貴族交流会当日。俺はウキウキ気分で馬車に揺られていた。
「酒が飲める、酒が飲める、酒が飲めるぞー」
俺は上機嫌で歌っていると母さんに叩かれる。
「何歌っているのよ!もっと上品な歌にしなさい!」
「即興で作ったお酒が飲みたくなる歌ですよ!母さんもご一緒に、せーの!」
「するわけないでしょ!」母さんはそう言って再び俺を叩く。ひどい。
「お酒が楽しみなのは分かるけどくれぐれも飲みすぎないようにね」と父さんが言う。俺のことを思ってのことだろう、優しい。
「ありがとうございます。因みに飲みすぎるとどうなるのですか?」
俺は質問する。
「気分が高揚して楽しくなる反面時間が経つと気持ち悪くなって吐き気を催したりするよ」
なるほど。なぜお酒を飲むと酔うのかについてのメカニズムはこの世界では解明されていないのかもしれない。
「ありがとうございます。肝に銘じますね!それにしても楽しみだなぁ」
「いいなぁ、リーフ兄さん。お酒飲める歳だもんね」アルが羨ましそうに見てくる。
「アルも早く大人になって一緒に飲もうね。というわけでアルも一緒に歌おう!」
「うん!」
2人で再びお酒が飲みたくなる歌を歌う。楽しくなってきたな!
「父さん、母さんも、せーの!」
『やりません!』父さんと母さんの声が馬車に響き渡る。
馬車で揺られること数十分、俺たちはリーングランデ公爵の邸宅に到着した。
でかいなぁ…公爵家の権力を象徴しているようだ。
「なんか威嚇されているようで落ち着かないや」
アルがそう言って嫌な顔をする。
「鋭いわね。リーングランデ公爵家の人は、どのお方も気が強いことで有名よ」と母さんは言う。
「そんなに威嚇してるかな?あまり感じないや。というか、父さんや母さんと一緒に歩いているからこんな視線浴びているんじゃない?ドラゴンスレイヤーと大魔法使い様だよ?」
「騎士団で暴れ回ったおしゃべり騎士も一緒にいることも忘れないでね。リーフ」父さんが笑顔で言う。
「好きで暴れ回ったわけじゃないですよ!あと謝るんでそのあだ名で言うのやめてください!」
俺は父さんに謝り会場へ入る。
「おおお!広い!ここに、ここに酒が置いてあるのか!」
俺のテンションがどんどん上がっていく。
「お酒を飲む前に他の貴族の方々に挨拶をしないとダメだよ」
父さんは俺に釘を刺す。
「そうだよ、リーフ兄さん。大人しくノルド父さんに従おう」
母さんに頭を掴まれてるアルが言ってきた。痛そう…
「アルをもってしても逃げられなかったのか…」
「うん…でも俺は諦めないよ」そう言って俺とアルはハイタッチをする。
「リーフも頭を掴んだ方がいいかしら?」
「リーフはお母様の手足となり働くことをここに誓います」
母さんのアイアンクローは多分死ねる。ここは服従が正しい選択だ!
そう考えている内に先に着いていたであろう貴族の方々が声をあげる。
目当ては父さんや母さんだろう、視線がそう語っている。尊敬や嫉妬といった視線が混じり合って向かってくる。
ん?何だろう俺にも視線を向けられている?
俺は視線を感じる側に顔を向けた。
そこには柱から顔だけを覗かせた女性がいた。目が合うとその女性は驚き姿をくらませた。
何だったんだろうか…もしかしてリーフ君のファン!?それは申し訳ないことをしてしまった。身体はリーフ君でも心は酒に溺れた醜い異世界人なんです。
俺は心の中で彼女に謝罪し、目当てのお酒探しに向かった。
「お父様!申し訳ございません。リーフ=スロウレットに気配を勘づかれました!」
「なんだと!?こっちも三男のアルフリートの気配が消えたぞ!監視の対象から外していたがかなり異質な人間かもしれない…引き続き監視をするぞ!」
後少しで酒が飲めるぞ!