ポケットモンスター 『移動カフェ"安らぎ"』   作:sisid

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第八話 Shall we dance ?

 これは昔のお話。

 サナリスがまだキルリアの頃のお話。しゃがれた女性の掌が、キルリアの淡く青い髪を撫でていた。

 

「キルゥ」

「可愛いわねえ」

「あはは。ありがとうございます。サナリスっていいます」

「サナリス?ああ、サーナイトに進化するものね。なるほどなるほど…」

 

 フェルム地方。ここでのポケモンバトルは普通のポケモンバトルは少し違う。

 

「アースの力は凄まじいものですね」

「ええ。だからこそ見ていて面白いのよ。そんな中美味しいコーヒーも頂けて、贅沢この上ないわね」

 

 アースというフェルム地方特有の鉱石には、ポケモンの力を最大限まで引き出す力を持っている。

 その力を使うことで、ポケモンは更なる進化を遂げ、メガ進化することも出来る。

 

「いつか貴方もこの地方で闘うのかしら?」

「いいえ。僕はサナリスと世界各地をカフェを営みながら歩むつもりです」

「いいわねえ。あ、そうだわ。備えあれば憂いなし…これを持って行きなさい」

 

 そうして渡されたのが緑色の鉱石。

 

「これは…ジェダイトですか」

「知ってるの?その通りよ。貴方のサナリスちゃんの通常色と一緒の色…お守りとしてどうかしら?」

「確か、災い等から身を守ってくれると言われています…しかし、これは貴方のでは」

「ふふ。いいのよ。私はもう長生きしたから…それに、この石はそれだけじゃないわ」

「え?」

「貴方のサナリスがサーナイトになった時…意味を成す。だから持っていってちょうだい」

「…分かりました。ありがたく頂きます」

 

 アンペルとサナリスは頭を下げる。後にこれがアンペルとサナリスの大切な指輪と腕輪になる。

 

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 くるっと回ってまた回る。バレエのような動きをして踊るその姿。

 イッシュ地方のとある森の中、太陽の光が木々の隙間から溢れる。その光と、綺麗で透き通った池を背景にサナリスが踊っていた。

 

 フェルム地方を訪れてから数ヶ月。サナリスはまだキルリアのままだった。

 

「キルッ」

「ふふふ、貴方はまだキルリアのままでいたいのですね」

「キルゥ」

 

 アンペルはサナリスが甘えたがりなことを理解していた。

 

「さて、サナリス。少し散策をしましょう。もしかしたら美味しいきのみが見つかるかも」

「キル!」

 

 サナリスはそう言われてすぐにアンペルの肩の上に乗った。実際には超能力で多少浮いているため、乗ってはいないが。

 

 きのみの調達は移動カフェでオリジナルブレンドを作る為に必要不可欠。

 

 アンペルの頭の上で揺れながらきのみを採取していくサナリス。

 

「キル?」

「君達は、何者だい?」

 

 黒い帽子を被り、ジェダイトのような長い緑色の髪をし、スラッとした体型の男が目の前に現れてはそう言った。

 

「僕の名前はアンペル。この子はサナリスです。貴方は?」

「ボクはN。君達はポケモントレーナー…ではないね?」

「ええ。僕達は移動カフェを営んでおります」

「そうか。それなら良いんだ。もしもポケモントレーナーだったらここから追い出すつもりだった」

「ここは貴方の敷地ですか?それは失礼しました」

「いやそういうわけじゃない。……君はキルリアと仲が良いね」

「サナリスです」

「キルッ!」

「!!…こんなトモダチがいるとは…」

 

 トモダチ?とアンペルは一瞬気になったがそれはすぐに察した。

 ポケモンのことをトモダチと呼んでいる。そしてアンペルはNの反応の仕方に見覚えがあった。

 それは自分自身と同じ反応を示したからである。

 

「心が、読めるのですか」

「!君もかい?」

「いえ…サナリスだけです。他のポケモンに関しては、完全には読めません」

「そうか…」

 

 Nはサナリスをじっと見る。そしてアンペルを見た。その眼差しは真剣で、アンペルも話を聞く姿勢になった。

 

「ここから出て行ってくれ」

「おや、ここは貴方の私有地ですか?」

「違うけど、ここにいると君達までもが巻き添えになる。プラズマ団という、悪の組織に」

 

