転生して田舎でエールが飲みたい   作:高校ジャージ10年目

51 / 73
遅くなりました。51話目です。よろしくお願いします。


真夜中の人形大作戦(前編)

「そういえば、今思い出したけどこの人形って父さんの仕事部屋にあったやつじゃない?」

 

「うん。他の人形も欲しいって言ったらノルド父さんがくれたんだよ」

 

「他の人形?」

 

仕事部屋にはこの人形しかなかったような。

 

「これだよ」

 

アルはそう言って空間魔法から騎士のような人形を取り出す。

 

「これはまたよく出来ているな。名前とかつけているの?」

 

「うん。ナイトだよ」

 

そのままかよ。  

 

「ドール子爵が贈ってくれたんだって。代わりにこっちはリバーシを贈るってノルド父さんが言ってたよ」

 

ドール子爵…名前は聞いたことあるような。確か綿や布の出来が良い領地の貴族とかなんとか…

 

「ん?父さんがリバーシを贈るって言ってたの!?」

 

「うん。言ってたよ。ドール子爵も欲しがっているらしいからって」

 

「また俺の仕事増えるじゃん…リバーシを欲している貴族ってまだまだたくさんいるんだぞ」

 

ドール子爵を優先させるなんてこと出来るのか?

 

「……まぁ、何か問題が起こったら父さんに任せよう」

 

「リーフ兄さん…」

 

そんな顔しないでおくれ弟よ。というかそれにしても…

 

「人形が浮いたり喋ったりするのも空間魔法の類なのか?」

 

そもそも空間魔法を使えない俺にとって意味のない質問なんだが、無性に興味が湧いてしまった。

 

「違うよ。浮かせるのはサイキックで無属性魔法だよ。あと喋ったりしたのは風魔法だね」

 

「へぇ。無属性かぁ…なるほどなぁ。ということは俺も…使える?」

 

「うん」

 

アルの相槌に俺は勝手にテンションが上がる。まさか俺にもサイキックが使えるとは!

 

俺はアルからサイキックを教わり早速実践する。

 

「我は求める、意思に従い念動せよ」

 

すると、なんたることか。少女の人形が浮いたではないか!

 

「おお…意外に自由自在に動かせるものなんだな。でも結構意識を集中しないとすぐ魔法が解けそうだ」

 

「そこは練習あるのみだよ」

 

このサイキックは他にも何かに使えそうだな。気が向いたら練習してみるか。

 

「で、このサイキックを使ってみんなを驚かそうというわけなんだな」

 

「!!さすが、リーフ兄さん。分かっているね!これを深夜の見回りしているミーナに仕掛けたいんだ!」

 

「仕掛けたいんだ!って俺は犯人であろうエリノラと母さんを一泡吹かせられればそれでいいんだが…そういえば、ミーナさんも飲んでいるんだっけか」

 

でもミーナさんがそんな事するとは思えないんだよなぁ、根拠は無いけど。

 

「深夜の見回り中に浮いている人形なんて見えたらトラウマ級だな」

 

「大丈夫、大丈夫。ちゃんとネタバラシもするから」

 

心配だなぁ。

 

「なら俺は今から麦汁を大量に仕込んでくるよ。そこでアルは屋敷中の人たちに俺が麦汁を仕込んでいることを伝えて欲しいんだ」

 

「なんで?」

 

「餌を用意して犯人を誘き寄せるんだよ。麦のジュースがあると知ればあの2人は絶対深夜に飲みに来るはずだ。そこで…」

 

「人形で日頃の恨みを晴らすんだね」

 

「ちゃんと言ってくれれば作るんだけどさ。こっそり取るのは良くないと思うんだよね。と言うわけで後はよろしくね」

 

俺はそう言って部屋を出て醸造所に向かった。

 

 

 

〜深夜〜

 

「というわけでやってきましたね」

 

「やってきましたな」

 

どこぞのドッキリの司会者みたいな口調で喋り始めた俺とアル。

 

「リーフ兄さんは準備は大丈夫?」

 

「もちろんだ。この為にかなり大量の麦汁を仕込んだからな」

 

仕込んでいる途中でテンションが上がって予想以上に造ってしまったことは内緒だ。

 

「麦の匂いが屋敷中に充満しているね」

 

「…これに関しては申し訳ないと思っている」

 

「でだ、作戦は俺が先にミーナさんを驚かして逃げた先にアルがもう一度驚かすでいいんだよな?」

 

「うん。それで大丈夫だよ。ちゃんとネタバラシもするしアフターサービスもバッチリだよ」

 

アフターサービスって何だよ。

 

「それに俺も今夜の為にとっておきの怪談を広めておいたからね」

 

アルはそう言ってにやりと笑う。

 

「怪談?」

 

この世界でもそういった類のものはあるんだな。

 

「うん。醸造所に潜む悪魔って怪談なんだけど…」

 

ん?

 

「ちょっと待て。え?今醸造所って言った?醸造所って言ったよね。怪談って何?俺聞いてない」

 

まじやめろよ、エールを造ろうとしている場所がまさかの曰く付きの場所だったとか、今後の醸造に影響がでちゃうかもしれないだろ?

 

「これは本当にあった話なんだけどね…」

 

それっぽい言い回しでアルが話し始める。夜遅くということもあってかドキドキしてしまっている自分がいる。

 

「夜遅くに醸造所の前を通ると…誰もいないはずなのに…何か音が聞こえてくるんだよ…」

 

「なんだろう…と耳を澄ますと、ホッ…ホッって声が聞こえるんだ。そしてさらに耳を澄ますと…ほっぷ…ホップって聞こえるんだ」

 

「…」

 

あかんって。

 

「怖いよね。深夜で誰もいないはずなのに」

 

「ああ…怖いな。まさか聞かれていたなんてな…」

 

俺は手で顔を覆う。

 

「それは怪談じゃなくて…実話です」

 

まさかの作戦開始前に大ダメージを受けるリーフであった。

 

 




nano.RIPEのマジックアワーいい曲ですね。

懐かしの、のんのんびよりを思い出しました!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。