「アルはこの世界に転生してきた日本人かい?」
さぁ…どう出る!?目を逸らすか?とぼけるか?そもそもまだ小さい子供、転生なんて言葉普通は知らない…くそっやはり早合点だったか。
俺はアルの答えを聞く前に自問自答を繰り返していた。
「うん。そうだよ」
アルが答えた。
えっ!?めっちゃあっさりなんだけど!?なんかこう…あるだろう?
「あっさり…答えるんだね」
「まぁ、隠してないし、言っても信じてもらえないからね」
さ…左様ですか。なんか色々考えてた俺がバカみたいじゃん…
「ところで、どうして俺が転生したって分かったの?」
アルが聞いてきた。
「最初に怪しいなって思ったのは将棋盤かな。日本の物そのまんまだったから。そして確信に変わったのはスリッパとペペロンチーノだね。ここまで的確に言葉が当てはまるのは何かあるなと思ってさ」
俺が答える。
「さすがだね!将棋の他にもリバーシも作ったよ。あとはスパゲッティもハンバーグも全部俺が考えたよ」
「めっちゃ開発してるやん」
思わず関西弁になってしまった。
「俺はもともと伊中雄二って名前でトラックに轢かれて死んだんだけど、リーフ兄さんは?」
アルが聞いてきた。
「俺は元々神奈月翔太って名前で塾講師をしてたんだけど、教え子に刺されちゃってね」
「教え子に刺されるって…何したんだよリーフ兄さん…」
アルがジト目で見てくる。
「別にやましいことはしたないよ。俺のせいで志望校に合格出来なかったんだとさ。まったくせめてビール飲んでから殺されたかった………ん?」
そこで気づいてしまった。俺が本来この世界に来た目的に!!
「そうだぁぁ!ビールだ!ビール!思い出した!おい!アル!この世界にビールはあるのか!?」
俺はアルの肩につかみかかる。部外者から見れば小さい子にお酒を聞くヤバい人みたいだ。
「ビッ…ビールは無いけどエールはあるみたいだよ!」
エール?ビールの種類の話か?とりあえずエールとやらを飲んでみる必要があるな。
俺はすかさず質問する。
「ありがとう…もう一つ聞きたい。そのエールは何歳から飲める?」
ここが1番重要だ!仮に20歳からだとしても隠れてでも飲んでやる!
「エールが飲めるのは15歳からで、12歳、13歳あたりから少し飲ませてくれるらしいよ」
アルが答える。
「15歳?15歳なんだな!?俺は今15歳…エールが飲める!?」
俺は心の中でガッツポーズをする。
「俺はまだ6歳だから飲めて羨ましいよ」
アルが死んだ目で答える。
「俺が転生してきた目的の大部分はこの世界でビール…いやここではとりあえずエールでいくか…この世界でエールを作ることだからな!」
俺は手を広げてアピールする!
「あはは!俺が15歳になった時は最高に美味しいエールをお願いするね!」
「ああ!まかせろ!」
俺は元気よく答える。
「でも…普段全くと言っていいほど喋らなかったリーフ兄さんがいきなり饒舌になったと思ったらまさか転生してたなんてね」
アルが少し悲しそうに言った。
「確かにな…俺が謝ってどうにかなる問題じゃないんだが…神様曰くリーフ…あっ前の人格のリーフな、その子はあの高熱で死ぬ運命だったらしい」
俺は俯きながら喋る。
「えっ!?そうなの?」
「ああ。元々変えることができない運命だったらしい。だからだと思うが、俺の中にはアルの知っているリーフ=スロウレットの記憶はない。本当に申し訳ない」
俺は頭を下げる。
そうだ…リーフ=スロウレットはあの高熱で死に、代わりに俺こと神奈月翔太が転生した。そして俺は姿形はリーフ=スロウレットだとしても今まで培ってきたスロウレット家との思い出は全く無い…別人なのだ。
俺は話続ける。
「だから神様に言われたんだ。リーフ=スロウレットのためにお前がリーフ=スロウレットとして第二の人生を歩めば?と。だから俺はリーフ=スロウレットのためにもそして自分のためにもこうして2度目の人生を謳歌しようと決めたんだ」
「…………リーフ兄さんの言いたいことは分かったよ。でも他のみんなには言わないほうがいいよね」
「そうだな…言っても信じてもらえなさそうだし」
「だが、せめて事情を話したアルにだけは謝らせてくれ。本当に申し訳なかった」
俺は再び頭を下げる。
「頭をあげてよ!リーフ兄さん!分かったから」
アルが慌てる。
「そうか?それならいいんだが…ところでアルはこの世界に転生して何かしたいことがあるのかい?」
「俺はただただ田舎でのんびりスローライフを送りたいだけだよ。前世では毎日泥のように働いていたからね」
アルは笑顔で言った。
「分かった。なら俺はアルがのんびりスローライフを送れるように手伝うよ。転生者同士仲良く…いや、兄弟だからな。改めてよろしくな!」
「うん!こちらこそ!」
俺はアルと握手する。
よかった、アルがいい子で。自分のためにもそしてアルのためにもこれから頑張らなくちゃな。
俺は決心する。そして大事なことを思い出す。
「あっ!!そういえば、俺とアル、父さんに呼ばれていたんだ」
「えっ!?それを早く言ってよ。ノルド父さん怒ると怖いよ?」
アルが慌てて言う。
「えっ?あんな優しそうな人が怒るの?そんなわけ…「リーフ?」ないよね…」
振り返ると笑顔を浮かべた父さんが立っていた。
「あまりにも遅いから迎えにきたよ」
父さんは笑顔でそう言った。
「あ…あはは今から行こうとしてましたー」
この身体の底から湧き上がる恐怖…リーフ君さてはお前…たまに怒られてたな?
少し長くなりました。ごめんなさい。
主人公がエールという存在に気づいたのでこれからはビール=エールになります。よろしくお願いします。