ポケットモンスター 『移動カフェ"安らぎ"』 作:sisid
クロスオーバー スーパーダンガンロンパ2 になります。
いい匂いがする。それでいて落ち着くような…
むくりと身体を起こすのはリシテアだった。
「おはようございます」
「サナ」
ーーそうだ。私は、今はこの人達と一緒にいるんだ。
温かいカフェオレと、ワンパチの顔が描かれたパンケーキ。
「朝ご飯?」
「ええ。甘い物は頭を働かせてくれますから、どうぞ」
「サァナ」
「サナリスはこれ」
それは美味しくて、柔らかくて、甘い。そして何より温もりのある食事だった。
思わず涙が出そうな初めての朝ご飯でした。
ーーリシテアの日記ーー
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ここはとある家の中。そこには以前アンペルが訪れた街で、ナナミが住んでいる。
ナナミは、深い眠りの中でうなされていた。
「ふっ…あう…!!はっ…!!ハァ…ハァ……」
怖い夢を、たまに見る。紛れもなく私なのに違うというか…周りはみんな知ってるのに知らないというか…
だけど大切な人達であることに変わりはなくて、その人達の為に一生懸命頑張ってた。
目の前から槍が飛んできてそれが腕を掠めて行く。そしてそれは次第に…
「ニャオ?」
「マスカーニャ、おはよう」
唯一いないのは、この子。この子がいない。そんな夢。
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「どうしたんだナナミ?また寝不足か?」
「うん……ゲームのしすぎで」
「相変わらずだな…」
でも本当はそれだけじゃない。でも話したくないような怖い夢。その夢の中にはヒナタくんもいた…と思う。
ただ、髪が凄く長かった。そしてなんか希望を失っていたかのような希望だった。
意味がわからないかもだけど、一番の分かりやすい表現をした…つもり。
『それは違うよ』
ゲームの主人公がそう言って、相手の矛盾を打ち抜いて行く。寝そうになりながらもゲームを続けてしまうのは、綺麗なエンディングと、クリア後の特典が欲しいから。
そんなどうしようもない私を、いつも隣で見てくれて、色々なことを教えてくれる人がいる。
そんな人が『ツマラナイ』って言ってた。そんな夢。
「それは、前世の記憶だったりしませんか」
「え…?」
またこの街に来ていた移動カフェ"安らぎ"の店主、アンペルさんが、私の話を信じてそう答えてくれた。
最初は、この人なら心のモヤモヤを払ってくれそうだなって思ったから話しただけなんだけど…まさかゲームのようなことを言ってくるとは。
「前世…興味深い話です。どうしてそう結論付けたのですか、先生」
キッチンカーの外からピョコッと顔を出したのはリシテアだった。
「あれ…?君は、この前はここにいなかった…よね?」
「あ、はい。リシテアと言います。このカフェの見習い…です。よろしくお願いします」
「あ、どうもご親切に。…ナナミ チアキ です。よろしくお願いしまーす」
「はい。…で、理由を教えてください」
「幻のポケモンにアルセウスという、宇宙を創造した神というのがいるのですが」
アンペルはアルセウスの顔が描かれたラテアートをナナミに渡した。
「これが、アルセウス…」
「サナ!」
「おや、サナリスもラテアートは上手くできるようになりましたね」
「おお、これはサナリスの顔…」
「サナッ!」
胸を張るサナリスに対して、誰が飲むの?と呟くリシテア。サナリスは自分用に作ったらしく、写真に収めた後飲み始めた。するとサナリスはリシテアの腕を引っ張ってキッチンカーの中に入って行く。
「サナリスが誕生したのも、そのアルセウスのおかげですね。宇宙が無ければ、サナリスはいないですから」
話を戻しますと言うと、アンペルは休憩時間と書かれた立て札を置いて、キッチンカーから出た。
「アルセウスは分身を生み出すことができ、本体を見ることは叶わないとされています。なぜならその本体は、時間と空間を超越した領域にいると言われているからです」
「ほー…それはまさに幻ですなあ」
「そうでしょう?そこで何をしてるかと言うと、あらゆる宇宙を観測しているんだそうで…」
「あらゆる宇宙?…マルチバースってこと?」
「そうですね。もしかしたらそこで生み出されたチアキさんの世界には、ポケモンがいなかったのかも」
突拍子もない、あまりにも現実性もない話。
