「王都にはいつまで滞在していらっしゃるのですか?」
「騎士団でのあの剣捌き感服しました!」
「是非私と剣の稽古を!」
「ちょ、ちょっと待って…一斉に喋らないで!」
お酒を飲もうと会場を歩いていたところ、他の貴族の方々に捕まってしまった。名前と爵位も知らないしどうしたらいいものか…
「私の屋敷で紅茶でもいかがですか?」
貴族のお嬢様であろう人が言ってくる。
「い…今は父上の仕事を覚えなければならず時間が…」
適当な理由で切り抜けようとする。今はお茶よりお酒なんだよ!
そうだ!ここはアルを生贄…助けてもらおう!どこだ?どこにいる?
俺はそう思い辺りを見渡す。すると、料理を手に取るアルを見つけ目が合う。
俺は、「助けてくれ!」とアイコンタクトを送る。すると、
「俺は王都の珍味たちと仲良くなるよ!」と返ってきた気がした。
どうしたものかと考えていると後ろから声が聞こえた。
「皆、すまないがリーフ殿とは先約があるのだ。ここは譲ってもらえないだろうか」
振り向くと、正装に身を包んだ自称ライバル、エドワードがいた。
チャンス!この機をのがしてなるものか!俺はエドワードに話を合わす。
「やぁ。エドワード、ちょうど探そうとしていたところなんだ。手間が省けたよ」と俺はエドワードを連れて会場の端に移動する。
「いやぁ…助かったよ、エドワード…君。じゃあ俺はこれで!」
俺は、お礼を言って立ち去ろうとする。
「ああ。っていやいやせっかく会ったのだから少し話でもしようではないか」
エドワードはそう言って肩を掴む。
「さぁ!早速剣の勝負といこうではないか!リーフ殿!」
おい!お話はどこいったんだ?お話は?
「ここはリーングランデ公爵家主催の貴族交流会だよ。さすがにそれは難しいかな。そして俺には剣よりもやらなければならないことがある」
「ほう?剣しか振ってこなかったリーフ殿が剣以外に興味を持つとは気にならな!それはなんだ?」
「そんなの決まって…」
俺が言おうとする瞬間、金属と金属が当たる甲高い音が聞こえた。
「なんだ?」エドワードが言う。
「音から察するに誰かが剣を抜いたとかそんな辺りじゃないのか?よかったな!エドワード君、剣の稽古ができるね!」
「公爵家の会場でそんなことをする貴族はいない!」
お前さっきの言葉忘れたのか?
「じゃあ、あの音は何だよ?」
俺はエドワードに質問する。
「どうやらトングで戦っているようだな。子供同士の喧嘩のようだが…!?エリック!?あいつ何やっているんだ?」
エドワードが驚愕する。エリックとは誰だろうか。
俺も喧嘩らしきことをしている場所に近づく、子供同士の喧嘩ならよくある事だろう。どうせ料理の取り合いとかだろうな。
「………」
無言になる。
アルが同年代の男の子とトングで戦っていた。
アル…お前は大人だろ。
「すまない!あれは俺の弟のエリックだ!それにしても相手の子供は何者だ?素晴らしい剣捌きだ!」
エドワードは喧嘩を止めようとはせず逆にアルを褒めた。
「だ…誰だろうね。」
ここは他人のフリをしよう。面倒ごとは避けるべきだ。
「あの子…ノルド様のご子息様ですわよ!」
「では!リーフ様の弟でもあるということですね!」
周りの貴族の方々が口々に言う。
「なんと!?リーフ殿の弟であったか!なるほど、だからあのように剣が上手いのだな。納得だ!」
納得しないで。
「アルが…いや、弟がご迷惑をおかけしました」
俺が謝る。
「いや、人前で粗相をするなと言っていたのにも関わらずこのようなことになってしまったエリックにも原因はあるだろう。こちらこそ申し訳ない」
お互いに謝る。
それにしても、まさか、エドワードの弟だったとはな。
「これ以上恥を晒すわけにはいかない。2人で止めに入ろう」
エドワードが提案してくる。
「いや…俺たちの出番はなさそうだよ」
そう、なぜならドラゴンスレイヤーことノルド父さんが出撃なされたからだ。
「ドラゴンスレイヤー様が仲裁に入るとは!おっと、こちらの父上も来たみたいだ」
お互いの父親に連れて行かれる子供たち…うん!俺は何も見なかったことにしよう。
俺はそう思いお酒を持っているメイドの方に歩き出す。
「ところで先程の剣以外にやらなければならないこととはなんだ?」
エドワードが聞いてきた、歩みを止め答える。
「お酒だよ」
俺はそう言い再び歩き出した。
飲み物を持っているメイドを見つけ話しかける。
「すみません。エールを飲みたいのですが…」
「エールですか?少々お待ちください」とメイドは言い裏方に戻る。
その間、俺は周りの大人たちを見て疑問に思う。
エールらしきものを飲んでいる人がそこまで多くないということに。
「エールは貴族の中では流行らないのか?ワインばかりだな」
後で父さんに聞いてみようと思ったところにエールを持ってきたメイドがやってきた。
「お待たせしました。ちょうど出来立てが届いたとのことですので、こちらをどうぞ」
と、メイドは俺にエールを渡してくる。
「ありがとうございます」お礼を言いエールを受け取る。
「念願のエールだ…この時をどれだけ待ったことか」
俺はエールをじっくり観察する。
ふむ。シャンパングラスに入っているあたり貴族らしいな、結構ひんやりしているな、冷蔵庫や冷凍庫はこの世界になさそうだから、氷魔法でひやしたのかな?
色合いは結構薄いな…泡立ちもそんなにない…本当に出来立てか?
「迷っていても仕方がないか…」
俺はエールを口に入れる。
俺は声をあげた。
『これがエールだなんて俺は認めない!!!!』
これが、リーフ=スロウレットとエールの初めての出会いであり、物語の始まりでもあった。
やっとエールが飲めましたね笑
これからは日本に売っているビールの名前を出すことがあると思います。
興味があれば是非飲んでみてください。
これからもよろしくお願いします。