あれ?麦汁が無くなっている!?
俺は早朝、醸造所で造っている麦汁のタンクを見て思った。
「確かに昨日仕込んだはずなんだけど…」
ここ数日明らかに麦汁の減りがおかしい。いくら大量に仕込んでも次の日には無くなっている。
俺は朝から夜までほとんどエール造りに費やしているから醸造所にいる。だから何か起こったとするならば…
「深夜…俺が寝ている時間か」
朝食を食べ部屋に戻り改めて考える。犯人は誰かということを。
「母さんかエリノラあたりが怪しいんだけど、証拠が無いんだよな」
証拠も無しに問い詰めて違った場合、何されるか分かったもんじゃない。
「うーん、母さんもエリノラも怪しいし…他にもいそうだしどうしたものか」
「その悩み…私が解決してあげますわよ」
どこから声がした。
「誰?」
俺はあたりを見渡すが、人の気配がしなかった。が、
ドアの近くに可愛らしい人形が置いてあった。
…まさか人形が喋ったとでも言うのか?いやいや、ありえないって。
「人形が喋るなんてそんな「こんにちはお兄さん」…」
人形が喋った…マジで!?
「何か悪いものでも食べたかな?昨日の夕飯か?それとも麦のジュースか!?コリアット村の麦には幻覚作用があるのか?」
「お兄さん大丈夫?」
人形が喋りかけてくる。
それにしても…お兄さん呼びっていいよね。エリノラとか兄さん呼びだから、「お」が付くだけすごくなんかこういいよね。いつか呼ばれてみた…
はぁ…現実に戻りますか。
「どちら様ですか?」
俺は人形に語りかける。人に見られたら心の病気だと勘違いされそうだ。
「名乗るほどの者ではないですわ」
人形はそう言って宙に浮きながらこっちに近づいてきた。
えええ!?人形が勝手に動いてる!?糸みたいなのもないし、まじで幻覚か?
「犯人は、エルナ母さんとエリノラ姉さんとミーナですわ」
あっ勿体ぶらず言ってくれるんですね…ん?なんか違和感があるな。
「まさか、怪しいと思っていた人物全員が犯人だとは…」
ダイエットにいいとか言わなきゃよかったかな?それにしても飲み過ぎだろ。
「なるほどね。とりあえず今日の夜は醸造所に篭ろうかな。わざわざありがとうね…」
そして俺は違和感の正体を確かめるためにある言葉を放つ。
「ね。アル」
「いつも麦のジュース飲ませてもらっているからね。これくらいはどうってことないよリーフ兄…さん」
「」
「」
さぁてどうしようか、違和感の正体が分かってしまった。まぁとりあえず…
「どういうことか…説明してもらおうかぁ!!」
俺は人形に掴み掛かった。が、
「…ただの人形のようだ」
さっきまで動いていたのが嘘のようだ。だが、魔力は感じる。
「やっぱり魔法の類だったのか…そして魔力は部屋の入り口を指している!」
俺は全力で部屋を出るが…そこには魔力が使われた形跡が残っているだけだった。
「転移か…羨ましい」
だが最近エール造りで魔法を使っているからか、魔力を感じる力が強くなっている気がするんだよな。そのおかげでなのか分からないけど…
「なーんか、近くにいる気がするんだよな。ねーアルフリート君」
俺は部屋に戻り自分のベットの布団を捲る。
「!?リーフ兄さんなんで分かったの?」
「これが…兄弟の絆ってやつなのかもな」
「…」
「…」
無言はやめて欲しいな…お兄ちゃん悲しい。
「まぁ、とりあえず説明を「転移!」させるかぁ!」
俺は転移される直前に得意のアイアンクローをアルに食らわせる。
「えっ!?なんで…あだだだだ」
「まさか、こんな上手くアイアンクローが決まるとは」
というか、俺もしかして初めて無詠唱に勝った?物理だけど。
「リ…リーフ兄さん」
あっ…すっかり忘れてた。
「ごめんごめん、やりすぎた」
「いたた…酷いよリーフ兄さん」
「それじゃ、拷問の時間ですね。覚悟はいい?」
「待って、待って!リーフ兄さん提案があるんだ!!」
「提案?この期に及んで命乞いかな?」
命乞いなんて単語口にしたの初めてだわ。
「命乞いってのもあるけど、この人形を使って…女性陣に悪戯しようよ!」
この時の俺は麦汁のことで頭が一杯でどうかしていたのかもしれない。
だからなのだろうか、そんなアルの提案に俺は…
「詳しく聞こうか」
興味を持ってしまったのだった。
1話1話短いですが50話までいけました。
これからも読んでいただけたら嬉しいです。