よろしくお願いします
「ところで僕は何をしたらいいのかな?」
シルヴィオの質問に俺は答える。
「そうだな。まずはエールを造るのにあたり材料、そして醸造所造りからだな」
「醸造所…」
「お酒を造る場所ってことだよシルヴィオ兄さん」
「そうだ。そしてその醸造する場所も父さんとの交渉により厨房の隣を獲得することに成功した!」
俺の日々の仕事ぶりが評価されたのか、昨日の土下座が評価されたのかは分からないが土地をゲット出来たのは非常に助かる。
「っと…忘れてた。シルヴィオにはこれを取ってきて欲しいんだ」
俺はシルヴィオに本を渡す。
「これは…植物の図鑑?」
「そう。シルヴィオは採集とか得意ってアルから聞いたからね。印が付いている植物を取ってきて欲しいんだ」
この世界には写真なんて優れたものは存在しないから絵と文字、そして実際に見て判断するしかない。
「他にも気になるものやいい匂いがするのもとかあれば採ってきてくれると嬉しいな」
「うん。分かったよ。やってみるね」
図鑑をペラペラめくりながら返事をするシルヴィオ。
「この世界にホップがあればすごく助かるんだか…」
「兄さん何か言った?」
「なんでもないよ!あ、それと、道中何があると分からないからエリノラを護衛として連れて行ってね」
「姉さん?でも昨日絶対嫌って言ってなかった?」
言ってました。そしてじゃんけんで負けたのも覚えています。それでも…
「エリノラだけ仲間はずれってのは良くないだろ?」
「兄さん!!」
シルヴィオの俺に対する好感度がどんどん上がっていくのが感じられる。
いや…まぁ…後ろの方で隠れながらこっちを見てくるエリノラを放っておくのはダメだろ…
「リーフ兄さん!」
アルもエリノラの気配に気づいたのだろう俺の服を掴んできた。
「エールが完成したら稽古に付き合うから手伝って欲しいって伝えといて。多分中庭にいると思うから」
「分かったよ!兄さん行ってくるね」
シルヴィオはそう言って中庭に走って行った。
エリノラも中庭に向かったのだろうか、気配が無くなった。
「リーフ兄さん、あんな約束して大丈夫?」
「…」
正直あまり大丈夫じゃない、剣術なんて知らないのだから。それでも…
仲間はずれはダメだよねと思うリーフだった。
「アルには醸造所を造ってもらいます」
「は?醸造所?全部?」
「はい。全部です」
我ながら全部丸投げというのもどうかと思うが、アルの魔法は本当に凄まじいものだと思っているからこそのお願いである。
「ミーナさんに聞いたよ。お前村の各地に自分の家を建てているとな」
俺はアルの肩に手を乗せる。
「その力をちょっと貸して欲しいなぁ」
「わ、わかったからその顔やめて!すごく怖いから」
失礼な!
その後、アルに幾つかの要望を伝え仕事に取り掛かってもらう。
アルの建てた家がどのようなものか分からないけど、とりあえず1週間は様子見で進捗具合を見ながら建てていこう。その間俺は食料保存庫から麦を取ってきて、浸漬、発芽、焙燥まで行けるか?出来るなら粉砕も…「リーフ兄さん、出来たよ」え?」
アルの声に俺は思考を止める。何が出来たって?
見上げるとそこには、土で出来た家があった。
「おいおい…まじかよ」
ものの数分だぞ?アルが凄いのか?魔法が凄いのか?
多分両方だろう。
「リーフ兄さん中もみてみてよ」
言われるがままに俺は出来立ての醸造所に入る。
もちろん中も土で出来ていた。それでいて魔力を感じるあたりフリスビーの時のような魔法でコーティングしているようにも感じられる。
そして目の前の物に俺は目を剥いた。
「嘘だろ!?なんでビールタンクまであるんだよ!?」
ビールタンクも土で作られていたが魔力でコーティングされて土鍋を大きくしたような形になっていた。
「これでビールを作れるかどうかはやってみないと分からないけど…まさかここまでとは」
建物に設備まで…
「くっ…はははっ!」
笑いが止まらない、これほどまでに上手くいくなんて。これでシルヴィオが植物を持ってきてくれれば造れる、造れるぞ!念願のエールが!
「リーフ兄さん、どう?すごいでしょ」
「ああ!想像以上だ!ありがとうアル!」
ここまでやってくれたことに最大の感謝とそして少しばかりの嫉妬の気持ちを声にのせた。
「お礼にエリノラとの稽古代わってあげるね」
「ふざけんな!!」
アルが本気でキレるところを初めてみました。
用語説明
浸漬…水につけて水分を吸収させること
発芽…芽を出すこと
焙燥…麦を加熱し乾燥させること
次回は作者がビールに興味を持ったきっかけである飲み物が登場します。