ポケットモンスター 『移動カフェ"安らぎ"』   作:sisid

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クロスオーバー 正反対な君と僕
になります。

ちなみに、タイラズマです。


第二十三話 心から、そう思ったんだよ。

 卒業式の時に、思わずこれからも会えるかって言ってしまった。それまで何か吹っ切れたかのような顔をしていた彼女だったけど、びっくりしたのかその場で発狂?してた。

 

 まあその後クラスの人達とカラオケに行ったりしたから、なんかすごく気まずかったけど。

 

 そして大学。離れ離れになった今でも、そいつとは会う。

 とはいっても、こうして夏休みとかに実家に帰るときとかで……

 

「……あっ」

 

 キッチンカーが珍しくあるな。しかもカフェ……あいつ好きそうだな。

 そう思って見ていたら、本当にそこに彼女がいた。声をかけようかと思ったけど、そこには他にも人がいて、仲が良さそうに見えた。

 

 それで思わず早足でその場から離れてしまった。

 

「……いや、まあそうだよな」

 

 アズマは人気者だから。俺なんかよりもずっと。すぐ友達が出来て、そいつらと遊んで、そしてどんどん俺や高校の奴らと縁が切れていく。

 アズマに限った話じゃなくて、みんなそうだろ。

 

 俺だけが、今も過去に縛られている。

 

 ……いや、こんなのは俺の悪い癖の、いつもの後付けか。

 

 アズマを見ているとそういう嫌いな自分が出てくる。何かの気持ちに気付かないように見ないことを徹底している。

 

 そんな自分と、そろそろ縁を切るべきだろ。

 

「いらっしゃいませ」

「サナ!」

 

 いねえじゃん。

 

「あの、さっきいた人達って……」

「先程どこかへ行きましたよ。お知り合いでもいたのですか?」

「いや……高校の時の友人がいて」

「ああ、知らない人と遊んでるところを見ると、声かけづらいですよねえ」

 

ーー俺、だっさ。

 

 店主の言ってることはその通りだと思う。けど、そうじゃない。これが全然違う人ならなんとも思ってない。

 

 あいつだから。

 

 これは後付けの理由なんかじゃなく。

 

 ずっと俺の大切な居場所で……

 

「サナ?」

「……可愛いですね」

 

 俯く俺を気にかけてくれたのか、エプロン姿の色違いのサーナイトが覗き込むように俺を見ていて、そしたら自然と声に出た。

 

 こんな簡単に言えるのにあいつの前では簡単に言えない。

 

 まるで、コップから溢れそうで溢れない水のような……表面張力で保たれているような。

 

「サーナ」

「ふむ。そうですか」

「なんですか?」

「いえ、大人だと思いまして」

「え?俺が……大人?」

「はい」

 

 何を言っているんだ?と思わず怪訝な目で店主を見てしまった。すると、その人はクスッと微笑んだ。

 

「子供なら、難しく考えずに好奇心で色んなものに手を出します。他人の気持ちは二の次ですから。けれど、貴方は……他人の気持ちを優先している」

「俺は……そんな」

「ふふっ、少なくとも僕にはそう見えました。ですので、たまには子供みたいに自分を優先して見ても良いのでは?いえ……そうしようとしたから、ここにいるんですね」

 

 何もかもを見透かされているような気がするのに、嫌悪を抱くことはなかった。むしろ、理解してくれていることに、認めてくれていることに心が落ち着いていた。

 

「サナ、サナサナ」

「ん……なに?」

「ご注文は?と言ってます」

「あ……じゃあ、『ニャビーのパンケーキ』で」

「かしこまりました。ニャビーがお好きなのですか?」

「いや、これは……」

 

 受験勉強をアズマとして、その帰りの時に出会った野生のポケモンがニャビーだったってだけ。なんとなく投げたモンスターボールでそのまま家族になったんだよな。

 

 けど、ひどく俺に懐いてて、アズマが笑ってたっけ。

 

『たまには私にも様子を見させてよ。私、ニャビー好きなんだよね』

 

「はい。俺の好きなポケモンです」

「いい笑顔ですね」

「初めて言われたかも」

「おや、そうですか?それなら、お友達に連絡してみては?きっといい笑顔だと言われますよ」

 

 連絡……連絡か。

 

「ありがとう、ございます。えっと……」

「アンペルと言います。こちらはサナリス」

「サナ!」

「貴方の気持ちが報われることを祈っています。それでは、またどこかで巡り逢いましょう」

 

 どこまでも、神秘的な人だな。

 

▣◙▣◙▣◙▣◙▣◙▣◙▣◙▣◙▣◙▣◙▣◙▣◙▣

 

 アズマが人気者だとか、大学行ったらみんなとどんどん縁がなんだとか。そうじゃない。

 

 ずっと、表面張力で繋いでいたような日々だった。

 

 誰かを疑う癖はとっくにの昔に捨てたくせに、自発的に動かない、動けない自分はずっとそのままだった。

 

 もう、いいだろ。関係を崩したくないだとか、今が一番心地いいとか、何かと理由をつけて、逃げるのは。

 もう、いいだろ。溢れ出して。

 

「タ、タイラ!」

「よお」

「よお。……じゃなくて、えっ、珍しくない!?タイラから誘うなんて……」

「うん、まあ色々と整理がついて」

 

 急に呼び出したからか、呼吸が乱れていた。それに気づいて乱れたクリーム色の髪の毛を触ったり、服とかも確認したり……

 

「……可愛いな」

「えっ、かっ……!?ど、どうした?」

「いや、言いたくなって」

「〜〜〜っ」

 

 月明かりが俺らを照らす。その先に映ったアズマの表情は、ひどく紅潮してて、口元が緩んでて、目があったと思ったら咄嗟に視線をずらして……

 

「なあ、覚えてる?ニャビーのこと……」

「へっ?あ、うん!もちろん!」

「たまに見たいって言ってたよな。実家にも連れてきてるから、俺んちに来ない?」

「タ、タイラんち!?」

「うん。嫌か?」

「……嫌、じゃないけど」

「じゃあ行こう」

 

 手を掴んで引っ張っていく。自分らしくなくて多分、俺も今ほのおタイプかってぐらい赤くなってる。でも、もう止まらなくて。

 

 キモくないかとか、キザっぽくないかとか、俺がアズマ側の世界にいるのはやっぱり変じゃないかとか、ネガティブな自分がこうしてると出てくるけれど、それも込みで自分を認めていきたい。

 

 そう思えるようになったのは、ずっといてくれたーー

 

「ほ、ほんと、今日どうした!?」

「もっと一緒にいたいって気持ちがあったんだよ」

「えっ……」

「俺、ずっとそういう気持ちがあったんだと思う。気付くのが遅くなったけど」

 

 これからも、この先も、どれだけ歳を重ねても、関係が変わっても、俺とは正反対の君と一緒にいたいって。

 

 心から、そう思ったんだよ。

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