うーん…と空を見上げながら唸るナナミの裏では、リシテアがサナリスと一緒にラテアートの練習をしていた。
「でも、凄い面白い話ですね。本当にゲームみたい」
「ええ。そういうゲームみたいですね。ですけど、そう考えると想像が膨らみませんか」
「想像?」
「ええ。貴方のいう、その怖い夢の先にはどんな出来事があるのか…それが幸でも不幸でも…想像してみるのは楽しいと思いませんか?」
「確かに…ゲームもやりながら色々な展開を想像しちゃうなあ」
もし、あの世界が私の前世なら…
きっと私はあの世界では今ぐらいの歳で永い眠りについていると思う。
でもそこにいたヒナタくんはきっと…泣いてくれてたんじゃないかな?だとしたら…
「あの世界が前世だったとして、私が主人公だったとしたら、きっとクリア特典を目指してたんだろうな。いや、イベントや隠し要素、何から何までクリアした後の、コンプリート特典を目指してたのかも。きっとそれが、私の望む物だったのかもしれない」
「ほう。それはなんでしょう?」
「ふっふっふ…それはアンペル先生の想像にお任せしましょう」
「おや、これは上手い返し方をされましたね」
「むぅ〜!全然出来なーい!」
「サァナ!?」
突然大声をあげて投げやりになるリシテアにびっくりするサナリスを見て、二人は笑った。そんな笑い声が聞こえる中、遠いところから違う声が聞こえる。
「おーいナナミー!ちょっといいかー!」
「あ、ヒナタくん…にコマエダくんも」
「今からヒナタクンとポケモン勝負をしようと思ってて、ジャッジしてくれる人を探してたんだよ!まさかこんなすぐに見つかるとは思わなかったなあ!やっぱりボクってツイてるよ!」
「ほうほう。いいよ。アンペルさん、それじゃあまた」
「はい。またいつか、巡り逢いましょう」
アンペルは立て札を元に戻し、リシテアにコツを伝授する。人が来るまで教えようと思っていたら、すぐに客がやってきた。
「マヒルさんに、ヒヨコさん。こんにちは」
「こんにちは」
「アンペルおにぃ!こんにちはだよー!マヒルおねぇ、どれにするー?」
「そうね…気になってるのは、このワンパチの顔をしてるフレンチトーストかな」
「じゃあそれ二つ!」
「かしこまりました。リシテアさん、しっかり見ててください」
「はいっ!」
「よお、お前らもこのカフェ好きなのかよ?」
「うわっ、クズリュウおにぃ!ペコヤマおねぇ!」
「うわとはなんだ…」
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「ふんふん。ウインディ戦闘不能だね…コマエダくんの勝利だよ」
「くそぉ、コマエダずるいぞ〜」
「いやあ、まさかトゲキッスが運良く"でんじは"を当ててくれて、運良く"エアスラッシュ"でウインディが怯んでくれるなんてね…」
「いや絶対狙っただろ!"だいもんじ"で火傷を負わせた時はよしっ!って思ったんだけどなあ」
「コマエダくんの幸運は、不幸になった分返ってくるから…」
「でも"エアスラッシュ"のひるみが5回連続だったのは本当に偶然だよ?」
「何言ってんだ…」
「だって普通そこまで耐えないよ。心配させまいと踏ん張ってたんだよ、ヒナタクンのウインディは」
ウインディが申し訳なさそうにヒナタくんを見てる。…でもヒナタくんは優しく身体を撫でてる。
ーーやっぱりコンプリート特典を手に入れたくて頑張ってたんだろうなあ。きっと、どうにかしてクリアしたんじゃないかな?あ、もしかしたら主人公はヒナタくんなのかも。
「あれ?ナナミさん、今日はご機嫌な感じだね?」
「え?そう?」
「ああ。俺もそう思う。何かあったのか?」
「うーん…前世の私を想像してたんだ」
「前世?」
「うん。前世で私たちが会ってたら…って想像」
「それは興味深いね。それで、ナナミさんはその想像をしてて、どう思ったの?」
「コンプリート特典欲しいなって」
「あれ?ゲームの話になってる?」
「コマエダ、これがナナミの通常運転だぞ。で?そのコンプリート特典はなんなんだ?」
「それはね…」
全部終わった後もう一度会えるの。
「……それは確かに欲しい特典だね。ね、ヒナタくん?」
「ああ。間違いないな」
「そうでしょ?だからこの世界でも私はオールクリア目指すぞ〜。ヒナタくんも、コマエダくんも手伝ってね」
「何をだよ…」
「ヒナタクン、これがナナミさんの通常運転だよ」
…まあ、その通りだよな。