 プラズマ団はポケモンを道具のように扱う輩が大勢いる組織。

 その組織の目的は、自分達以外がポケモンを持たなくなる環境を作り出すこと。

 

「なんという…」

「ああ。ボクは昔騙されていてね…同じ境遇の仲間と共にプラズマ団から逃げてきたんだけど、奴らはボクを探している」

「それはなぜ」

「ボクが、伝説のポケモンを復活させる石を持っているからさ」

「……なるほど。武力行使というやつですか」

「ああ。だから君達はここから離れた方がいい。プラズマ団がボクのいる場所を特定してくるかもしれない」

「そんな話を聞いて、離れるわけには行きませんね」

「キルゥ」

 

 Nは瞬きをした後、再度出て行くことを伝えたが、二人はそれを拒否した。

 

「ボクは君達の為に言っているんだ。頼むから…」

「キル、キルル」

「……確かに傷ついたポケモンを、ボクの仲間が治療してくれているけど」

「では僕達もそこへ。サナリスがいやしのはどうを使えます。傷を癒してくれるでしょう」

「…本当に離れる気がないんだね」

「当然です。僕は笑顔が好きですから。貴方が心穏やかにいられるように助力します。ポケモンの治療が先決ですが、プラズマ団から逃げる方法も考えてみましょう」

「ハァ…分かったよ。付いてきてくれ」

「はい」

 

 放っておけない。彼の笑顔を見てみたいというのもあるけれど、ポケモンと会話が出来る彼と僕はどこか似ているから。

 

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「移動カフェはしばらく臨時休業ですかね」

 

 アンペルの言葉にとんと反応しない女性二人。Nが言っていた仲間というのはこの二人。

 髪が黄色く三つ編みを一つ結びにしているヘレナと、桃色の長い髪をしたバーベナ。

 

「嫌われ者ですかね」

「ごめんね。彼女達…特にヘレナはボクとバーベナ以外の人間をすぐに信用しないんだ。理由はあるんだけど、詳しいことは言えない」

「構いません。サナリス、どうですか」

「キル」

「おお、よく頑張りましたね」

 

 アンペルが移動カフェをしばらく休むと言った理由は、想像以上に怪我を負ったポケモンがいたからだった。

 ヘレナとバーベナの治療を持ってしても、追いついていない状況だった。

 サナリスとアンペルの助けにより多少マシにはなったものの、時間がかかるのは明白だった。

 

 持ってきたキッチンカーの中はサナリスと二人だけの空間で、そこでお互いに今日の成果を称え合っていた。

 

「…信じられません。このような光景が見られるなんて」

「ああ。ヘレナの言う通り…ボクも信じられなかったよ。けれど、二人は互いを信じ合っている。それに…」

「ええ。サナリスというキルリア…あれは野生です。野生のポケモンがどうしてあんなに尽くしているのでしょう」

「分からない。でもなんでかな?彼の言葉を聴くと何故か心が落ち着くんだ」

「それは…私達もです」

「バーベナ」

「あの方の声色なのでしょうか。気を許してしまいそうになる」

「うん。ボクとしては、気は許してあげてほしいけどね。彼が極悪非道な人間とは到底思えない」

 

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 いつの間にかキッチンカーの中はポケモン達でいっぱいになっていた。傷を癒してくれたアンペルとサナリスに懐いてしまったようで、ヘレナとバーベナ、そしてNもそれを喜んでいた。

 

「元々人間不信なトモダチしかいなかったんだ。ボク達にしか心を開いてくれない」

「ですが、貴方達のことを大切に思ってくれるようになりました。感謝しています」

「僕達は僕達のやるべきことをしたまでですよ」

 

 ヘレナが連れているサーナイトと一緒に踊りをするサナリス。それを見ているバーベナのゴチルゼル。そして盛り上がる他のポケモン達。

 

「…いいですね」

「え?」

「ヘレナさんのサーナイト…非常に綺麗です。サナリスが懐くわけです」

「ありがとうございます。貴方のサナリスもいつかサーナイトになれますよ」

「そうですね。その時が来るまでの、お楽しみですね」

「…今まで本当にありがとうございました」

 

 ヘレナが頭を下げる。それに少しばかり驚いたのか、遅れてN達も頭を下げる。

 

「おかげで治療は済みそうです。これからは私達だけでなんとかなります。これ以上、貴方達を巻き込むわけには行きません。今日でお別れとしましょう」

「…分かりました」

 

