『行ってきます!』
アルと俺は大きい声で叫ぶ。
昨日1日中説教を受けた俺は一睡も出来ていないため逆にテンションが上がり覚醒していた。
反動はすごいことになりそうだが、とりあえず今はこのテンションを楽しもう!前世では中々味わえなかったからね。
俺は馬車の外からコリアット村を見渡す。
のどかだな。この一言に尽きる。ビルや車などいっさいない、あるのは畑だけ、本当に異世界に来たんだなぁ…
「王都に行かれるんですか?行ってらっしゃいませ!」
村人であろう人が父さんに挨拶をしている。
領民との関係も良好そうだ。父さんの領地経営はしっかりしているということなんだろう。
「父さん、少しの間馬車の先頭に行ってもいいですか?コリアット村の景色を堪能したいので」
俺は父さんに提案する。
「リーフは村よりも王都での暮らしの方が長いからね。ゆっくり見ていくといいよ」
父さんは微笑んだ。
なるほど…王都暮らしが長かったのか。新たな情報を得ることができた。
「ありがとう。父さん」
俺は父さんに礼をいい先頭にいく。
「ロウさん隣に座りますね!」
「!?リーフ様?どうぞどうぞお座りください」
「ありがとうございます」
この人は使用人のロウさんだ。すごく温厚な人とのこと。
俺はロウさんの隣に座り、この世界の景色を楽しむ。
空気が美味しい…覚醒していた意識が落ち着きやがて眠気が襲ってきた。
が…その時。
「ノルド様!!魔物です!」
ロウさんが馬車内いる父さんに勢いよく話しかける。
「!?分かった!ルンバ!ゲイツさん。いくよ!」
「ああ!」 「了解」
2人はそれぞれ馬車から降りる。
ルンバはBランク冒険者で、ゲイツは元冒険者とのこと。今回は護衛としてついてきている。頼もしいかぎりだ。
魔物か…興味はあるが俺の今後の人生に必要ないものな気がする。そして何よりめんどくさい。ここはこのまま寝て…
「リーフも来なさい」
「…分かりました」
こうして父さん、ルンバ、ゲイツ、俺は魔物と対峙することになった。
対する魔物…父さん曰くゴブリンというらしいが、3体、目の前に現れた。
いやいや、明らかな戦力過多だろ!?冒険者にドラゴンスレイヤー様までいるんだぞ!?
「リーフ、2体は僕たちで仕留めるから残りの1体を倒してみせなさい」
父さんが真剣な声で言ってきた。
あっ、そんな顔も出来るのですね。
「分かりました。やってみます!」
俺は剣を抜き戦闘体制に入る。何かあったら他の3人に助けてもらおう。そう考えながら…
てか、流れで剣なんか構えちゃったけど俺攻撃したことな……いっ⁉︎
俺と対峙していたゴブリンが先制攻撃を仕掛けてきた。
「あっ…危ねぇ」
間一髪でかわす。ゴブリンの武器は木の棒だが当たったらきっと痛い…
「リーフ。大丈夫かい?」
父さんが叫んだ。
「だ…大丈夫じゃないでーす!」
この魔物は危険だ!頼む届いてくれ俺のSOS!!
「大丈夫そうだね!頑張ってね」
父さんはそう言うと倒した残り2体のゴブリンの所にルンバと共に行く。
「ま…まじかよ。もう倒してるの?」
残念だが、援軍に期待できない以上やるしかない…これは稽古じゃなくて本番なんだ。やらなければ…やられる!!
俺は剣を腰に戻し両手をゴブリンの前に掲げた。
「剣が使えない以上魔法で相手になってやる!」
俺は魔力を身体中に循環させ発動準備に入る。
もちろんゴブリンは待ってくれない。その間に攻撃を仕掛けてきた。
だがその攻撃はリーフ君持ち前の運動神経でなんとか避ける。そして避けている間に俺は詠唱をする。
「我は求める…大気より集いし…鋭き風の刃よ」
詠唱を終え攻撃体制に入る。多分だが火魔法とは違い周りに被害が及ぶことはないだろう…多分。
手を見ると風?が集まり鎌のような形をしだした。これが、風の刃か。
「当たれ!風の刃!」俺は鎌のようなものをゴブリンに向けて放った。
風の刃はスピードをあげゴブリンに直撃した。そして、ゴブリンは、
真っ二つに分かれた。
「えっ?なんで…真っ二つに切れて…」 俺は絶句する。
ゴブリンはもちろん絶命していた。
火魔法といい風魔法といいここまで強力なのか…そして何より魔物を…ゴブリンを…
「殺してしまった…殺すつもりはなかったのに!!」
俺は誰にも気づかれないような声で呟く。
他の3人もゴブリンを殺しているから罪には問われないだろう。多分人間と魔物は敵対している関係なのだろう。
生きる為に動物などを殺すことはやむを得ないとしても…人型の生き物をこの手にかけることは初めてだ。
「おい!リーフ!お前すげぇないつの間に魔法が使えるようになったんだ?」
ルンバがやってきた。
「いい威力だけど、無駄が多いね。魔力が身体から逃げてるよ」
アドバイスを言いながら父さんも言ってきた。
「初めて…の戦闘だったもので緊張していたのかもしれません」
俺は素直にそのまま話す。
「とりあえずここにいたゴブリンは殲滅出来たから他の魔物が来る前に出発するよ」
「分かりました」
俺はそう言い目の前のゴブリンを見る。
「魔物って中々グロいよね」
いつからいたのだろうか。アルが喋りかけてきた。
「俺も…アルのようにさ…自分の生活を豊かにする為に魔法を使いたい。でもそれだけじゃダメなのかもしれない。自分が生きる為にも自衛の手段として攻撃魔法を使えるようにならないといけないと思うんだ」
するとアルは、
「俺は身の回りを豊かにする為に魔法を練習したんだよ。もちろん自衛のために攻撃魔法も持っているけど…でも俺はそれを極力使わないようにしている」
すごいな。自分の身の回りを豊かにする為に魔法の勉強をして楽しようとしていたのか。
「俺は、自分のためにもそうだけど…長男だからね。家族の為にもやれることはやってみるよ。アル、魔法についてこれからも教えてくれるかい?」
俺はアルに言う。
「もちろんだよ」
そう言ってアルと俺は馬車に戻る。
「先に行ってて」
俺はアルにそう言うと自分の倒したゴブリンの前に行く。そして魔法を唱える。
「我は求める…大地よ隆起してこの者に覆いかぶされ」
そう唱えると土が隆起しゴブリンを覆い簡素な土葬が出来上がった。
「せめてこれぐらいはさせてくれ…」
俺は呟き馬車に戻る。
この世界で生きていく…という覚悟が少し足りなかったのかもしれない。俺はそう思いもう一度気合を入れ直す為に全力で頬を叩いた。
少し長くなりました。次回王都に着きます。