塾講師刺されます!
「はい、これにて授業を終わります。」
『ありがとうございました!』
生徒の声が教室中に響き渡り各々帰宅の準備をしだした。
「塾長、お先に失礼します」
俺は塾長にそう告げると速やかに退社した。
受験シーズンが終わろうとしてる3月、正直先生としての仕事は待つことぐらいだと思う。代わりに受験することも出来ないしテストに何が出るかを教えることもできない。
だからだろうか、生徒の口からでる合否にドキドキしてしまう。合格なら祝いの言葉で済むのだが、不合格の場合どんな言葉をかけてあげればいいのか迷ってしまう。
そして俺の悪い癖としてその子に感情移入してしまうことだ。相手が笑えば笑うし、相手が泣いていれば泣いてしまう。感情がすぐ顔に出てしまうのだ。
どうにかして治せないものかと考えながら家に向かって歩き始める。
しかし今日の俺はそんな後ろ向きな気持ちを消し去るぐらい楽しみにしていることがあった。それは…
「家に帰れば外国産のビールが俺を待っている!」
小さく呟くが歩幅は大きくなった。
そうあのビールを飲むために今日一日を頑張ったと言っても過言ではない。そう思いながら目的地にある冷蔵庫に向かって歩みを進める。すると、
「先生」
誰かが呼んでいる。俺のことを先生と言うからには教え子なのだろうと予測する。
「もう夜だぞ早く帰りな…」
誰だと思いながら振り返ろうとする瞬間背中に熱を感じた。
なんだ?飲み物でもかけられたか?熱を感じる場所に触れてみる―激痛が走った。
どうやら何かで刺されたようだ。
「先生のせいで私は志望校に落ちたんだ、先生のせいで…」
生徒は泣いていた。
言葉が出なかった…激痛によるものか、はたまた自分の不甲斐なさによるものなのか。
何がいけなかったのか、俺は生徒に何をしてあげればよかったのか、ごめんや申し訳ないなんて言葉をかけてもあの子の行きたかった高校には行けない、本当に自分の教え子の口から聞く落ちたと言う言葉ほど辛いものはない。
先輩からは慣れるから気にするなと言われるが、俺は一向に慣れない。こんな時どんな言葉をかけてあげればよかったのだろうか。
口を動かそうとするも言葉が出ない…俺は死ぬのか?嫌だ嫌だ嫌だ、生徒には申し訳ないが、アレが俺を待っているんだ!それまでは持ってくれ俺の身体!
あぁ…ダメだ…意識が遠のく…せめて、せめて一口だけでも
俺は、最後の力を振り絞り声を上げた。
「あのビールは本当にいいものなんだ!」
目の前の生徒のことよりもビールのことを考えてしまう俺、神奈月翔太の意識は途切れた。
妄想が捗りますねー