 三人の優しく包み込む笑顔が見れた。治療したポケモン達が笑顔になった。アンペルがこれ以上ここにいる理由もなくなった。

 

「では最後に一つだけ。ここはもう近いうちに離れた方がいいでしょう。新たな土地を探すことを提案します」

「ああ。ボク達もそれを考えている」

「そうですか。それではまためぐり逢いましょう」

 

ーーその時だった。ヘレナのサーナイトと、アンペルのサナリス、そしてバーベナのゴチルゼルが互いにピクッと反応した。

 

「!どうやらお別れはまだ早いようです」

「えっ?」

 

 刹那、謎の光線が治療されたポケモン達の一部に当たる。その光線によって舞い上がった土煙と共に、沢山の人たちが現れた。

 

「ゴホッ…いきなり乱暴な…」

「おにごっこは終わりだ。Nよ」

「!!…ゲーチス」

 

 プラズマ団のボスが顔を覗かせた。Nと同じような髪色で、赤い瞳孔や、ほうれい線が目立つ。

 

「ライトストーンをよこせ」

「断る」

「Nさん、逃げてください。僕がこの人たちを足止めしますので」

「アンペル、冗談はよしてくれ。これだけの人数…さすがに無理だろう」

「策はすでにとってあります」

「え…?」

 

 アンペルがスマホロトムを取り出した。そこから聴こえた声は男性の声。

 

『私の名前はハンサム。国際警察の者だ!君達プラズマ団の行為はすでに調査済み。今すぐそちらに向かう!』

 

 アンペルはニコリと笑って見せた。Nはキョトンとしている。

 

ーー国際警察と面識があることも驚きだけど…どうしてすでに呼んでいるんだ?まさか…サナリスから聞いたのか?

 

 そう思って視線をやると、サナリスがエヘンと胸を張っていた。

 

「ボクよりもトモダチに耳を傾けてないかい?」

「サナリスにだけですよ」

 

 アンペルはニコッとした後、すぐにゲーチスに目を向ける。ゲーチスは笑うことも、驚くことも何も反応せずただただ眉間にシワを寄せたままだった。

 

「アクロマ、いつまで待たせる気だ。早くコイツらを動かせ」

「言われずとも。私の研究の成果をお見せしましょう」

 

 円型の機械に乗っている男が現れた。その機械の先端には筒状になっておりそこから煙が上がっている。

 

ーー先程の光線ですか。あの変な髪型をしている男…

 

「ふふふ、先程の光線が何か気にしているようですねえ。実はあれは電波なんですよ」

「電波?」

「そうです。さあ、皆さん!Nからライトストーンを奪いなさい!」

 

 その声と共に、治療していたポケモン達が動き出す。そしてNに襲いかかる。

 

「これは!?」

「ポケモンを操るというのか…外道な」

 

 ヘレナのサーナイトがNを助ける。そしてバーベナのゴチルゼルが他のポケモン達を"まもる"で止める。

 

「キル!」

「ええ、煌びやかに参りましょう」

 

 テレポートし、アクロマの目の前に。

 

「なっ!邪魔をするのですか!この素晴らしい研究成果を壊すと!」

「その才能は別に使えば良いじゃないですか」

 

 サナリスがアンペルの肩から離れる。そして"マジカルフレイム"を放とうとしたその刹那ーー

 

「サザンドラ。"ラスターカノン"」

「キル!?ーーキァ!」

「!!」

「グァアア!!」

 

 サザンドラの咆哮が轟く。ラスターカノンがサナリスに命中し、アンペルのいる位置から遠くへ飛ばされる。

 

「我々の邪魔をするな部外者が」

「あのキルリア…色違いというだけではない…見ましたかゲーチスあの子達を!」

「興味ない。早くNからライトストーンを奪え」

「はぁ…今あの二人は喋らず、技を出したのですよ!ポケモンの研究において、新たな可能性を秘めている!エスパータイプだからでしょうか…それとも」

 

 機械から飛び降り、走るのはアンペル。サナリスの方へと向かって行く。

 ゲーチスがそれを止める為、サザンドラに"りゅうせいぐん"を使わせ邪魔をする。

 

「くっ……サナリス!」

「それでは喰らいなさい!」

「キルゥ…!!」

 

 サナリスに電波が命中した。アンペルが間に合わず、助けることができなかった。

 

「さあ、サナリスとやら!その力でNからライトストーンを奪いなさい!」

 

ーーやめなさいサナリス!

