転生して田舎でエールが飲みたい   作:高校ジャージ10年目

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56話目です。よろしくお願いします。


王都を空から見てみた。

青い空!雲ひとつない快晴!

 

こんな時はエールの一杯でも飲みたくなる!

 

だが…なんで俺は、

 

「空を飛んでいるんだ?」

 

 

〜数分前〜

 

「IPAの出来は上々だな」

 

俺は新作エールであるIPAに向かって独り言を言っていた。

 

従来のエールよりホップを2倍3倍と大量に入れることで麦の腐敗を遅らせる。

 

これは前世でいうと、イギリスからビールをインドに船で輸送する際に発案された方法だ。この方法によって腐りにくく、さらにホップによる香り豊かなそして苦いビールが出来上がる。

 

ホップを投入して煮込む…予想通りホップの香りが醸造所に充満する。

 

前世ではIPAがビールのトレンドだったが、この世界では果たしてどうなのか。

 

などと考えていると、いきなりドアが開いた。

 

「リーフ兄さん!王都に行こう!」

 

普段からは考えられないような生き生きした顔でアルは提案してきた。

 

「…ノックをしてくれ。びっくりするだろ」

 

「王都に行こう!」

 

俺の話を聞いてくれ。

 

「あいにく俺は今エール造りで忙しいんだ。悪いけど他をあたってくれないか?」

 

「日帰りでも行かないの?」

 

「え?」

 

日帰りだと?ここから王都まで7日はかかるはずだぞ?それは俺もアルも身をもって体験しているはずだ。それなのになぜ日帰りなんてワードが出てくるんだ?

 

「…!?あぁ、なるほど。転移か」

 

考えている最中に気づいた。アルは神様から古代魔法である転移魔法を貰っているんだ。

 

「そう!一度行った場所には行けるからね!王都まで一瞬だよ」

 

まぁ羨ましいことで。

 

「だから一緒に…」

 

「嫌だ」

 

「なんでさ!?」

 

「なんとなくだけどさ…その転移魔法はアル自身にしか効果を発揮しないんじゃないのか?」

 

「カブトムシで成功してるから平気だよ」

 

「カブトムシ……に…人間の成功例は?」

 

「リーフ兄さんが初めての成功者になるね。おめでとう!」

 

うるせぇよ。それを聞いて余計嫌になったわ。

 

「万が一転移魔法が失敗して俺だけ時空の狭間?みたいな所に閉じ込められたりしたらどうするんだ!?」

 

「そしたら、そこでエールが造れるね」

 

「兄をなんだと思っているんだ…」

 

「さぁ!リーフ兄さん一緒に王都に行こう!そして俺に転移の可能性を見せてよ!」

 

「出たな!本性!このマッドサイエンティストめ!俺は絶対に行かないからな!」

 

アルの本性が垣間見えた所で俺は改めて拒否の意向を示す。そしてそのまま違う話題に話をずらそう。

 

「?リーフ兄さん。エールが沸騰しているよ?」

 

「なんだと?てか勝手に覗くな。危ないから」

 

火傷しても知らないぞ。そして怒られるのは俺なんだから…

 

「あー、そろそろかな。かき混ぜるからそこにあるヘラを取ってくれ」

 

「そう言うと思って持ってきているよ!」

 

アルは俺にヘラを差し出す。

 

「よく俺が欲しい物が分かったな。ありがとう。助かる…!?」

 

ヘラを掴んだ瞬間嫌な予感が全身を駆け巡る。

 

そして嫌な予感は的中する。

 

アルが笑っているのだ…ニヤリと笑っている。

 

確定だ!コイツ絶対に何か企んでいる!今すぐヘラを離して…

 

脳からの手を離せと信号が送られるが…その信号よりも先にアルの魔法が勝ってしまったのだろう。眩い光が2人を包み込みそして…

 

 

「今に至ると…」

 

俺はどうやらアルと一緒に王都に転移をしたらしい。ありがたいことに転移が失敗して時空の狭間(仮)に飛ばされるようなことはなかった。

 

なぜ王都だということが分かったか、それは目の前に象徴とする建物があるからだ。

 

あぁ…確かあれはミスフィリト城だったかな?まさか城より上から拝むことになるなんてな、ばれたら不敬どころか死刑だな。

 

どうして俺がこんなにも冷静を保っていられるのか。それには理由がある。

 

「うわああああああああああっ!?」

 

隣で泣き叫んでいるアルを見て恐怖が吹き飛んでしまったからだ。

 

「リーフ兄さん!!!!助けてて!」

 

「ふふっ」

 

