「リーフ兄さんホップって何?」
「ええい、ニヤニヤしながら質問するな!独り言だよ独り言!」
まさか、独り言を聞かれていたなんて…
「なんで、よりによってお前なんだよぉ…」
絶対これをネタに俺を生贄にするつもりだよ。
「大丈夫だよ!リーフ兄さん!これをネタに今後助けてもらおうとか思ってないからさ」
思ってない奴が言うセリフじゃないんだよなぁ!
そんなことを思っていると遠くの方から人の気配を感じるようになった。
「!?あの蝋燭…ミーナさんか?」
「そうみたいだね。それじゃ作戦開始!リーフ兄さん頼んだよー」
アルはそう言って転移で持ち場に移動した。
「やるしかないか…」
独り言を聞かれアルに弱みを握られた俺は精神的にズタボロだ…
だが、ここまで来たんだ!絶対証拠を掴んで文句の1つでも言ってやる。
そのためにも…ミーナさん、ごめん!
俺は心の中で謝罪をする。そして…
「我は求める、意思に従い念動せよ」
俺は少女の人形にサイキックをかける。歩かせたりするのはまだ無理だか、浮かせることはなんとか出来る。が…
「サイキックを使用しながらの風魔法はちょっと俺には難しいかな?」
魔法を同時に2つなんて今まで使ったことがないから多分魔力がもたないだろう。だからここは交互に使っていくことにしよう。
さぁ、人形よ。ミーナさんの所に行ってこい!
そして俺は人形を送り出した。
〜ミーナ視点〜
なぜ、昼間にアルフリート様の怪談話を聞いてしまったのでしょうか。
「まさか…麦ジュースを造っている場所があんな恐ろしい所だったなんて…」
そして今まさにそこに見回りに行こうとするミーナ。
「き、気にしなければいいんです!ぱっと見回りして2階に上がりましょう」
再度気合いを入れ直し見回りを再開する。が、
「うー、それにしてもいい香りですねぇ」
怖いはずなのに麦ジュースの香りに足を止めてしまう。
「早い所移動したいのですが身体が勝手に醸造所に…「こんばんは、お姉さん」
えっ!?今何か女の子の声が聞こえた気が…
恐る恐る蝋燭を前に向ける。そこには、可愛らしい少女の人形が地べたに座っていた。
「えっ?えっ?何でこんなところに人形が置いてあるんですか?アルフリート様の嫌がらせですか?私を怖がらせようと?」
そうです!きっと何かの嫌がらせ…「お姉さん…聞こえていたら返事をして欲しいな…」
…完全に声が聞こえてしまいました。ここは、もう…
「お姉さ…
「私は何も聞こえませーん!!」
気がつくと私は一目散にその場から逃げ出していた。
「あらら、逃げられちゃった。ミーナさんには明日謝ろう」
うーん作戦は失敗かなぁ。もう少し待てば誰か来るのか?
俺は色々思考するがこれだ!といった案が浮かんでこない。
「とりあえず人形は回収するか。我は求める、意思に従い…「誰かいるの?」
その声を聞いた瞬間俺は再び物陰に隠れる。まさか…厨房にいたとはな。
声の正体はコップに溢れんばかりの麦ジュースを片手に歩くエリノラだった。
運は俺に味方したようだな。このまま人形を動かしてびっくりさせてやる。
ふふふ、と俺は手を前に出しサイキックを唱えようとするが…
「……ねえ、アル。そこにいるんでしょ? あんた何してるのよ?」
「!?」
その声に俺はびっくりする。そして一拍おいて俺でないことに安堵する。が、
アルからしたらたまったもんじゃないよな。
あ、なんとなく魔力の揺らぎを感じる。多分相当焦ってるなこれ。
どうやらエリノラは剣を取りに部屋に戻ったようだ。
「潮時だな」
ミーナさんから聞き出すことは出来なかったが代わりに夜中に麦汁が無くなる原因は掴んだ。それだけでも成果はあった。
とりあえず部屋に戻って今後の対策だな。アルには悪いがこのまま帰らせてもらおう。
「リーフ兄さん…エリノラ姉さんが!?」
アルは幽霊でも見たかのような顔をしながら俺につかみかかってきた。
「まぁ…そんな予感はしていたんだけどさ」
このまま何事もなく帰れるとは思っていなかったので大して驚きはしない。多分こういったことに慣れてしまったのだろう。
「アル…エリノラが呼んでいたよ?行かなくて良いのかい?」
「あの威圧感のある声をリーフ兄さんも聞いたでしょ?見つかったら絶対斬られるぅ!」
斬られるって…別にエリノラに対しては何もしてないのに。
