お願い。強く心をもって。強く在ろう」

 

 自分に言い聞かせた。

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