ポケットモンスター 『移動カフェ"安らぎ"』   作:sisid

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クロスオーバー アオのハコ です。

雛がメインです。


第二十五話 気付かせてやる。

 部活も恋愛も、兎にも角にも逃げずに努力をする。それが私。

 

 テッカニンのうるさい季節がやってきた。それはつまり体育館内の熱気が凄いということ。それを考えるだけでも嫌だけど、だからって朝練をサボるわけにもいかないから、私はいつも通り、二つ団子に髪を結って家を出る。

 

 体育館に入れば、見知った顔でいっぱいだ。まだ朝練が始まったわけじゃ無いのに、準備が多くて忙しい。

 

 ーーはぁ〜やれやれ。早く練習をさせてくれんかねえ。

 

 とか思いながら新体操の準備をしていると、目の前に茶髪の女性と目が合った。

 

「チョウノさん。おはよう」

「おはようございます。チナツ先輩」

 

 チナツ先輩。私の好きな人の好きな人だ。正直、非の打ち所がなくて困る。なんか凄い性癖はないものか。

 

 ふと視界に私の好きな人……タイキが入ると、その時は大抵チナツ先輩の方を見ている。それを見ると少し心に来るものがある。

 

「……よし、アゲハント」

 

 こういう時は、私の手持ちのアゲハントと一緒に新体操の演技をするのが一番。そして次の高校生ポケモンコンテストで、全国優勝を目指すんだ。

 

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 夕方になるとまだ涼しい。帰ったらまた今日の振り返りをしておこう。夏休みも近いし、大会もすぐだし。

 夏祭りはりんご飴も食べられるし!

 

 帰り道でそんな近い未来のことを想像してワクワクしていると、普段見ないキッチンカーが止まっていた。

 色違いのサーナイトがお客さんに美味しそうなパフェを渡していて、そのせいでお腹がグゥッと鳴いた。

 

「わあ……どれも美味しそう」

 

 ……はっ!いかんいかん。いつの間にか足を運んでいた。りんご飴を夏祭りの日に食べるんだし、今は我慢しないと……大会に影響が出ちゃう。

 

「サナ?」

「いらっしゃいませ……とはまた違うようですね」

「あっ、すみません!買わないのにメニューだけ見ちゃって……」

「いえいえ。それは全然構いませんよ」

 

 落ち着く声色をしていたそのアンペルさんという方が、経営をしているらしい。

 

「アスリートか何かですか?」

「新体操をやっています。小さい頃からしてまして」

「おや、いいですね。ポケモンコンテストと非常に相性が良いと言われている」

「はい。将来はポケモンパフォーマーとしてトライ・ポカロンに出てみたいとも思っています」

「カロス地方のですか。確かに、芸術的ですからね」

「サナ!」

 

 キラキラと輝いた瞳で私を見てくるサナリスちゃんは、どうやら私のパフォーマンスを見てみたいらしい。

 

「部活帰りでお疲れでしょうから、我慢しなさい」

「サナ〜?」

「『えぇ〜?』じゃないの」

「……ふふっ」

「どうされました?」

「いえ、なんでも」

 

 アンペルさんもサナリスちゃんも、お互いのことがこれでもかってぐらいに分かっていそうで、それが凄く見ていて微笑ましかった。

 

「いいですよ、ちょっとだけなら」

「サナ!」

「すみません……」

「いえいえ。私ももうちょっとアゲハントとパフォーマンスしたかったし」

 

 とはいえ、音楽を用意することも出来ないし、制服だし外だしでやれることは少ないけども。

 

 外で見せられるものを見せるだけ見せて、するとアンペルさん達は拍手をしてくれた。

 特にサナリスちゃんはぴょんぴょんと跳ねてるかのように喜んでくれて、いやはや、なんかもっと見せてあげたくなりますなあ。

 

「サナ!」

「ヒュ〜?」

「サァ〜サナ!」

「あ、ポケモンのご飯もあるんですか?」

「ありますが、それとは別で、これはサナリスのお菓子です。ですが、サナリスは仲の良いポケモンにはあげたくなるようで」

 