 

 サナリスに、アンペルの声は届かず。マジカルフレイムがNの方へと放たれる。

 

「チィル!」

「ゴチルゼル!」

「大丈夫だアンペル!ボク達なら、まだなんとか…!」

 

 ゴチルゼルの"まもる"でなんとかNに直撃は免れたものの、サーナイトもゴチルゼルも体力がかなり消耗している。

 

「これではジリ貧です。サーナイトもゴチルゼルも限界が来てしまう…」

「ヘレナ、落ち着きましょう。なんとかして暴走しているこの子達を止めるのが、使命」

「ああ。心の声が聞こえるボク達だからこそ、寄り添ってあげれるんだ!」

 

 N達が奮闘している中、アンペルはサナリスと正面を向く。

 

「……貴方とこうやって敵対するのは、初めて会った時以来でしょうか」

「…………」

「貴方とこうやって、人を傷つけ、誰も守れなかったのはいつ以来でしょうか…いえ」

 

 アンペルはN達を見て、真正面を向く。

 

「あの時のようなヘマはしません。まだ僕は守れる!移動カフェ"安らぎ"は、貴方とまだ続けます。決して終わらせません!」

「キ、キルゥ!」

 

 テレポートでアンペルの死角に入り、N達の距離を詰める。

 

「なっ…」

 

ーーこれは、間に合わない!

 

 マジカルフレイムがNの方へと放たれるその刹那、Nはそう思っていた。サーナイトも、ゴチルゼルも動き出しが遅れたのである。加えて、治療されたポケモン達の妨害。ピチュー達であろうとも、迂闊に攻撃が出来ないヘレナ達にとってはかなり厄介だった。

 

 攻撃を受けると思ったその時、喰らったのはNではなく、アンペルだった。

 

「!!キル…」

「くっ…」

 

 アンペルが倒れる前に、思わずNがアンペルの身体を支える。

 

「ボクを庇って…すまない」

「良いんです。それよりも…皆を」

 

 アンペルが身体を起こし、ゆっくりとサナリスに近づく。

 しかしその足取りはフラフラとしており、ついには膝をついた。

 

「ふーっ…」

 

 衣服が多少灰に、鳩尾に攻撃を喰らい呼吸もままならず、意識が朦朧としていた。

 

「大丈夫…大丈夫です。今は世界がゆっくり見える」

 

 極限状態というやつでしょうか。おかげで良い物を思い出しました。

 

 しかしそれは先程の衝撃で半分に欠けていた。だがそれも運がいいと思ったのか、アンペルはサナリスにそれを力を入れて投げた。

 

「災いから、守ってください。力があるのなら」

 

 サナリスがそれを手に取った。ジェダイトの光を見て、サナリスは思わず、嗚咽することなく涙をこぼした。

 

そしてーー

 

 光った。

 

「これは…!」

「ーー……サナ」

 

 誰もが目を疑った。確かに見た目はサーナイトだった。しかし…

 

「黒いドレスの様な姿に、ハート型の突起…?これは、また研究の対象になりそうですねえ…!!さらに今、あのサーナイトは私の電波によって私の言いなりになっている!!これは……」

 

ーーサナリス。煌びやかに参りましょう。

ーーサナ!!

 

 ギュッと握ったジェダイトが光を放つ。アンペルの持っているジェダイトも同じく光る。

 

「…そういうことでしたか」

 

 これ…アースの力が籠っている。

 

「サァァアナ!」

「なっ、何故…!!」

 

 "ムーンフォース"がアクロマの機械を壊す。アクロマがその機械から落ちると、睨みつける…どころか目を輝かせた。

 

「素晴らしい…!!なんということか!このような貴重な体験が出来るだなんて!」

 

 そんなアクロマにゲーチスが舌打ちをした。

 

「サザンドラ!"ラスターカノン"!」

 

 そのサザンドラの動きより、サナリスは速く動き、"ムーンフォース"を当てる。

 

「…バカな!認めぬ!!認めてなるものか!!」

 

 立て!サザンドラ!コイツらを一掃しろ!

