転生して田舎でエールが飲みたい   作:高校ジャージ10年目

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53話目です。よろしくお願いします。


エールを造った。

 

 

長かった…

 

苦節数週間…

 

「あはは…ついに、ついに完成したぞ!」

 

俺は、淡い金色の液体を見ながら呟く。

 

「エールが…出来たぞお!!」

 

自分でも驚くぐらい大きな声が出た。するとどこからか声が聞こえてきた。

 

「よくやった」

 

「お疲れ、リーフ兄さん」

 

ああ!みんなが俺を祝福してくれている。そんな幻覚が見えるくらいに無茶をしていたってことか…

 

「みんな…ありがとう」

 

俺は涙を流し…

 

2人の手をはたいた。

 

「何するんだ!リーフ」

 

先陣をきって言葉を発したのはルンバさんだ。

 

どうやら幻覚ではなかったらしい。

 

「なーに勝手に飲もうとしているんですか!?ダメですよ?」

 

「は?お前がエールが完成間近だから飲み干して欲しい。って言ったんじゃないか」

 

「ええ?飲み干して欲しいなんて言ってないですよ!?味見をして欲しいって言ったんです!」

 

誰がやっと完成したエールを飲み干して欲しいなんて頼むか!?王都の時のこと俺はまだ忘れてないぞ!!

 

「と、とりあえず味見はしていいんで…飲み干すのだけは勘弁してください」

 

「ちっ、しょうがねーな」

 

文句を垂れながら引き下がるルンバ。

 

「リーフ兄さん、俺も飲んでいいんだよね?」

 

「ダメに決まってるだろ!お前は大人しくロイヤルフィードでも飲んでろ!」

 

「そこは麦ジュースでしょ?」

 

悪いな。麦汁も主に内部の人間に飲まれているせいでストックがほぼ無いんだ。

 

そんなやりとりをしつつも俺は、自分用、ルンバさん用、バルトロさん用にエールをシャンパングラスに注ぐ。

 

シャンパングラスがあるならジョッキもありそうだよな。今度父さんに聞いてみよう。

 

そんなことを考えていると、バルトロさんも厨房からこちらに来た。

 

「さ、2人ともどうぞ」

 

俺はそう言ってグラスを2人に渡す。

 

「おお!金色に輝いているじゃねえか!でも冷えてたほうが美味しいんじゃねえのか?」

 

中々鋭いな。

 

「今回作ったのは冷やさないで飲むエールなんですよ。主に香りを楽しんでゆっくり飲む…ってああ!そんな一気飲みしないで!」

 

説明を聞かず飲み干してしまうルンバ。そして…

 

「果実酒程の甘さでは無いが…甘くてそして美味い!おかわりをくれ」

 

一緒で飲み干され空いたグラスを差し出される。

 

アルコール度数高めなはずなのに…なんで一気で飲めるんだ?

 

「どうぞ」

 

「おうよ」

 

ルンバは再びグラスを受け取ってまた一気に飲み干す。

 

「お?なんだか今日は酔いが早い気がするな」

 

「そりゃ、少しずつ飲むために造ったんでそうなりますよ」

 

これは、ルンバさんには詳しい味の感想は期待できないな…そしたら…

 

俺はターゲットをバルトロさんに変える。

 

「バルトロさん。どうですか?お味の方は?」

 

う〜んと唸りながらバルトロは口を開く。

 

「王都のエールよりは遥かに美味しいが少し甘すぎやしねえか?」

 

「そうだ!俺はもっと苦い方が美味しいと思うぞ!これも美味いがな!」

 

バルトロさんに続きルンバさんも同調する。

 

そこで俺も自分が造ったエールを飲む。

 

「麦汁の甘みを軸に合いそうな香草をいくつか調合して造ってみましたが…確かに甘すぎますね。香草が思った以上に主張してこない」

 

もっと麦汁の比率を減らすか?それとも香草の種類を増やすか?うーん難しいな。

 

「リーフ!!」

 

「!?な、なんですか?」

 

ルンバの声に我に返る。

 

「さっきから何ぶつぶつ言ってたんだ?ちなみにこれはどんな食い物に合うんだ?」

 

「ええと…エール自体が結構甘めなので、甘いもの…果物やお菓子に合うと思います」

 

「そうか!ならさっそく食ってくるぜ!ああ、あとそれと…」

 

ルンバは机にでかいカゴを置いた、どうやら大量の草のようだ。

 

「…草?」

 

「タダでエールを飲むわけにはいかねえからな。適当にとってきてやったぞ」

 

そう言ってルンバはカゴ一杯に入った草なり木の実なりを机に置く。

 

「こ、これはまた大量ですね」

 

「食べられそうなものがあれば持ってきてくれ。俺がエールに合うか味見してやるからよ」

 

するとルンバはエールの入ったタンクを軽々持ち上げて厨房に行ってしまった。

 

「ルンバ行っちゃったね」

 

「ああ…あのエールは持って2日、いや下手したら今日で飲み干される。あの人の肝臓はいったいどうなっているんだ?」

 

余裕があればさらに度数を強めたエールを作ろうと決意するリーフであった。

 

「リーフ兄さんが作ったエールはどんなエールなの?」

 

俺はアルの質問答える。

 

「モデルはグルートビールっていう香草を使ったビールなんだ。でも材料とかも詳しく知らないから普通にビールの造り方で造ってみたんだが…想像以上に甘すぎてね…」

 

「そっか…やっぱりホップが大事なんだね」

 

「そうだなぁ…このカゴの中にホップがあればどんだけ嬉しいか……あった」

 

「えっ!?」

 

ルンバさんが採ってきた植物を図鑑をみながら調べていたら、とんでもないものを見つけてしまった。

 

「ど、ど、どうしよう。こ…これホップ…ホップ」

 

「リーフ兄さん落ち着いて!?すごい顔してるから!」

 

「そっそうだな!とりあえず落ち着こう。これはホップじゃなくてホップに似た植物!こんないとも簡単に最強武器を手に入れてしまったら、そんなんクソゲーじゃないか!」

 

「そ…そんなこともないと思うけど」

 

だが、もし…もしホップ…ホップなら?俺が求めていたエールが完成するんじゃないのか?

 

前世のホップと瓜二つの植物を見て考える。そして…

 

「…もうどうにでもなれ!」

 

俺はこのホップに似た植物を口に含んだ。

 

「た…食べた!?」

 

「ぬ…ぬぅーー」

 

発したことのない声をあげてしまう。

 

に…苦い、そして香りが強い!?まるで前世のビール工場見学で食べたホップのようだ!!

 

…えっ?じゃあ、これは…

 

この植物を食べたことで疑惑が確信に変わっていった。

 

「ホップやんけこれ」

 

「前世の方言が出る程!?しかも泣いてる!?」

 

 

 

 

その後、ルンバさんに採ってきた場所を聞き、場所が屋敷の中庭だということに驚愕し、中庭に行くと大量に実っているホップに似た植物を見て膝から崩れ落ちるリーフであった。

 

「灯台…下…暗し…」

 

 

 

 




今回造ったエールはグルートビールをモデルにしています。

グルートビールはホップの代わりに薬草や香草を使ったビールらしいです。

しかし、分量や配合、製造方法などの資料が残っていないらしいです。

面白いですね。
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