 アゲハントは嬉しそうにホウエン地方にある名産品、ポロックを食べている。この空気感が、何故だか心地よい。

 サナリスちゃんとアゲハントはすぐ仲良くなって、店じまいなのに色々とお話をしていた。私の話とかしているんだろうか。

 

「アゲハントとはどれぐらいの付き合いなのですか?」

「えーと、生まれた時からです。小さい頃から新体操をやっていたので」

「それはそれは。だから心が通じ合っているのですね」

「アンペルさんとサナリスちゃんはどうなんですか?ペアルックみたいなのをしているので凄く仲がいいのでしょうけど」

「僕達も昔からですね。仲が良いどころか、愛し合っているといえますね」

「愛……」

 

 小っ恥ずかしいことを表情何一つ変えずによく言えるなこの人。

 

「嫌なことも、嬉しいことも、共有して共感して、苦難を乗り越えたらお互い称え合って労って……そんな関係です」

 

 アンペルさんは目を細くしてサナリスちゃんを見ていた。それは……まるで恋人の微笑ましいところを眺めている彼氏さん……そんな感じだった。

 

「……いいですねっ」

「貴女にはいないのですか?」

「私ですか?私は……私にも、います」

 

 けどそれは一方通行になっているけれど。

 

「そうですか。何かに全力で取り組んでいるのを、理解してくれる人は素敵な人です。きっと良い関係を築き上げているのでしょうね」

「はい……けど、私は本当はそれが嫌で」

「嫌?」

「私は……その人が好きなんです」

 

 瞬間、自分が今とんでもない爆弾発言をしたことに気付いて、思わず手で口元を隠した。アンペルさんはそんな私を笑いもせず「どうぞ」というように私を見ていた。

 

 うぅ〜、なんかこの人と喋ってるとなんでも話してしまうな。

 

「えっと……親友から恋人になりたいっていうか」

「いいじゃないですか」

「でも、あいつには好きな人がいて……それが敵う相手ではなくて。きっと、あの時、落ち込んでいたあいつを助けたのも……」

「落ち込んでいた?」

「あ、えっと……この前あいつがやってる部活の大会があって、そこで全然良い成績を残せなくて……あんなに、頑張ってたのに」

「それは、さぞお辛いでしょうね」

「でも、その時私、なんて声をかけたらいいか分からなくて」

 

 ただ椅子に座って、飲料ゼリーを飲んでいるタイキの背中には哀愁があった。数日間は落ち込んでいるようで、目標も全国に行くんじゃなくて、スマッシュの精度を上げるってだけだった。あのバドバカらしくないのは分かるのに、なんて言ったらいいか分からない。

 あいつのことは親友である私ならなんでも分かるはずなのに。

 

「……恋愛と部活が混ざり合って、難しくなってしまったのかもしれませんね」

「え?」

「部活に励む彼が、カッコよく見えて、何も言えなくなることはなんとなく分かりますよ」

 

 アンペルさんは自分のマグカップでココア?を飲みながらそう言った。

 

「故に、もったいない」

「もったいない?」

「ええ。その貴女の好きな人の好きな人は、特別何かを言ったわけではないと思いますよ」

「えっ……じゃあ何を」

「慰めの言葉や、自分が感じたこと……それは伝えたかもしれませんが、特別、この世に残るような名言ではないと思います。貴女にも言えることがあったかと」

 

 ココアを飲み終えたかと思うと、私の方をじっと見た。

 

「友達として意識していた時は、声をかけられたんじゃないですか?」

 

 そう言われて、ドキッとする。言われてみれば……そうかもしれない。

 

「その時は、なんて言うのか……僕には分かりませんが。でも少なくとも、部活を一生懸命頑張っている人は決して一人で頑張っているわけではない。誰か……心の支えになっている人がいるんです。貴女も、そうなのではないですか」

「それは……はい」

 