涙や鼻水やらでぐしゃぐしゃになったアルの顔をみて不覚にも笑ってしまった。

 

多分俺もアルと同じように涙や鼻水や涎でぐしゃぐしゃだろうけど、面白いぐらいに恐怖を感じない。

 

「まぁ…転生して大体半年ぐらいか。悪くない第二の人生だったよ、エールも造れたし」

 

俺は地面に向かって落ちている間に悟りを開いてしまったようだ。

 

「あ…諦めないでよ!?リーフ兄さんの魔法でこの窮地を潜り抜けようよ!」

 

「俺よりも魔法を熟知している奴がよく言うわ。お前の転移が原因なんだからなんとかしてくれよ!」

 

お互いに責任をなすりつけようとする間に着々と身体は地面に近づく。地面に当たれば死ぬのは確実だろう。我ながらなぜここまで冷静にいられるのか…

 

「…俺が転移を覚えていたら色んな国のエールを飲めていたのかな」

 

ふと言った独り言がアルに閃きを与えた!

 

「ああ、リーフ兄さん。俺、転移使えるの忘れてました」

 

「…そういえば、そうだったね」

 

2人で目を合わせ再び眩い光に包まれた。

 

 

 

 

 

「知っている天井だ」

 

どうやら再び転移は成功したらしい。良かった。本当に良かった。危うく悟りを開いて納得して死んでしまうところだった。

 

「リーフ兄さん、大丈夫?」

 

アルの声がする。どうやら俺のお腹にしがみついているようだ。

 

「大丈夫だからどいてくれないか?重い」

 

「ごめん、ごめん今どくね。」

 

チーン

 

「チーン?」

 

なんの音だ?まるで鼻をかんだ時のような…まさか。

 

「あの…まじで兄を都合のいい道具かなにかだと思ってます?」

 

「……思ってないよ?」

 

今の間はなんだ?

 

「ま…まぁ、兄を必要とするなら一言言って欲しいかな。大抵のことは協力するから。今日みたいなのはもう勘弁ね」

 

いきなりパラシュート無しスカイダイビングは心臓に悪い。

 

「わ…分かったよ。あとごめんね」

 

流石にやりすぎた自覚があるのか真面目なトーンで返された。

 

多分これで懲りることはないだろうが、少しは大人しくなって欲しいものだ。

 

「服が…ぐしょぐしょだ」

 

それにしてもあれが転移魔法か、他の人間に知られたりしたら大変なことになりそうだな。なんだって7日もかかる距離を一瞬だからな。

 

すごく便利だけど、それと同じぐらい怖さもある。

 

少なくとも俺は、あまりアルの転移魔法には頼らないように生きていこう。こうするだけでも他の人間にばれる可能性はぐんと減ると思うからね。でも、氷魔法は頼らせてもらおう。あの魔法が無ければラガーも造れないし。

 

「…はぁ」

 

なんだが今日は疲れた、服を洗濯して風呂に入って寝よう。

 

 

 

〜次の日〜

 

どうやらトリエラ商会が到着したらしい。

 

アル曰くトリーさん?という方が仕切っているとのこと。

 

「そこそこ大きい商会らしいし俺のエールを売り込むチャンスかもな」

 

まずは近場の街でエールを、王都ではIPAを売る。そしてその売上でまた新しいエールを造る…そして飲む。完璧だ。

 

ふふふふ。

 

「今この瞬間!!俺のスローライフは完成す「リーフ兄さん!カグラに行こう!」

 

バンッと鍵をかけているはずの扉が開かれ厄介ごとの元凶が姿を現す。

 

俺はまた何かに巻き込まれるんですか?

 

あぁ…アルのあんな顔見たことないよ。これはまたとんでもないことになりそうだな。でも…

 

少し、楽しそうかも。

 

「リーフ兄さん?」

 

「ああ…ちゃんと話なら聞くから。その前にね」

 

「うん?」

 

俺はアルの頭に手を置いて…

 

「ノックを…しろって!!言っているだろうがぁ!」

 

得意の物理であるアイアンクローを放つ。

 

「ぎゃぁぁぁ」

 

アルの悲鳴が屋敷中に響き渡った。

 

 




エール製造編が終わり次からカグラ編に続きます。

今回登場したビールのモデルはヤッホーブルーイングさんのインドの青鬼です

ホップの力強い苦味そして華やかな香り、その両方が楽しめるビールだと思います。ビール=苦いを体現したい方にオススメだと思います。コンビニなどに売っていると思いますので是非。

レイラ様を登場させたかったのですがタイミングが掴めませんでした。
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