 その声ももうサザンドラに聞こえていない。サナリスの攻撃があまりにも強力だった。

 

 機械が壊れて、全員自由に動ける様になった。そのポケモン達が一丸となり、ゲーチス達を食い止める。そして、ハンサム達がやってきた。

 

「プラズマ団!貴様らを逮捕する!!」

 

ーー終わりましたか。

 

 その言葉に安堵したアンペルは静かに目を閉じた。

 

▣◙▣◙▣◙▣◙▣◙▣◙▣◙▣◙▣◙▣◙▣◙▣◙▣

 

「…んっ」

「サッ!……サァア!」

 

 嗚咽しながら抱きつくのは、メガ進化していない、アンペルの大切なポケモンだった。

 

「サナリス…泣いているのですか。おはようございます」

 

 身体を起こすと、少しまだ痛む。しかし、サナリスを撫でる為、彼は起き上がった。

 

「!アンペルさん!」

「ヘレナさん…とバーベナさん。おはようございます」

「ああ…!本当に良かった!丸二日眠っていたんですよ!」

「そんなに…それは、ご迷惑をおかけしましたね」

「いいや。それはこちらのセリフだ」

「Nさん…」

 

 Nは頭を下げた。そしてヘレナとバーベナも頭を下げる。

 

「詫びさせて欲しい。ボクのせいで巻き込んでしまった。なにも力にはなれなかった。サナリスを悲しませてしまった…」

「いえ。貴方のせいではありません。プラズマ団のせいですよ」

「だが、そのせいで、君のサナリスは進化してしまったじゃないか」

 

 サナリスは進化したくなかった。まだまだキルリアのままでいたかったと…そう思っていたのは分かっているんだ。

 

 N達が言うように、サナリスは進化したくなかった。その理由は甘えたかったから。キルリアのままであれば、ずっと肩車してもらいながら、街を歩くことが出来たからである。

 

 しかし、プラズマ団との闘いにおいて、進化してしまった。進化しないと勝てないからと踏んだから。

 それに後悔はない。けれども……やはり肩車出来ないのは、寂しい。

 

 サナリスのその感情に、アンペルはクスッと笑ってみせた。そして外に出ましょうと言った。

 

 多少荒れてはいるけれども、これはプラズマ団に勝った証。

 ハンサムからは感謝の言葉を頂いたらしい。責任を持ってここを綺麗にすることを約束してくれたそうだ。

 

「なら、今だけ、プラズマ団に勝った跡があるわけですね。…そうですね。遺産と言いましょうか」

「遺産?」

「ええ。こっちの方が少し特別感があるでしょう?…さて、僕はずっとサナリスとしたかったことがあるんですよ」

「サナ?」

「キルリアだった頃、美しく踊っている貴方を見て、僕も踊りたいと思っていたのです。…しかし身長差がどうしてもありました。けれども今は、向かい合いながら手を繋げれる。とはいえ、僕は踊りの経験があまりにも少ないですが」

 

 アンペルはそういうと、お手をとってくださいというように、手を差し出した。

 

「Shall we dance?」

「……!サナ!」

 

 すると、ジェダイトが反応し、サナリスがメガ進化する。黒いドレスのような衣装がさらに舞踏会を彷彿とさせた。

 

「粋な誘い方だね」

「N?」

「『それを承知の上で踊りませんか』なんてお誘い…断れないよね」

 

 せっかくだし、みんなで踊ろうか。舞踏会みたいにね。

 

 サナリスがアンペルの手を取り、一緒に踊る。N達も、ポケモン達もそれぞれ違った踊りを見せる。しかしその中心にいるのはアンペルとサナリスであることはずっと変わらなかった。

 

「僕は貴方が、電波を受けて言うことを聞かなくなった時…離れ離れになる気がして怖かった。恐ろしかった。でも今、こうやって一緒に踊れている」

「…サァ」

「ええ。これからもずっと一緒です。ですから…一緒に作りましょう。指輪と腕輪を。僕達の…生涯の契りを交わしましょう」

「!!」

 

 踊りながら、アンペルは真剣に、少し顔を赤ながらもそう言った。サナリスはそれにつられて紅潮し、涙が溢れそうになりながらニコッとして頷きながら、少し踊りの間のあるところで、目を閉じたまま背伸びした。

 

 それにアンペルもしっかりと応えた。

 

「離れません。絶対に」

「サナァ」




原作だとアースは貯める必要があるのですが、まあ二次創作ですので。
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