「そこにいるんでしょアル!」
お早いことで剣を取り行ったエリノラはすぐそこまで来ていた。
「ほら。エリノラ様がお呼びですよ、アルフリート様」
「ふざけたこと言ってないで助けてよ!!」
別にふざけたつもりは無いんだけど…そうだなぁ
「アルが手に持っているナイトをサイキックで浮かせてびっくりさせて「それだ!」
食い気味に俺の提案に乗るアル、すかさず無詠唱でサイキックを唱えナイトをエリノラに向けて送り出す。
いくら男勝りのエリノラだって女の子だからね。浮いている人形をみたらびっくりぐらいはするだろう。
さ!ナイトよ。エリノラをぎゃふんといわせるのだ。
俺は心の中で願った。その瞬間、
人形のナイトはエリノラの剣で頭部と胴体が切断された。
『な…ナイトォォォ!?』
2人の声が屋敷に響き渡る。
「なんで、木剣で人形が斬れるんだよ。どんな力してんだ?」
切断されたナイトの元に向かうアルを見ながら呟く。
「いきなり何かが飛んできたらそりゃ斬るに決まっているじゃない。というか兄さんもいたのね」
いたんですよ、最初からね。
「で、エリノラ…アルが大事にしていたこの人形、どうするの?」
けしかけたのは俺なんだけど、ここは責任をなすりつけよう。
「そうだよ!リーフ兄さんがエリノラ姉さんを驚かせようって言ってけしかけただけなのに首をはねなくたっていいじゃないか!」
「じゃあ兄さんも共犯ってことね?」
エリノラが睨んでくる…このおバカ!正直に全部言いやがって!
「まさか真っ二つになるとは思わなかったんだよ…ちなみにエリノラは裁縫は出来るの?」
淡い期待を胸に聞いてみる。
「…出来るわけないじゃない」
左様ですか。
「あああ…ナイトがデュラハンに…」
「…俺、アルのあんな顔初めてみたよ…」
「母さんに頼んだら直してくれるでしょ」
…自分が直すとは言わないのかよ。
「とりあえず、父さん達が来たら絶対怒られるから今のうちに解散しよう!」
「それもそうね。アル、今日は勘弁してあげるわ」
やめたれ、アルのHPはすでに0だってば。
「さっさとこの場から去ろうか。もうすぐそこまで来ているかもしれな…」
「こんな夜中に何を騒いでいるんだい?リーフ」
本当にすぐそこまで来ていた。というよりも俺の後ろにいた…
俺は恐る恐る振り返る。そして父さんの顔を見て一つの疑問が浮かんだ。
「なんで怒っている時も笑顔なんですか?」
とか聞いたら俺も今頃はデュラハンだったのかな?
その後俺はこっぴどく叱られた。
そして俺が怒られている間に2人は運良く部屋に戻れたらしい。
〜次の日〜
一夜明け俺は醸造所に置いた椅子に座る。
「はぁ、酷い目にあった…」
昨晩は一晩中怒られ心身ともにヘトヘトだ。
「大体、なんで俺だけ怒られるんだ?長男だからか?」
「荒れているね。リーフ兄さん」
俺が1人でいられる場所(醸造所)にノックなしで入ってくるのは弟のアルだ。
「…出たな。諸悪の元凶」
「あれはああするしかなかったんだって!許してよ。リーフ兄さん」
アルはそう言って許しを乞う。
「でもでも!昨日のおかげで麦ジュースは守れたんだから!」
「そこのタンク見てみ」
俺は麦汁が入っているタンクを指差す。
「あれ?もしかして減ってる?」
アルの問いに俺は答える。
「うん。減ってる」
「なんで?昨日麦ジュースを盗ったのはエリノラ姉さんだけで他には誰も…」
アルはそこで気づく。
「まさか母さん?」
「だろうね。昨日騒ぎを聞きつけ降りてきたのが父さんだけだった。そして執務室で怒られている間…ここは完全にノーガード!」
エリノラがもう一度侵入…という線も考えたがその確率は薄いだろう。
「こうなってしまった以上俺は最終手段を取ることにしました」
「さ…最終手段って?」
真剣な眼差しでこっちを見てくるアル。
「もうここで(醸造所)寝ます」
「…」
「このままじゃ一向にエールが造れないんだよ!」
俺は心の底から叫ぶ。
「そ、それがいいと思うよ…」
俺の鬼気迫る感じをみて少し同情してくれたアルであった。
その後、俺vs母さん、エリノラ、アルによる第一次麦ジュース争奪戦が始まるのであったが、
それはまた別のお話。
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