 多方面から来る重圧に耐えられそうにない時は、何も考えないバカまっすぐなあいつと軽口を叩きたいってそうよく思っていた。

 

「寄り添える人がいる。支えてくれる人がいる。心の拠り所がある。恋愛は一旦おいてみて、部活を共に頑張る同士として、隣にいればいいと思います」

「それで、変わるんでしょうか」

 

 それだといつもと変わらない。そんな気がした。けれど、アンペルさんはそんな私をみて優しく微笑んで、こう答えてくれた。

 

「少なくとも、貴方は変わったでしょう?」

「あっ……」

 

 そうだ。確かに、親友から恋人になりたいって気持ちに変わった。隣を奪われたくないって思うようになった。けど、タイキは別に特別なことなんてしていない。

 

「変化というのは、そこに何かが介入する時です。貴女の場合は、恋のライバルが割合を多く占めているかも。けれども、彼はおそらく、恋愛も部活も同じぐらい、大きいものなんじゃないでしょうか」

 

 そっか……そうなんだ。

 今までモヤモヤしていた胸が晴れたような気がした。

 私がタイキを好きになったのは、部活を頑張っていることをしっかり見てくれていたところからだ。きっとあいつもそうだ。部活を頑張っているチナツ先輩を見て惹かれたんだ。

 

「何かに全力で頑張っているのを、理解してくれる人は……」

「素敵な人!ですね!」

「……はい」

「サナー!サァーナ!」

 

 何かを伝えようと手を振っているサナリスちゃん。それを見てクスッと微笑むアンペルさん。そして、私のアゲハントがサナリスちゃんと一緒に技を披露した。

 

 マジカルフレイムを空に向けて放ち、アゲハントがソーラービームで穿つ。サナリスちゃんがサイコキネシスで自身で放ったマジカルフレイムを、ソーラービームの柱を中心に渦巻くように操作した。それはまるで炎タイプが入ったドラゴンポケモンが天空へと向かっていくように見えた。

 

「かえんほうしゃが使えないから、サイコキネシスを使って……綺麗ですね」

「ええ。とても」

「ヒュ〜!」

「どうしたの?」

「サナ!サナサナ!」

「『今の貴女の心模様をイメージしてみた』って言っていますよ」

 

 私の心模様か。……うん、晴れ渡った気持ちから、徐々に闘志が湧いてきた。

 

「やってやりますかっ!ね!アゲハント!」

「ヒュ〜!!」

 

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 次の日の天気も晴れ晴れとしていた。私はもう、迷わない。常に全力で、親友だって気持ちで常に隣にいて、例えどう声をかけたらいいか分からないぐらいあいつが落ち込むことが今後あっても隣にいてやる!

 そしていつか、

 

「タイキっ!」

「うわっ、急に大きな声出すなよ……」

「すまんすまん。体育館に貼ってある目標が、変わってて偉いなって思ってさ」

「ああ、あれか。まあ色々あって」

「チナツ先輩絡みでしょ〜!分かるよ。一番タイキらしい」

「さすが、なんでもお見通しだな」

「とーぜんでしょ!」

 

 タイキより少し前に出て、そしてクルッと振り向いた。

 そしていつか、気付かせてやる。

 

「あんたのことを一番よく理解してるのは、このヒナ様なんだからっ!」

 

 いつも心を支えていたのは私だってことを!




僕はアオのハコを読むと、俺も全力で夢に向かって取り組もう!ってなります。そして結果が出てきて、このまま波に乗って行きたいとまで。年齢ももう30近いのですが、諦めずに夢に向かって努力できたのは、間違いなくアオのハコなんです。だから一番好きな漫画です。

さて、そんな僕は千夏先輩推しですが、雛も好きです。だから今回は漫画を読んでいて感じたことを意識してみました。雛って意識してから大喜の部活姿に対して労いの言葉を掛けられなくなっちゃってて。それが出来ていれば……って思っていたのです。だってなんだかんだ大喜ってバドバカだもん。
アンペルさんに代わりに伝えていただきました。
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